第7話 登録前の下準備
それからメルン町に着いたジュンタとハルドはジュンタが冒険者として、活動を始める為の最低限の準備を行う事にした。
ジュンタ(おお………!ここが異世界の町か。これはこれで趣のある雰囲気だな。学校で幻想を抱く人がいるのも分かる気がする。)
前世から来た人なら初めて訪れる異世界の町には感動するだろう。それは、ジュンタも例外はなく、町の雰囲気に飲まれていた
。すると、ハルドから声がかかった。
ハルド「この町に来るのは初めてか?」
ジュンタ「うん。故郷とはまた違った感じで綺麗な町並みだと思うよ。」
ハルド「それは何よりだ。早速冒険者としての活動についてだが、今日はいきなりギルドには行かず、下準備だ。」
ジュンタ「何で?」
ハルド「何でってお前、住む場所とか、食べ物を蓄えたりしないと、話にならんだろ
。あとは、装備やアイテムも必要最低限ないとな。」
ジュンタ「え、でもアイテムはともかく、装備くらいは登録したら1番安いのでも支給されるんじゃないの?」
ハルド「ここは町の特色により、新米冒険者で溢れ返っている。ギルド運営の都合で装備は十分なものを賄える訳では無いからな。それでも革製の防具と青銅製の武器くらいは貰えるぞ。」
ジュンタ「なるほど。装備に関しては最初はギルドの奴でいいや。」
ハルド「そうだな。住む場所は俺ん家があるから問題はない。」
ジュンタ「いいのか?」
ハルド「ああ。ただ、俺も収入そんなに無いからあまり住み心地は良くないぞ。」
ジュンタ「宿代と家賃が浮くだけ有難いよ
。」
ハルド「じゃあまずは、家に案内するぜ。
」
とりあえずハルドの自宅に案内してもらった。
ハルド「ここだ。」
ハルドの自宅は本人が言うだけあってかなり年季が入っていた。
ジュンタ「お邪魔します。」
ハルド「『お邪魔します』って(笑)お前一応居候だからな?」
ジュンタ「確かに。」
ハルド「でも悪いな。普通の家より寂れた感じで。」
ジュンタ「いやいや、居候が贅沢言えないよ。それで、これから買い物行くの?」
ハルド「そうだな………。あ、俺ちょっとギルドに用事があるんだ。少しの間留守番してくんねえか?」
ジュンタ「分かった。気をつけて。」
ハルド「んじゃ行ってきまーす。」
バタン。
ジュンタ「適当なとこに座って荷物整理するか。」
僅かな荷物をまとめた。森で採った赤い実と獣の毛皮、そしてそれを狩った自作の弓だ。
ジュンタ(ハルドは結構親切だな。こういう人が1人いてくれるとすごく助かる。でも、いつまでも世話になりっぱはしじゃいけないし、冒険者としてしっかりとお金を稼げるようになったら自分の家を探そう。そしてハルドに恩返ししよう。)
ジュンタは自分の為に活動環境を整えようとしてくれているハルドへいつか最高のお礼をしようと考えるのであった。
暫くして、ギルドで用事を済ませたハルドが戻ってきた。
ハルド「よし、クエスト報酬で金が入ったし、買い物行くぞ。」
ジュンタ「うん。」
2人はハルドの自宅を出て、メルン町の市場へと向かった。まずは、雑貨屋で薬草などの冒険に必要なアイテムを購入する。
ハルド「おばさん、薬草いつもの数頂戴。
」
雑貨屋「あら、ハルド君いらっしゃい。その子は?見ない顔ね。」
ハルド「コイツはジュンタ。偶然森で出会ってこの町に初めて来たんだ。」
ジュンタ「はじめまして、ジュンタです。
」
雑貨屋「ジュンタ君っていうのね。よろしく。メルン町へようこそ!私は雑貨屋よ。欲しいものがあったら是非買っていってね
。」
ジュンタ「生憎お金持ってないんですよ。
」
ハルド「コイツは旅の途中で有り金全部無くしたから一時的に俺ん家の居候になるんだ。」
雑貨屋「まあ、それは大変ね。あ、ハルド君、薬草10個、100
※この世界の通貨の単位は
ハルド「ありがとう。代金は置いとくよ。じゃあまた来るね。」
ジュンタ「薬草って何?よく買うの?」
