10「源力」

「さて、早速だけど、話して貰う。」


一方、流の部屋に連れて来られた血兄達は、尋問させられている気分になった。


「鮎美が怖がって意識が失った時、出て来ていたのは、血兄達だろ?」


観念して、陸から話す。


「そうです。私達が、鮎美の身体を借りて、対処していました。」

「殴ったりしたのか?」

「鮎美をつれていこうとした人ではなく、物を多少。」

「なるほど。」


空が。


「それでも、鮎美に触ろうとしたから、少しだけ抵抗して。」


海が。


「言葉を使って、引き取って貰った。」


すると、流は、頭を抱えた。

そんな事をすれば、鮎美が復讐として狙われかねないと思った。


「しかし、鮎美の姿で、人を殴ってなくてよかった。それと、もう、鮎美には宿れないから、守れない。」

「はい。ですので、兄である貴方に頼みます。鮎美を守ってやってくれ。」

「それは守ってやるが、その前に、謝って欲しい。」

「え?そうですね。貴方をからかってしまった。」


ロボットの姿をしていても分かる位、反省をしている血兄達。


「もうしわけありませんでした。」


すると、流は。


「違う。鮎美にだ。意識を失っている時の事を話してな。俺が知りたかったのは、人を殴ったか、殴ってないかだけだ。」

「もし、殴っていたら?」


空が訊くと。


「人には、復讐という言葉がある。もし、殴っていたら、相手が相手だった場合、厄介になる。せっかく、両親が再婚して幸せにしているんだ。壊したくない。」


それはそうだ。

そこまで考えてなかった血兄達は、今までを振り返っていたが、無かった。


「それならいい。」


そこまで話しをして、流は黙ってしまった。

静かになる流の部屋。


……………………………………………………



「あの。」


話しかけたのは、海だ。


「何?えーと。」

「海です。もう少し、訊く事はありませんか?」

「別にないが。」

「先ほど、鮎美には訊きたい事があればといっていました。もしかしたら、兄である貴方も、僕達に訊きたい事があるのではないかと思っていましたが、ないのですか?」

「鮎美についてか。別にない。これから知って行けばいい。」

「そうですか。」


すると、空が。


「もし、知りたいなら、教えます。」

「別にない。」

「そうですか。」


そして、陸が。


「本当にないんですか?」

「しつこい……、もしかして、俺と話しをしたいのか?」

「はい。鮎美の兄として、色々と話しをしたいのです。」

「うーん、でも、俺、大した話しは出来ないぞ。」

「それでも、どんな話題でもいいのです。」


すると、流は。


「なら。」


といい、論文を訊いてくれといった。

福祉関係の仕事に就くために、大学へと行くのだが、その大学入試でテーマが与えられ、論文を書いてくるというのがあった。


血兄達は、その堅苦しい論文を訊かされていた。

あの、佐藤っていう人は、この流をどの様に会話をしていたのだろう。

少しだけ訊いた話し方だと、とても息が合っている風に見えた。


ふと、思った。

陸が。


「えーと。あの。」

「ん?ああ、呼び辛いな。俺は、流でいいぞ。」

「では、流さん。今、鮎美は、部屋にいますね?」

「そうだな。」

「佐藤さんでしたか。あの人と一緒に。」

「ああ………あああああああっ!!」


そう、佐藤がロボットの姿とはいえ、年頃の女の子が成人男性と、自分の部屋で二人っきりという状況が浮かんだ。


鮎美に何かするかもしれない。と、血兄達は思ったが、流は違い。


「砂鉄、大丈夫か。」


だった。


それには、佐藤の姿がロボットであり、とても興味が沸き、色々と研究しようとしているのではないかと想像した。

しかも、意識があるロボットは、それはそれは、鮎美にとって、触りたい放題だろう。


鮎美の部屋に、血兄達を連れて入ると、その光景に身体の力を失くした。

床に落ちる。


とても、楽しく会話をして、仲が良くなっていたからだ。


「どうしたの?お兄ちゃん。」

「なんでもない。」


すると、血兄達は、自分の身体がロボットになったから、動かせた。

ウネウネとしながらも、ロボットを動かし、鮎美の傍による。

そして、真実を話して、謝った。


鮎美は、佐藤に言われていたから、素直に話しをしてくれた血兄達に怒りはなく、守ってくれたお礼を言った。


