第4話 サモンスライム
流凪町の有名なケーキ家【ケーキハウス・パンプキン】
非常に美味しいと評判で、商店街から外れた場所にも関わらず客足は絶えない。
特に冬季限定の新作モンブランは流凪町の名物の一つ。
非常に濃厚で美味しく値段も安いため人気を博しもちろん子供にも大人気。
しかし、子供に対してこの店に近
づかないよう言い聞かせている家庭がごく一部にはある。
その理由はこの店の路地裏にあった。
この店と隣接している、バーとその周辺の路地裏はかなり売春や風俗のお店が建ち並んでいた。
この店のオーナーは、そういった店を経営するグループの一人であった。
今日もその路地裏には昼前だというのに、一人の少女が手慣れた手つきで札束を数えていた。
その少女の名前は、北座美濃木茶色の髪色と青い瞳、そして堀の深い顔立ちをしていた。年齢は15歳。まだあどけなさが残る顔つきだが、 その目つきは鋭く、そしてどこか達観した大人びた雰囲気を醸し出していた。彼女は作業着に赤いマフラーとコートという格好で、手に札束を持っていた。
彼女はその年齢にして、積極的な
売春でお金を稼いでいた。
自分身体を売ることになんの躊躇もなくなっていた彼女は、今日も誰もいない路地裏でウキウキで札束を数えていた。
しかしそんな彼女の目の前に一人の少女が現れた。
「お姉ちゃん…。もう売春やめてよ…」
「あぁん?カオリか」
美濃木は見飽きた顔の少女の方へめんどくさそうに顔を向けると。これまためんどくさそうにそう言った。すると少女は叫んだ。
「お姉ちゃん! もう売春やめてよ!お姉ちゃんが、補導されてから、私!子役としての仕事が無くなっちゃったしお母さんは、病気になって行っちゃったし!」
「ッケ。知るかよんなもん」美濃木はそう言うと札束をバッグにしまいこんだ。
「失せろ!また昨日みたいにそのムカつく顔面が潰れるまで殴ってやろうか?」
美濃木は、その少女を睨みつけそう叫んだ。
「ッ!!」
少女は美濃木のその言葉に涙を流すと、なにかに失望したかのような虚ろな表情をした。
そんな彼女の顔を見た美濃木は、あることに気づいた。
「あれ?昨日ぶん殴った時にできたキズもう治ったのか?」
「………。」
美濃木は、少女に違和感を覚えてそう質問したが、彼女は答えなかった。
それどころか少女はただ悲しそうに美濃木のことをジッと見つめていた。
そんな彼女の表情を見た美濃木は無性に腹が立ってきた。
「あぁ?てめぇッ!ダンマリかよ」
「……姉ちゃん最後のチャンスを上げたのに…。」
「あ?」美濃木がそう聞き直すと、少女の背後からグチョグチョという形容しがたい不愉快な音が
なった。
「お姉ちゃんが悪いんだよ…。いつも私に酷いことするから……」
美濃木が音のした方向に目を凝らすとそこには、まるで液体と固体を混ぜたような謎の存在がウネウネと蠢いていた。
「ぅうわぁ カオリ…なんだよ…。ソレ……」
美濃木は、その正体不明の怪物に心底恐怖するとその場に尻餅を着いた。
「神様が授けてくれたの…。この力があればお姉ちゃんを殺せるんだって」
「え…?殺?」
その正体不明の怪物は路地裏の下水や通気口、そしてカオリの服やスカートの中からドンドンと
溢れ出て来て、一つに集まり、互いを融合し続け巨大な丸いアメーバのような異生へと変貌を遂げた。
「神様がお姉ちゃんを殺してくれるって……だから私もこんな力を手に入れたの……」
美濃木は、恐怖で何も考えることができなかった。ただ声にならない悲鳴を上げて、腰を抜かした状態でただその場で震えることしかできなかった。
「お姉ちゃん…死んで。」
カオリがそう言うと、その怪物は美濃木の方向へと触手を伸ばし始めた。
「や……やめろ」
「やめ…!」
美濃木が何かを叫ぶ前にその怪物は彼女の全身を覆い尽くした。
そして美濃木が声を上げる間もなく、一瞬で怪物の体内に吸収された。
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