3話:結婚は人生の墓場とはよく言ったものね
1️⃣
*
「うわデッカァ……固定資産税ヤバそ……」
サティサンガ家に到着してマリアが最初に零した感想は、何ともまぁ可愛げの無く凡庸なものだった。目の前の壮大な建物が何故壮大に造られたかの理由なんてマリアには分かるわけもなく、再度カードの存在を確認した。これさえあれば大丈夫と自分に言い聴かし、従者に従って馬車を降りる。
出迎えには多くの衛兵が来ていた。屋敷の前にキチンと整列した、同じ服に同じ剣を持つ衛兵達。そこから向けられる目、目、目。クスクスと笑う嘲笑も聞こえる。どうやら歓迎はされていないらしい。
それがどうした。マリアはドレスを持ち上げ会釈する。
「はじめまして、ダントルトン家より馳せ参じました。本日はどうぞお手柔らかによろしくお願いします」
そして精一杯の笑顔。まぁ愛想笑いなのだが。今世のマリアは大変愛らしい風体をしている為、この笑顔一つで大抵の人間は黙らせることが出来るのである。実際に衛兵達の大半は驚いたように目を見開き、中には早速ヒソヒソとにやけ笑いでマリアの容姿の感想を囁きあっている人間もいる。嘲笑は消え代わりに“女”に対する好意の眼差しが増えた。美少女ひゃっほい。
「すまない、迎えが遅れた」
そんな初対面をかましていれば、屋敷の中から一人の少年が駆け出して来る。マリアと同い歳ぐらいだろうか、彼は本当に申し訳なさそうにマリアに駆け寄るから、マリアは変わらず愛想笑いで応対した。
「お気になさらず。本日はこのような席を設けていただきありがとうございます」
マリアの言葉に、少年は一瞬動きを止めた。顔を割るような傷を顔面に持つ彼は、ぐっと何かを堪えるようにしてから、握手の手を差し出す。
「オレはラウド。今日オマエが会いに来た公爵家長男——リーロンの側近だ。長い付き合いになるだろうが、これからよろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いします」
よかった、この男は話が通じそう。何を言い堪えたのかは知らないが、少なくとも金持ち特有のにっちもさっちも話の通じない感じは無い。
「リーロンは中庭で待ってる。少し歩くがいいか?」
「はい、構いません」
マリアはドレスの裾を踏まないように背をのばし歩いて、ラウドの後を追いかけ歩き出した。
ラウドに案内された中庭は小さい森くらいの広さのある場所だった。鬱蒼とした森の中、石畳の敷かれた通路を進み、マリアとラウドはガゼボに到着する。
「リーロン。ダントルトン令嬢のご到着だ」
ラウドの言葉に、ガゼボに居た三人の青年がこちらを向く。
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