11「三十」

三十歳になった鮎美は、ドレスを着ていた。


鮎美の職業は、モデルであり、とても綺麗になっていた。

髪もサラサラで、顔もツルツルして張りがあり、手先も荒れなどなく、爪もキラキラとしていた。

スタイルも良く、背筋がピンとしていた。

だが、胸は、普通に育っているだけで、大きくも小さくもない。


そんな鮎美が着ているドレスは、ウェディングドレスというものであった。

髪も綺麗に結われ、まとまっている。


その姿の鮎美の手を引いて、横にいるのは流である。

流は、最初、ウェディングドレス姿の鮎美を見た時、身体が心臓になったみたいにドキドキとして、顔が真っ赤だった。


式はしなくて、写真だけ撮る方式になった。

その写真には、必ず、どれにも、ロボットが四体、一緒に写っている。


「さて、写真はこれで終わりです。」


写真撮影は終わり、帰る為の準備になった。

ドレスを脱ぎ、着て来た服に着替えた。

鏡を見ると、驚いた。


まさか、男勝りの自分が、ウェディングドレスを着て、こんなに綺麗にするとは思わなかった。


子供の頃は、見た目は気にしない。

髪も解かないし、洗っても自然乾燥。

手も荒れていても平気で、色々な機械やおもちゃを構っていた。

頬も手入れなんてしない。


だが、今では、機械やおもちゃを触っても、手の管理はして、綺麗にしている。


「変わるものね。」


鮎美は一言発すると。


「本当にね。急に綺麗にし出したと思ったら、モデルになるだもの。」

「母さん、心配かけたね。」

「本当。心配だったわ。このまま、男勝りだと、彼氏も出来ないんじゃないかって、それだと一人になってしまうわ。一人は怖いのよ。」

「そうだね。一人は怖いわ。人は協力してこそ、優しくなれる。」

「それに、生きる原動力になるわ。よかった。本当に。」


泣いている母を、ソッと抱きしめて。


「今までありがとう。母さん。」

「うん。これからも、見守りますよ。鮎美。」


すると、扉をノックされる。


「着替えは出来た?もう、帰るよ。」

「はい。今、行きます。」


母は、涙を拭いて、鮎美は、化粧を確認して、部屋を出た。

そして、写真屋にお礼を言って、アルバムになるのを楽しみにしつつ、車では、竹の籠に入れられたロボット四体を、大切に持っている鮎美に。


「今日は、どうしようか。外食にする?それとも、家で食べる?」

「家で食べたいな。ね、流さん。」

「今日、入籍するまでは、お兄ちゃん呼びだったのに。」


その会話を、運転している父、歳三と、助手席に座っている母、しずくが、とても微笑ましく訊いていた。


ちなみに、ロボットの事も含めて、血兄達と佐藤砂鉄については、両親には話しをしており、理解して貰っている。

この話をした時の両親は、とても驚いていて、しばらく、ロボット四体と色々と話しをしていた。


完璧に理解して、受け入れには、一ヶ月かかった。










「ねえ、このロボット、お話しが出来るの?どうやって?」


鮎美が四十歳になった時、腕にリストレットと言われる機械を自分と子供をレールでつないで、家の敷地内にて、ロボットを自由にさせている時だ。


子供には、まだ、理解できないだろうと思ったが、内緒にするのを約束させて、昔話をする。

すると、とても興味が沸いて、ロボット四体と話しをしていた。


その子供の名は、迅雷じんらい


将来、とある神社にいる巫女との結婚をする。



終わり

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