「ありがとう、今まで守ってくれて。」


すると、ロボットだが、何故か、泣いている声をしていた。







「ただいま。」


帰ってきた両親を、流と鮎美が玄関で迎える。

荷物を受け取り、土産をくれた。

「何もなかったか?」と、父は訊くと、鮎美は「別に。」と答えたが、流は急いで口を塞いだ。


何もなかったか?が、何かあったになった。


口を塞いだから、母は目を光らせる。


「もしかして、キスした?」

「そ、それは。」


この瞬間を、鮎美は見逃しはしない。


「ええ、キスしました。」

「なんだ。やっぱり、そういう関係じゃない。」

「なんと。だったら、祝いをしないとな。」


流は、困った顔をさせていたから、鮎美は、事実だが、それに補足した。


「でも、停電があって転んだ時に、しただけですよ。」


すると、両親は、期待していた顔を、少し残念にした。

そんな空気の中、流は覚悟を決めた。


「今は、兄妹かもしれませんが、もし、鮎美が三十歳になった時、彼氏がいなかった場合、俺が鮎美を幸せにします。」


宣言をした。

三十歳って所に流らしさがあった。


二十歳だと、流は大学生であるし、鮎美もそうかもしれない。

結婚といっても、お金が必要で、働き口も必要だ。

だから、三十歳位になれば、色々と落ち着いているだろう。


それに、子供を産むとなると、そこそこ体力があり、生活にも余裕がある時がいい。

理由を話すと。


「鮎美、待っていられるか。」

「ええ、待っています。」


両親の前で、結婚を誓った形になった。

その光景を、二階から訊いていた、血兄達と佐藤は。


「なあ、血兄達。消えないであげてくれよ。きっと、結婚式に、連れていかれるぞ。」

「あー、そうだね。そうなるね。」

「このまま、二人の関係を見なく、消えるのは勿体ない気がする。」

「では、この身体が動かなくなるまでは、見守りますか。」


ロボットの身体を見て。


「あー、それだったら、妹ちゃんが亡くなるまでは一緒だな。きっと、俺達の身体、すっごくメンテナンスするからよ。」


佐藤の言葉を訊くと、確かにと、血兄達は納得した。











「あー、そこでターンして。」

「こう?」


鮎美は、流の指示で、黒い服を着て、身体を回って見せた。

その瞬間を逃さず、流はデジタルカメラのボタンを押す。


確認すると、とても綺麗に取れていた。


この時、兄妹は、大学生になっていて、アルバイトをそのまま続けていた。

鮎美に至っては、流のアルバイトにも顔を出している。


佐藤の提案を受け入れた最高神は、鮎美にも声を届けて、して良い事としていけない事を話し、仕事内容を理解してもらった。

血液パックを取ってくる仕事も、本当に時々だがあり、その時には佐藤は、流の身体に入って任務を遂行している。


佐藤の意識が入っているロボットのメンテナンスは、この時に行われ、帰ってきた時には、とても調子がいい。

血兄達の身体も、時々、鮎美の中に入って、メンテナンスをされている。


中に入ったり、ロボットに入ったりするのは、もちろん、口づけである。

鮎美は、相手がロボットだから、別に恥ずかしさはないが、流はとても抵抗があるらしく、その光景は、とても見ていて楽しい。


最高神が、鮎美と話しをした時、一つだけ安心要素をくれた。


鮎美をビルに連れて行こうとした人達からは、鮎美に関する記憶を消去したという内容だ。


それには、血兄達が一番喜んでいた。

復讐をされるのではないかと、怯えていた。

実際に、連れて行こうとした人達は、相手が相手の人であったから、最高神は心配をしていた。


あの付近には、防犯カメラもあったが、その記録も消去してある。

最高神にでもなると、記録と記憶、消去なんて簡単に出来るんだなって思うが、実際には違って、ちゃんと、それなりの人物を地上に派遣しているのである。


神が、直接人間に手を加えるのは出来ない。

だから、能力を持った人間が必要なのだ。


その為の血に関する研究、能力ある人の強化、時空を操れる機械、伝説や民謡の大切さ等と、転生や輪廻の繰り返す力が必要で、それらは、何も人間だけではなく、全てのあらゆる生きとし生ける存在こそが、力となろう。




力の源は、協力である。




そして。

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