第7話 調査へ

郡正と別れた千次は神妙な表情であたりを見渡しながら駐輪場方面へ、戻っていった。


「……。」


千次は駐輪場へたどり着き、自身の自転車を探すと、そこで衝撃的なものを目にした。


なんと郡正が自転車を停めていた場所に、しゃがみこんでようやくよく見えるほど小さいゼリー状の悍ましい物体が 蠢いていた。


千次はすぐに懐からボールペンを取り出して、その物体を器用に掬い上げた。

その謎の物体は、彼が掬い上げ、見やすいように、日の当たる場所に移動すると、プルプルとその ゼリー状の体が触れているボールペンの先から、プシューと音を立て、不快な苦みを感じさせる異臭を撒き散らした。


「スライムか…。誰かの霊魔か…?」


千次はその物体を見ながら、そう呟いてボールペンを振ってみた。

するとその異物は赤く発光し、次の瞬間バチっと大きな音を立てて爆発した。 


「ッ!!」


千次は、咄嗟にボールペンを手放して距離を取った。しかし彼のその行動は正解であった。


爆発に巻き込まれたボールペンは、その衝撃で完全に粉砕されてしまい。原型を留めていなかった。


そしてかつてボールペンだったそれは赤い電光のような光を放ち、跡形もなく消滅した。


「なるほど…いい魔力持ってるな。」


 千次は、そうつぶやいてその場から立ち去ろうとした。


 ところが出口に防犯カメラがあることに気が付き千次はその防犯カメラに向って人差し指をつきたて、左に振った、すると防犯カメラのレンズが割れ、防犯カメラは機能を停止した。


「さて……と……まぁ考えても仕方ない…。だったらさっきから臭って、仕方ない気になる所へ行ってみるか……」


千次はそう言って、駐輪場の出口へ消えていった。


そうして千次は、カメラに映らずに駐輪場の外へ出ると、周りを見渡して、人気のいない路地裏まで駆け足で移動した。

彼が人気のない場所に到着すると、彼は自分の左耳に触れて、耳朶を折りたたみ、そのまま抑え続けた。


すると次第に、彼の折りたたまれた耳からは、口にまで伸びる、青白く輝く線が浮き出てきた。


その線はまるで口と耳に繋がっているかのように、耳の内側から外側へ、まるで電子機器の回路のように、 複雑で人工的な構造が浮き出てきた。


「コードカラーグレー A0T2へ」


すると彼は、左耳を抑えながらそう叫んだ。すると彼の左耳は暫くの、 間ブルブルと音を立てて振動し、その振動は急に治まった。


「あい…もしもしソウスケはいないよ…。元気そうじゃん…。良かったよ千次。」


振動が、治まった千次の耳からは、突然、高い美声の男性の声が鳴り響いた。その声は何処か千次の声に似ていた。


「ん? その声は…お前 宇受売ウズメか…。ソウスケはどうした?」



千次は、電話をかけてきた彼にそう問いかけると彼は答えた。


「え?あぁ彼なら……えっと」


電話の向こうの福澤フクサワ 宇受売ウズメは、何故か言葉を濁した。


「彼は今…別の電話に出てて…僕じゃ……ちょっとわからないかも……。僕なら今空いてるけど…彼じゃなきゃダメな用?」


「いや…そうじゃない【フィクサー】なら誰でもいい…。そういう案件さ…わかるだろ? お前たちの力がいる。」


千次は、そう発言すると電話越しの宇受売は、ため息をついた。

「はぁ……そういう案件か……まぁなんとなく理解したよ……。」


そして彼は電話越しに千次に尋ねた。


「でも千次。隠居するためにそっちに行ったんだろ…? おいまさか…。」


「あぁ…この街にもすでに【魔導士】が現れた。」


千次は、深刻そうな声でそう言った。

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