2️⃣
皆美しい男達だった。一人は長い金髪を三つ編みに結い、一人は前髪をポンパドールにしている。顔立ちが似ているから兄弟だろうか。
そしてその中央。悠然とガゼボのベンチに腰掛け足を組む、銀髪の美しい青年。褐色の肌が目を引くこの青年こそ、今日のマリアの見合い相手なのだろう。
しかし、とマリアは考える。この青年、全く婚約に乗り気ではなさそうである。マリア到着の報せを聞いてもつまらなさそうにしているだけで、こちらを見てはいるが好意的な視線ではない。
もう一つ懸念点がある。この庭、前述の通り森のように広い。その広い庭の中に、殺気を隠そうともしていない連中がいる。これはなんだ。嫌な予感しかしない。一言で言おう、ダルい。
とりあえず親に憶えさせられた目上の人間に対するはじめましての挨拶の定型文でも言って茶を濁すかとマリアが口を開きかけた時、先にリーロンが口を開いた。
「かったるい言葉は要らねぇ。俺達に必要なのは有意義な言葉だけだ」
「……と言うと?」
「{黙れ}」
次の瞬間、マリアは自分の口が縫い付けられたかのように動かなくなり喋ることが出来なくなって、思わず口を押える。そのリアクションにリーロンは満足気だった。きっと某アニメ映画の、神隠しに遭った先で両親が豚に変えられたあの少女も今マリアと同じ気持ちだっただろう。これはなんだ、どうして身体が言うことを聴かないのだ。
「まだ俺が喋ってるだろ? 口を挟むな。
俺達に必要なのは“信頼”だ。結婚するんだからな、当たり前だろ? その“信頼”をお前が得るために必要なのは『どれだけ
立ち上がったリーロンはマリアの目前まで歩いてくると、顎を掴み自分の方を向かせる。
「この庭に今、俺の命を狙ってる殺し屋が居る。数は十人。
殺せ、俺のために。上手く殺せたらお前と結婚してやる」
なるほど、つまり“テスト”しようということなのか。合格したら召し上げてやる、と。ダルい。
「先に言っておくと、リーロンの妻になったらこーいうことよくあっから」
「リーロンを殺して財産関係奪おうとしてる奴はゴロゴロいる」
「よーするに、『病める時も健やかなる時も暗殺者に狙われた時も共に在ることを誓いますか?』っていうテスト」
三つ編みとポンパドールが交互に話す。説明し慣れているその様子からも、この“テスト”が行われるのは初めてではないらしいことが窺えた。
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