模擬戦
劣等紋たる僕が使える魔法はどれもが弱いものばかり。
だが、それらの魔法とて使い方次第である。
「しっ!」
自分の足元で小さな二つの爆発を起こすことで物理的に加速力を得た僕はそのままギアの顎を狙って拳を振る。
流石というべきか。
僕の振るった拳はギアの左手によって優しく逸らされ、そのまま自分に向けて彼女が右手で握る剣を振るってくる。
「っぶね」
それを半歩後ろに下がることで回避した僕は更に魔法を発動。
発動した魔法は基礎中の基礎。
魔法陣を使わない魔法。ただ少ない砂を出す程度の魔法と、そよ風を起こす程度の魔法を組み合わせて目つぶしを狙っていく。
これは幾度もギアに見せた技であるが、なかなか対策出来るものでもない。
劣等紋の魔法発動速度は異様に早く、同時に発動できる。
ほぼノータイムかつ何の前兆もなく自分の目に砂がかかるため対策法は中々ない。
「……っ」
まぁ、ギアは目つぶしされても平然と行動するんだけどねっ!?
僕は追撃として振るったギアの剣による一振りをさらに半歩下がることで回避し、胸元からの拳銃を取り出して発砲。
ギアに向かって鉄の弾丸をたたきつける。
「はむっ」
だが、その弾丸はずいぶんと可愛らしいギアの掛け声と共に口でキャッチされる。
「はふほむっ!」
タイムオーバー。
ここまで約五秒足らず。
ギアの魔法が完成した。
「……っ!」
ギアの前に展開された魔法陣より紅蓮の津波が荒れ狂うのと、僕が胸元より自分を守るお手製の道具を起動させるのがほとんど同時であった。
「初めて見た魔法……何の属性?」
荒れ狂う紅蓮の津波に対し、僕が展開した道具。
自分の周りを飛行する幾つもの小型ドローンより透明な壁が展開されて僕を守ったのだ。
「言うか、ぼけぇっ!」
結界魔法。
相手の魔法攻撃をはじき返す壁を作る無属性魔法だ。
「眠っていろっ!」
ドローンによる結界魔法を停止させた僕は胸元より水の入った瓶を投げつける。
それを魔法で破壊すると共に、水にも魔法を一つ。
それによって水が一気に気化し、それが毒霧へと変化する。
「私、すべての毒への耐性があるから」
「これもダメかっ!?」
強大な魔物であっても一発で昏倒させるような毒霧を吸っても平然としているギアは魔法を発動させると共に僕の方へと大きく一歩踏み込んでくる。
「はやっ!?」
自分の方へと迫りくる炎の槍。
そして、槍からの退路を塞ぐように迫ってくるギアに対して僕は眉をひそめながら拳を握る。
多くのドローンはさっきの紅蓮の津波を凌ぐだけで故障してしまっている。
「かふっ!?」
僕が狙ったのは槍を回避してから、自分を狙うギアの剣を裏拳で叩き壊すこと。
だが、それに対してギアは僕へと剣を振ることなく代わりに振ったのは足。
僕の腹を狙ってギアは膝蹴りを繰り出してきたのだ。
剣の方に意識を寄せていた僕はその膝蹴りを回避することができなかった。
「……負けた」
お腹に一発痛いのを貰って思わず片膝をついた自分の首元へと剣を突きつけてくるギアに対して、僕は降参の言葉を告げるのだった。
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