ハルド「ああ。怪我したときすり潰して傷口に塗ると治る草なんだ。よく応急処置に使ったりする。」
ジュンタ「へえ。次どこ行くの?」
ハルド「食材買いに行くぞ。まずは野菜だ
。」
ジュンタ(この世界、野菜とかあるんだ。)
ハルドが薬草を買い終え、雑貨屋を後にした2人は、野菜市場に向かった。そこにはジュンタが知っている野菜に似たようなものがたくさんあった。
ハルド「えっと、“キャロ”と“ディッシュ”、あと“プル”をくれ。」
ジュンタ(すげぇ。見た目はスーパーで売ってる野菜まんまだよ。人参と大根かな?あと、あの赤い実、森で採ったやつじゃん。ここで売ってるんだな。)
ジュンタ「その赤い実、森でも見たけどなんていう食べ物なんだ?」
ハルド「これ?“プル”っていう果物さ。甘くて水分が多いのが特徴だな。この町じゃ料理にもよく使われてるんだぜ。」
ジュンタ「そのままでも美味しそうだけどそれも良さそうだね。」
ハルド「ああ。結構良いんだぜ。じゃ、最後は肉屋だな。」
ジュンタ(肉屋か。異世界のお肉楽しみだな
。)
最後に肉屋に寄った2人。ジュンタは楽しみにしていたが、店の販売方法に衝撃を受けた。
ジュンタ(な、何これ………?本当に大丈夫なの?)
そこでジュンタが見たのは生肉をケバブのようにまる出しにして売ったり、ブロックで棚に並べられたりしたという衛生管理皆無の様子だった。
ジュンタ(いやいやいや、生肉何も包装されてないじゃん!せめて葉っぱで包も?日本と違って発展してないから生鮮食品保存できてるかどうか怪しいし………)
ジュンタ「ねえ、お肉っていつもこんな風に置かれてるの?」
ハルド「うん。そうだけど?この売り方に慣れないのか?」
ジュンタ「うん。俺が知ってる売り方だったらせめて何かで包むよ?」
ハルド「そうなんだな。」
ジュンタ(いや『うん。』じゃないのよ!え
?俺お腹壊さないか心配なんだけど。)
ジュンタの心配を他所に、買い物を終え、帰宅をした。そして、ハルドは料理の準備を進める。
ジュンタ「ハルドって料理もできるの?」
ハルド「まあな。外食は金がかかるから、節約には必須だぜ。新米冒険者なら尚更だ
。」
ハルドは今日買った食材を使い、料理を始めた。匂いが部屋中に広がる。そして………
ハルド「へいお待ち!」
ジュンタ「おおー!美味しそう!」
ハルド「へっへ!俺の得意料理だぜ!名付けて『ツインズ炒め』。2種類の野菜と肉を炒めたシンプルな1品だぜ。」
2人は互いに向き合う形で食卓に座った。
ハルド「それじゃ、新たな仲間のデビューを祈って………」
ハルド「いただきます!」
ジュンタ「いただきます!」
いただきますの合図で食べ物を頬張る。
ジュンタ「ん!美味しい!」
ハルド「そうだろう。簡単で安くて美味いからいつでも作れるし、料理始めたときからずっと作ってきたんだ。」
ジュンタ「へぇ、俺も作って見ような。」
ハルド「その時は作り方教えるぜ。」
ハルド「しかし、本当は服も買いたかったんだけど、金がなくてな。お前毛皮のままだし。」
ジュンタ「いや十分だよ。俺が冒険者になって、お金稼げるようになってからにしよう。」
ハルド「そうだな。」
ジュンタ「もちろん、自分で買うつもりだよ。これ以上負担かけられないしね。」
ハルド「お前、良い奴だな。」
ジュンタ「当たり前だと思うけど。」
ここで、2人とも食事を終える。
2人「ご馳走様。」
ハルド「食器片付けるわ。」
ジュンタ「待って、俺にやらせてよ。」
ハルド「いや、明日はギルド行くから、しっかり寝とけ。冒険者登録時間かかるからな。」
ジュンタ「うん。わかった。おやすみ。」
ハルド「おう。おやすみ。」
ジュンタは明日のギルドでの手続きに備えて眠りに就く。そして、万全の体調で一夜を明かすのだった。
To be continued
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