第8話 最深部の街 その1
「マジかよ……おい千次それ本当か?」
電話越しの宇受売は、驚いた様子でそう聞き返した。
「あぁ……確かにこの目で見た。」
千次は、その事実をはっきりと証言した。すると電話越しの宇受売は再度深いため息をついた。
「そうか……君…親戚の家に居候するんだろう?その家族は魔導士なのか?」
「いや…その一家の一人息子に合って街を案内される過程でさっきまでケーキやにいたが…彼にそういう雰囲気はない…ただ素質はありそうだ。」
電話越しの宇受売の問いに、千次はそう答えた。
すると電話越しのから、返ってきたのは宇受売の乾いた笑い声だった。
「ハッハハッハッハ…ケーキ屋か…それはなんていうか平和というか呑気というか…。」
「あぁ…まるで街全体が天国…。いや…暖かかった思い出の時間に取り残されているようだ。 空も地面も人も文明も…。」
電話越しの宇受売は、そう尋ねると千次は淡々と答えた。
すると電話越しから深いため息が聞こえてきた。
宇受売にはきっとこのため息は千次に対する、羨望でありながら、都合のよいそれでいて明らかに繊細な砂上の楼閣のようなこの街の情景を按じる「ため息」のように思えた。
「はぁ~…。で?千次、どういうものを見たの?」
「スライムだ。何者かの【魔力【や】を内包していたがだが…極めて非力で小さい。2センチくらいの。ボールペンを喰うのに偉い時間がかかってたし、捕まえたら、すぐに弱って、内の【魔力性能】に耐えきれず、爆死した。」
「なるほど……スライムね……。まぁ大体わかった。」
宇受売は、そう聞くと話を戻した。
「で?僕なら、何か知ってるとでも?」
「あぁ……。フィクサーの力なら、調べられると思ってね。」
電話越しの宇受売の質問に、千次はそう答えた。すると電話越しの宇受売は、ため息をもう一度ついた。
そして千次に対し答え始めた。
「魔力に、耐えきれず自爆したなら、サモナーである魔導士は、生まれつきではないな、少なくとも一週間以内に魔導士になった…いや…もしくはされた…。良かったな…君が思ってるよりそこまで厄介な案件じゃないぞ。」
宇受売がそう言うと、電話越しの彼は安堵の息を吐いた。
「そうか……。だがそれならそれで問題は…。もしもし?」
「……。」
電話越しの宇受売は、沈黙してしまった。「おい……。どうした?何があったんだ?」
千次は、心配そうにそう尋ねた。すると電話越しの宇受売はいきなり話始めた。
「…すまない。急用があってしばらく外した」
「おい。お前大丈夫か?」
千次は、心配そうにそう尋ねると電話越しの宇受売は、重い声で答えた。
「あぁ……大丈夫だ。ところで千次。重要な話がある」
「どうした?」
「千次…。【流凪町】は、つい最近まで僕たちもその存在さえ知らなかったほど、秘匿されている場所だ。 つまりこの街は外と完全に隔離されている。
だけど…ソウスケが君を心配して頑張ってね…。 何とか色々な街内の住人とパイプを繋げてね…」
「つまり何が言いたい…!」
千次がそう叫ぶと、電話越しの宇受売は低い声で言った。
「たった今、君が居候する家族…確か来栖家だっけ…。その一人息子…。来栖郡正が暴行事件の容疑者として現行犯逮捕された。」
「な!?おいどういうことだよ!!」
千次は、宇受売の言葉にそう聞き直すと、電話越しの彼は神妙な声で言った
【サモン♡デーモンキング】 〜最強居候魔王使い召喚士の弟子になりましたが、彼と一緒にダンジョン攻略をするのは簡単ではありません〜 倉村 観 @doragonnn
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