9「交換」

「少し考えて見たけど。」





流は、一日経ち、今日が両親が旅行から帰ってくる日だ。

昨日の夜、流のスマートフォンに連絡が入ったのは、両親からだった。

雨が酷く降っていると訊いて、心配になったのである。


しかし、心配しなくてもいいと流は対応していた。

その時に帰る時間は、午後五時だと訊いていた。





次の日に、朝ご飯を流は作って、鮎美と一緒に食べている時、昨日、佐藤と話して可能か分からないが、提案をした。


「お互いが作ったロボットに、お互いの意識体である、鮎美なら血兄達、俺なら砂鉄を宿らせられないかな?」

「え?」

「そうなれば、血兄達も砂鉄も遠慮なく話しが出来るし、自分だけではなく、周りにも知って貰える。」

「だけど、それってどうすれば?」

「決まっている。ロボットに口を合わせるんだよ。」

「それだけ?」

「それだけ。」


すると、流の口から、砂鉄が。


「だけど、妹ちゃん、それだけではないんだ。妹ちゃん、実は、暗い所苦手だろ?」

「え、ええ。」


今までの流が話しをしていたから、違う口調になったのに戸惑っていたが、質問に答える。


「だから、男の子の趣味を持って、強くなった気になっていた。それとな、妹ちゃん。ちょっと何を話そうとしているんだ?血兄達に追及してもいいんだぞ。おい、砂鉄、その事は。おい、妹ちゃんの中にいる血兄達よ、あの事黙っているなら、俺から話すぞ、なんなら、怖がらせてもいいんだからな。砂鉄!」


