3️⃣

 早速、二人は刀の制作に取り掛かった。マリアは部屋の中央に立ち、すぅと息を吸う。マリアの前に立つ{創造クリエイト}と指を絡め手を繋ぎ、頭の中に確かに刀の形をイメージしながらゆっくりと詠唱を告げた。


「——“{森羅万象の父}よ、我の欲する物を与え給え。{創造クリエイト}”」


 マリアと{創造クリエイト}の間に、光が集まる。その光が形を成していく。マリアはその光をジッと見ていて、目眩がした。



 ——聖愛まりあ



 頭が、どこかに飛んだような浮遊感があった。脳内に溢れた、大量の声。



 ——嗚呼、哀れな。“■■”の大罪を背負いし娘よ、どうか聖女■■■■■の贖罪を


 ——君には期待してるんだよ? ■■■聖愛さん。何せ君のお父様は世界的な名俳優の■■■■■■さんなんだから


 ——全く、どうして僕達の妹はどうしてこうもお転婆なんだ。“■■”に居れば安全だと云うのに……


 ——決めたわ! アタシ■■■■■と一緒に“■■”を目指す!


 ——可愛い王妃様。どうか貴女が健やかに過ごせますよう、宮廷魔術師の名にかけてこの■■■■■、精一杯務めさせていただきます


 ——お兄ちゃん。■■■お兄ちゃん、いないの? アタシの傍に来てはくれないの?


 ——お姉ちゃん聴いて。今お姉ちゃんは病気なんだよ。■■■■■■■って言う病気で……でも入院すればよくなるから! ねっ?


 ——どうか御赦しください!! この仔達だけは殺さないで!! アタシと■■■■■の仔供を殺さないで!!


 ——聖愛だっけ? あの子は残念だったね。弟の■■くんと違って父親の血を引けず役者として才能がなかったんだから


 ——アタシおかしくなんてないわ!! アタシ病気なんかじゃないわ!! アタシから最後の居場所まで奪う気なの!? そうなんでしょう■■!


 ——キラキラ星に願いを込める、素敵じゃない。ねぇ、アナタもそう思うでしょ? ■■■




 ——“方舟”はいつでも、貴女を見守っていますよ、マザー=■■■



 ガクンと、マリアは膝から力が抜けてしまった。{創造クリエイト}がマリアの手を引き受け止めてくれなければ、マリアは床に崩れ落ちていただろう。


 マリアは呆然としてしまって、ただ糸が切れた操り人形のようにだらんと{創造クリエイト}に身体を預けて天井を見上げた。しかしその焦点も定まっているとは言いづらく、本当にただ目を開いているだけだった。


「……{創造クリエイト}、ねぇ、今アタシ……」


{……}


「沢山の声がしたの……全部は、憶えてないけれど……雑音ノイズも掛かってて……でも沢山の声が聞こえて……——」


 マリアはそこで気を失った。目覚めた時にはベッドに居て、書き物机の上には聖愛が望んだ刀とそれを納めるための鞘、そしてその隣には{創造クリエイト}のカードが『これが成果物だ』と言いたげにそこに居た。

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