第5話 接触
「あぁ…出かけるんだろ…わかった。 ケーキ屋寄るついでに二人で食ってくるよ。」
郡正は千次を連れて自転車を引いて歩きながら、スマートフォンを器用に肩に、乗せて母親と話していた。
「ん?あぁ…ハイハイじゃあね」
「なんだって?」
電話を切った郡正に千次が聞くと郡正はめんどくさそうに答えた。
「飯のことだよ……。」
「そうか……。」
千次はそう短く相槌をうった。そうして二人は昼過ぎにケーキハウス・パンプキンに到着した。
「ここは…?」
「ケーキハウス・パンプキン、ここは俺の友達の父さんがオーナーの店でさ。ここのモンブランは最高に美味いんだ!」
千次は店内を見回すと目を輝かせた。
「ショートケーキに、モンブランか……。まさか生クリームを食べれるとは思ってもみなかったな……。」
「お前ほんとどういう暮らしを…。まぁいいか……とにかく席に座るぞ」
「あぁ、分かった。」
郡正はケーキを選んでいる千次を席に連れて行くと、彼はしばらくメニューを眺めていると、店員の女性が二人の方にやってきた。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「あぁ……えっと、チョコケーキ。あとブレンドコーヒーで千次!お前は?」
郡正が千次にそう聞くと、彼は一瞬首をかしげてから口を開いた。
「ここの一番人気はなんだい?ボクはそれが食べたい」
千次が、店員に尋ねると、彼女は答えた。
「この季節だと、ミルクケーキが一番人気ですよ!」
「へぇ……じゃあそれ一つとコーヒーで。」
千次はそう店員に頼むと、店員は「かしこまりました。」といって店の厨房の方へと戻っていった。
「ここのケーキはうまいんだぜ! 俺はここのケーキを食べるためにいきてると言っても過言ではないくらいにな」
「………。そうか」
「今日は俺の奢りだ…。まぁ正確に言うと母ちゃんからだな。ご馳走しろって言われて小遣いもらったんだ」
「あぁ…ありがとう」
注文した品が届くまで千次は郡正の話を窓の外を見ながら聞き流していた。
「おい……聞いてるか?」
「……。あぁすまない何の話だっけ」
千次は郡正にそう言われると、慌てて彼の話に耳を傾けた。
「だからさ…。」
「待てッ!!」
「?」
千次が郡正の話を遮った。
「どうしたんだ?急に……」
郡正が千次にそう尋ねると、彼はポカンと口を開けたまま眉を潜めて、窓の外を見ながら立ち上がった、
「郡正……悪いが駐輪場にいった時に落とし物をしたようだ」
「え?でも…お前何もカバンから出してないじゃん。」
「いや…貴重品を落としてしまった。取ってくるよ…。すぐ戻る」
「おい!待てッ!」
千次はそう言うや郡正の静止も聞かずに否やすぐに立ち上がり、足早に店を出た。
「たく…なんなんだよ」
郡正は千次のことを疑問に思いながらも、注文したケーキが届くまで一人で待つことにした。
すると何故かシャッターが閉まっている路地裏の方が見える窓に、妙な物がゆっくりと通り過ぎようとしている事に気がついた。
「?! あれはッ?」
気になった郡正がよく目を凝らして、見てみると、それはなんとフラフラになりながら路地裏を通り過ぎようとして、今まさに力尽きて倒れ込んだ裸の女性だった。
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