独り言になっている流を見て、面白かったが、内容は全く面白くない。


「あの事?」


鮎美は、血兄達に疑惑が沸いた。




朝ご飯を食べ終わり、片付けが終わった後、部屋にあるおそろいのロボットを手にして、部屋の扉を開けたままの状態で、部屋の中にいた。


「早速だけど、鮎美。」

「ええ。」


ギリギリ、お互いの中にいる物が出てこない距離を取って、ロボットに口を付けた。

瞬間、自分達の身体が、足のつま先から空気が流れ出て、白い光で包まれた。

その光は、両手で持っているロボットへと集中して、収納された。


流は、ロボットに声をかける。


「砂鉄?」

「すごいな。成功だ。流。」


鮎美を見ると、鮎美も同じく、ロボットに宿っていた。

しかし、鮎美の場合は、一人だけであった。


「今、ロボットに宿ったのは誰?」

「陸です。」


ロボットは、緑色をしていた。

鮎美が持っている同じ形をしたロボットは、あと二種類色があり、黄と黒があった。

もはや、黄と黒は作成してあり、それぞれに口を付けると、海が黄で、空が黒になった。


ちなみに、流が作った色は、緑色である。



これで、ゆっくりと話しが出来る状態になった。

流は、もう、自分の中に佐藤砂鉄はいなくなったのに、すっきりとしていたが、鮎美は少しさみしそうだ。

だが、話しをするには、実体があるとしやすい。


「さて、砂鉄。」

「そうだな。」


流は、砂鉄を鮎美に渡した。

そして、鮎美から陸、空、海を渡して貰う。


「血兄達をどうするの?」

「情報交換だ。そうだな、昼ご飯を作る時間になるまでの間で。」

「え?」

「鮎美も、砂鉄から俺の知りたい事、訊いてみなって。あるんだろ?」

「それは、そうだけど。」

「だったら、血兄達がいては、訊き辛いと思う。俺に任せて置け。」


その会話を訊いていた、血兄達と佐藤は、何も言わずに、流の提案を受け入れた。

佐藤はいいとしても、血兄達は、覚悟をしていた。


昼ご飯は、午前十一時半から作り始めるになり、今は、午前八時であり、話しをするには十分時間がある。




砂鉄は、早速、鮎美の部屋にて、流の事を訊かれた。


「貴方の事は、砂鉄さんでいい?」

「いいよ。で?何を訊きたいんだ?」

「お兄ちゃんって、私の事、好き?」

「兄妹としてならな。ただ、鮎美としては、まだ、微妙だ。妹ちゃんが、流を恋愛感情として好きであっても、きっと、難しいと思うぜ。」

「何故?」

「兄としてのプライドがある。どれだけ、行動しても届かない。届けたいと思ったら、一つだけ方法がある。」

「何?」

「既成事実。」


その言葉を訊くと、鮎美は笑った。

佐藤も一緒に笑った。


「砂鉄さん、ありがとう。」

「何がだ?」

「私が、血兄達について、疑惑が湧いて、不安になっているのを、和らげてくれたのでしょ?」

「あー、妹ちゃん、そこに気づくとは、すげーな。」

「砂鉄さんこそ。」


鮎美と佐藤は、どうやら同じ系統らしく、話しが弾んでいた。


「砂鉄さん、なんか、相談される立場だったでしょ?えーと、助言っていうか、占いっていうか…そういう職業についていたんじゃない?」


占いと訊いて、佐藤は。


「そうかもな。」


懐かしい言葉に、胸にいっぱいになっていく感情があった。


「で?本当に、どうすれば、お兄ちゃんをその気に出来るの?」

「それはな。身なりをきちんとすればいい。」

「それだけ?」

「それだけ。」


それが一番面倒くさいけど、流を兄ではなく、彼氏にするには、それだけでいいのなら、これからがんばろうと思った。


「妹ちゃんの感覚でいうと、自分をメンテナンスだと思えば、やる気は出るだろ?」

「うわ。すごく、やる気出た。」


佐藤は、とても、言葉選びが上手かった。

その人が納得する言葉を使っているから、とても分かりやすい。

それには、とても多く勉強が必要だから、佐藤は生きていた時は、どれ位の勉強をしていたのだろう。


「それとな。妹ちゃん、スマートフォンは持ってやってくれ。」

「え?でも。」

「スマートフォンが嫌なら、連絡用だけの端末だけでもいい。人っていうのは、連絡が取れるだけでも、安心をするものだ。」

「うーん。今は、アルバイトでお金も入っているし、うん、連絡用だけの端末だけでも考えて見るよ。」

「そうしてやれ。それに、もう、その身体に血兄達はいないんだろ?だったら、尚更だ。」


その言葉から、佐藤は、今まで助かった記憶がない経路について、自分の考えを話した。

鮎美は、その考えを訊くと、手の痛みとしびれに納得をした。


「だが、怒らないであげてくれよ。血兄達も、妹ちゃんを守る為の行動だったんだからな。」

「はい。」

「それからよ。これは、俺から質問だが、妹ちゃん。」


佐藤は、ロボットの顔を上から下に動かして、鮎美の身体を見る。


「モデルとかって、興味ないか?」

「え?」

「何、流がやっている仕事の一つだが、服をトルソーに着せて、ネットで売るっていうのをやっていてな。トルソーと人間では、やはり、着た感じが違うわけよ。だから、妹ちゃん、体つきいいし、綺麗だから、丁度いいと思うぞ。」

「それって、お兄ちゃんの上司も納得しているの?」

「妹ちゃんの了解が取れたら、提案してみようと思ってな。どうだ?」

「どうっていっても……そうか、そういう事。」


鮎美は、佐藤の提案を受け入れた。


「砂鉄さんが、まさか、ここまで協力的だったとは。」

「いいえ、あの、流をからかってやりたいと思っただけだよ。」

「お兄ちゃんを好きでいてくれているんだね。」

「前世としてな。後世をからかうのは、当たり前だ。」

「嫌な前世だね。」

「でも、楽しいだろ?」

「本当に。」


佐藤は、最高神に連絡をし、トルソーを鮎美にするのを了解した。

それからは、時間まで、色んな話しをして、とても楽しく、盛り上がっていた。

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