7「内緒」

「えーとね。お兄ちゃん。」


鮎美は、全て分かっているという話し方で、自分の血兄達について話しをした。

話していくと、信じられない顔へと、流は変化した。


「でね。お兄ちゃん、あの時、血液パックもっていたよね。三袋。その三袋が、私に血液を分けてくれた三人が献血してくれたパックだと思うの。きっと、お兄ちゃんは、仕事上、仕方ないと思うけど、あの会社の人の記憶、操作したよね。でも、私は覚えていたのには、私に流れている血と、お兄ちゃんが持っていた血が、共鳴をしたからだと思う。」


頭の回転が鋭い鮎美。

そういえば、鮎美は、進学校の県立流石高校に余裕で入れた頭脳だ。

少しの情報で、推理して証明出来る。


そして、鮎美の考えは、正解であった。


「それと、お兄ちゃんには、誰かが中にいるよね?」


そこも見抜かれていた。


「それは、お兄ちゃんに関係している人。例えば、前世とか。」


合っている。


その理論を訊いていた佐藤は。


『この妹、ただモノじゃないし、もう、隠して置けないな。』


内緒の事をする能力を持つ佐藤が、もう内緒にはしておけないという位、長良川鮎美は、怖かった。


「なら、俺も話すよ。」


流も、佐藤も含めて、自分の仕事内容を話すと。


「やっぱりね。帰ってきてから、血兄達と話しをしたのよ。血兄達は、私をずっと守ってくれていたし、勉強も見てくれて、とても世話をしてくれた人達よ。あっ、高校入試の時は、ちゃんと自分の力で勝ち取りました。血兄達は決して、口を出したりはしてません。それに、血兄達は、お兄ちゃんとすれ違った時に、自分を感じたといっていたから、間違いはないと思う。」


鮎美は、流の目を見て、真っ直ぐに話してきた。

その顔は、とても、興味津々であった。


「所で、その血兄っていうのは。」

「血液の中に入っている男性で、私の年上だから、兄と決めていたわ。だけど、その血兄達とも、もうすぐお別れなのは、感じているの。」

「え?」


鮎美は、流に顔を近づけて。


「だって、私には、長良川流という素敵な兄が出来てしまった。だから、今まで私を守ってくれていた血兄達は、きっと、消えていく。もう、私を守る必要がないからね。」


言葉を言い、額を付けた。

ドキドキしっぱなしの流。


「鮎美、それでいいのか?」

「ええ。物事には、変化が必要よ。引っ越しをした時から、感じていたの。きっと、血兄達とはお別れがある。そのきっかけは、義理の兄。だけど、少し寂しいわね。」

「鮎美?」


鮎美は、流の胸に顔をうずめた。

そして、声を出さずに泣いている。

流は、そっと鮎美を抱きしめて、落ち着くまで、そのままでいた。


明日は、土曜日で良かった、などと、流は思っていた。


鮎美は、一通り泣いて落ち着いた。

落ち着くと、いつもの笑顔になった。


「お互いに、内緒にしているのを話せたね。」

「そうだな。なんだかすっきりしている。」

「兄妹に、内緒はしないのがいいね。」

「俺は、もうないが、鮎美は?」

「私は、一つあるの。」


鮎美は、自分の部屋に流を連れて行った。

引き出しの一番下を開けて見せると、女の子を意識した道具が入っていた。


「実は、私、女の子の恰好するの好きなんだ。けど、前、話しをしてごまかしたけど、可愛い恰好をしていた時に、男性に声をかけられて、建物の中に連れ込まれそうになった時があったの。」

「何?」

「だけど、怖いって思ったら、目の前が真っ暗になって、次に光を見た時には、誰もいなかったの。その時、手が痛んで、しびれていたけど、何も覚えていないの。」


すると、流は、それは先日、自分が体験したのと、被った。

だが、血兄達に遠慮して、その事実を鮎美には伝えなかった。


「それは、不思議だね。」

「うん。」


今日は、ここまでにして、お互いに仕事で疲れているだろう、休む。



部屋に帰った流れは。


「どう思う?砂鉄。」

『きっと、あの血兄達が、なんとかしたんだろうな。』

「それも、鮎美の身体を使って。」

『条件は、妹さんが怖がっている時、だろうな。流が、寝ている時に俺が出るみたいに。』

「それを、鮎美に気づかせるには、どうしたらいいのだろう。」

『気づかせる気か?』

「そうでもしないと、もし、血兄達の行為を知らないまま、別れさせてしまう。」

『そうだな。』


そう会話をして、流は、眠りに着いた。



一方、鮎美は。


『知っていたのか?』

「陸兄ちゃん。ええ、きっと、お別れが来ると。」

『だからか、この頃、素直に言う事を訊いていたんだな。』

「うん。ねえ、陸兄ちゃん、空兄ちゃん、海兄ちゃん。もし、会話が出来なくなっても、血の中で見守ってくれる?」

『もちろんですよ。』


少しだけ、寂しそうにしたが、鮎美は心で前向きに考えていた。

そんな鮎美に、血兄達は、一つの隠し事をしていて、話すか、話さないかを決めかねていた。





次の日




二人共、少し寝不足になりながら、両親を心配させまいとして、いつも通りに起きて来た。

両親は、いつも通りにしている。


朝ご飯を食べて、いつもみたいに流は、鮎美の身体を見て、ハンドクリームを塗ったり、髪を解かしていた。

今日は、アルバイトはないから、ゆっくりできる。


鮎美が、あくびをすると、流もあくびをした。


「ごめん、眠いや。」

「私も。」


母は仕事があり、父は休みだったから、父に午前中は休むと伝えて、それぞれの部屋に行き、がっつりと休んだ。

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