もと子ちゃんのワンダーキッチン(味の素・1993年)

 プレイ時期:リリース直後

 ソフト入手:親戚にもらう

 クリア状況:エンディングまで

 おすすめ度:★★★


 *


 味の素マヨネーズのキャンペーンでのみ入手できたソフト。一般発売はされていないが、かなり大規模なキャンペーンだったようで希少価値はそれほど高くない。発売日というかリリース日はよくわからなかったのだが、とりあえず1993年の9月中に出たという前提でリストには並べた。


 我が家は特に味の素社のファンというわけでもなかったので応募した覚えはないのだが、確か当時スーパーマーケットに勤務していた親戚が、何らかの手段で手に入れてプレゼントしてくれたはずである。


 本作のパッケージも飾っている「もと子ちゃん」とは味の素のキャラクターというわけではなく、本作独自のキャラである。彼女は主人公ではなく、彼女のために料理を作るというのが本作の目的。もちろん、いずれの料理も味の素マヨネーズを使用する。


 ゲーム内容はシンプルで、固定された画面内の怪しいところをクリックして、先に進んだり食材を探したりする。スタート地点のキッチンからは3つのルートが分岐し、行く先々でそれぞれの料理を作ることになる。


 難易度は低く、まず画面内で必要な食材を集めないと先に進めない仕組みのため、取り逃して先に進んでしまうということがない。とりあえず総当たりで色々触ってみれば先に進めるようになっている。


 コンティニュー機能がないこともあり、ゲーム自体はあっさりと終わる。ボリューム面を抜きにすると問題点らしい問題点は「メッセージを早送りできない」ことくらいだが、これも繰り返しプレイして初めて気になる部分だと思う。


 どちらかといえば女の子がターゲットという気がするが、フェミニンさは抑えられており、主人公(プレイヤー)のジェンダーすら明かされない。絵本のようなメルヘンチックな世界(これを電波とかドラッグだとか言うような悪い大人にはなりたくないものだ)だが、海賊船やサバンナなど、男の子が好きそうなエリアもある。


 食材集めとは関係のない、いわば「ハズレ」のギミックも多数あり、それぞれ丁寧なアニメーションをする。ドット絵というよりは2Dイラストといった画風であり、まさに絵本の中のような世界を丁寧に作り上げているという印象。ボリュームの薄さはおそらく容量制限とも関係しており、当時このようなゲームを商業ベースで作るのは難しかったと思われる。企画グッズだからこそ出来た内容かも知れない。


 食材を集めると、(もと子ちゃんの祖父の)もとじろう爺さんによるマヨネーズのうんちく語りの後、本作のメインである料理パートになる。例えば食材をまな板の上に置く、包丁で切る、水を張った鍋を火にかけ、その中に先ほど切った野菜を入れる……と言った具合だ。基本的には指示通りに作るしかできないが、先に鍋の準備をしておくなど段取りを工夫する余地はある。


 このゲームで学んだことは多い。まずマヨネーズの原料が卵・酢・油であるということは知らなかった(なんとなく乳製品だと思っていた)。オーブンで焼くとこんがり香ばしくなるとか、卵焼きに混ぜるとふんわり仕上がるといった知識も本作で知った(フルーツにも合うという主張は、個人的にはちょっと首をかしげるのだが)。


 本作で味の素マヨネーズのことが好きになり、今でも味の素製を優先的に選ぶようになっている。プロモーションとしての効果はかなり高かったと言えよう。今から買ってまで遊ぶ価値はあるかと問われると微妙なのだが、丁寧に作り込まれた作品であり、機会があれば触って欲しいソフトである。

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