万物の芸術予想、問題(Art of Everything Conjecture)

凛快天逸

第1話 万物の芸術予想、問題(Art of Everything Conjecture)

1 問題提議


 これまでのあらゆる芸術作品を”有機的に”含めた究極的な統合芸術作品を表現せよ。




2 説明


 万物の芸術がこの世界に存在するならば、一体その作品は理論的にどのような芸術になるか?


 万物の理論(Theory of Everything)という究極的な理論の可能性が、物理の世界に存在すると信じられているように、芸術の世界にも万物の芸術(Art of Everything)があると仮定する。もしそれが存在するならば、自然界に存在する全ての力、すなわち電磁相互作用・弱い相互作用・強い相互作用・重力を統一的に記述する物理理論であるように、それまで全ての芸術を統一的に表現する究極的な芸術である。




3 背景


 人類社会は21世紀に入り、未曾有の技術的進歩の時代に突入した。その中でも人工知能は人間社会のあらゆる分野に影響を及ぼし、芸術分野にも根源的な変革をもたらそうとしている。それは、人間の聖域とも扱われる創造性に、人工的な”創造性”が結合するのである。


 究極の芸術、万物の芸術は、そんな来たるべき新たな時代との最大の区分として機能し、21世紀までの、人工知能が創作的な分野に本格参入する以前の人類の創造的な試み、表現群を、”古典芸術”という、画期的な括りに分類することを可能にしてくれる。万物の芸術の完成をもって、人類の創造性は本格的に人工知能と共に歩むことになり、新たな創造的時代に突入する事を容易にしてくれるだろう。




4 条件


 ここでは、そんな万物の芸術の理論上の性格、条件などを乱雑に思いついたまま、書きなぐっていく。


 A 予備知識独立性;視聴者が、万物の芸術の中で登場するそれぞれの作品に触れていなくても、それらの作品の真髄を理解し、楽しむことができる。少なくとも、その作品の真髄が歪曲されることなく伝わる。つまり、古典芸術に触れてもいない1000年後の未来の人間でも、楽しめるような芸術でなければならない。


 B 普遍的ジャンル性;全てのジャンルが偏りなく取り入れられていること。また、それらは独立しておらず、調和を持って融合されていること。つまり、万物の芸術は理論上、娯楽的でもあり、深淵でもある。ミステリーでもあり、コメディでもあり、ディストピアでもあり、アクションでもあり、SFでもあり、ノンフィクションでもあり、フィクションでもあり、ドキュメンタリーでもあり、それは全てである。


 C 普遍的芸術様式;アニメや映画、戯曲など、あらゆる芸術様式が偏りなく取り入れられていること。


 D 科学と宗教と芸術が調和していること


 E 普遍的時代性;まず、全ての時代の作品が”正しく”(しっかりと作品の中でその言葉の意味を定義すること)取り入れられていること。また、有機的に作品の中で登場すること。そして、それぞれの関係性を明らかにして、発展していき、完結させること。


 F 人類の根源的、創造的な規則性を見出すような作品でなければならない。


 G パラダイムシフトを含む作品でなければならない。


 H 極めて深遠な予言、示唆を含む作品でなければならない。


 I 万物の芸術は、未来への指針であるとともに、警告、指標、希望など、全てでなければならない。


 J 人類がこれまでにあらゆる分野で発見してきたあらゆる概念を、調和を持って内包させなければならない。




5 終わりに


 上記に記載されている以外にも、延々と多くの条件が存在するが、もし正しい万物の芸術の候補が登場するならば、明確な定義すらをも必要としないほどの傑出した作品であるはずなので、そこまで厳密な定義付けに頭を悩ます必要はない。

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