2️⃣

 その日は姉が見合い相手と顔合わせに行っていて、屋敷の中には家族は誰も居なかった。だからこそマリアは遠慮無く{創造クリエイト}を呼び出せた。


{嗚呼、相変わらず面白いのぉ、我の甘えたちゃんマ・カリネットは。我に武器を欲するか}


「うん。一時的な思いつきじゃない、ちゃんと考えた結果のお願いだよ」


{そうか、ならば問うてやろう。正気か?

 我は“”から“”を生み出す魔神。お主は今年で齢7つ。その日々で培ってきた時間・・が対価として我に支払われるのだぞ? 武器が完成した時、お主は抜け殻のようになっているかもしれぬ。それでも……——}


「——本気だよ。リスクは分かってる、でもやらなきゃいけないの。アタシは、一人で生きていけないといけない。……そんな、気がする……なんでかは分からないけど……が、関係してるのかな……?」


{我の口からは何も言えぬ。知りたくば己で探ることだな}


「うん……」


 いつもこうだった。{創造クリエイト}だけではない、魔神は——即ちカード達が創られた時のマリアの話をしたがらない。強く問いつめても交わされるか、自分で調べろと一蹴されて終わりだった。


 ふむと、{創造クリエイト}は目を細める。


{お主の気概はあいわかった。ならば協力してやろう。して、お主はどのような武器を望む?}


「刀! 刀がいい!」


 {創造クリエイト}の許可が降りたことで、マリアはわっと喜んだ。そして強く希望を伝える。


{刀? それまたどうして珍妙なものを。刃が欲しいならつるぎでよいだろうに。そもそもお主には{ソード}のカードがあるではないか。お主の思うがままに使えるあの刃以上に欲しいものがあるのか?}


「確かに{ソード}は優秀だわ、“斬り裂く”ことに関しては。だからそれとは角度の違う刀を、創りたいの」


 マリアは書き物机の上の羊皮紙に、羽根ペンでサラサラと刀の構想を描く。生憎マリアは絵が得意では無いが、イメージが伝わればいいのでこの際気にしない。


 マリアが描いたのは、先端と柄付近だけが刀としての太さをしている細身の刀だった。ほうと{創造クリエイト}はその絵を見る。


「こんな感じに、上身かみの中で切っ先と刃区はまち以外は細身で、突きに特化した刀が欲しいの。余計な部分を削ぎ落として、出来るだけ軽く、アタシでも扱える刀をね。勿論刃先は良く斬れるようにするわ、でもアタシの腕力じゃ剣技ではまず勝てない。鍔迫り合いなんて以ての外。だから最初から一刺しで終わる刀が欲しいの」


{一刺し?}


「うん。この刀の刀身には、毒を仕込めるようにする。注射器の針のように刀身に細い空洞があって、柄で毒を入れて、突きで相手に毒を刺す。{ポイズン}がいるから毒の調達は簡単だわ、むしろ周囲も巻き込んでしまう{ポイズン}の力を遺憾無く発揮するためには毒が触れ合う位置が限定的になっていないと困る。

 要するに“一撃必殺!”な刀が欲しいのよ。……こんな形状の刀、普通の鍛冶職人に見せたら鼻で笑われで終わるわ。だからアナタに頼ってるの」


{なるほど、面白いではないか}


 {創造クリエイト}の反応は上々だった。マリアはホッとして、二人は早速“創造”を始める。ちなみにこの刀、すめらぎ聖愛まりあ時代に見た某鬼を滅する漫画の中に登場する刀そのまんまなのだが、異世界なので著作権が見逃されることを祈る。 

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