5️⃣

〔お前は受験するんだな〕


「えぇ、そのつもり。……上手く行けば、だけど」


〔なら俺も受験先はリヒテンシュタン魔法学校にしよう〕


「うそ……本当に……!? じゃあもし合格したらアタシ達また沢山遊べるってこと!!」


 マリアは思わず椅子から立ち上がって両手で頬を押さえた。そうしていないと顔がにやけて醜くなると思ったからだ。


〔おいおい、学生の本業は勉強だろ?〕


「わかってるわ! でも、もしその勉強をアナタと出来るとしたら、それってとってもとっても素敵なことだと思わない!?

 ねぇモンタ決めた! アタシなんとしてでもリヒテンシュタン魔法学校に合格するわ!! だからねぇ、また、アタシと昔みたいに遊びましょうよ! アナタと一緒に居たいの。だからアタシ頑張るわ!」


〔リヒテンシュタン魔法学校の試験形態は知ってるのか?〕


「……まだ知らない」


〔筆記と実技だ。筆記で学力を、実技で魔力を測ろうということだろう〕


「アタシが助けた先生は、アタシの固有魔法なら特待生制度が使えると仰ってくれたわ。筆記は、過去の問題集が売られているだろうからある程度察しはつくけど、魔法の実技ってどんなものかしら」


〔さぁな。だがお前の魔法なら、たしかにどんな試験でも楽に突破するだろうさ〕


 幼馴染に褒められて、マリアは益々嬉しくなってしまった。


「はぁ……夢のようだわ。クリスマスと新年が一気に来た気分。アタシ、なんとしてでもこの家と絶縁してリヒテンシュタン魔法学校に合格するわ。それで新しい生活を始めるの!」


〔それなんだが、縁の切り方は考えてあるのか? お前に知恵が浮かばないなら、俺が手助けすることもできるが……〕


「心配しないでモンタ! これぐらい一人でやって見せるわ! なんでもかんでもアナタに頼ってちゃ、アタシはアナタの“親友”では居られないもの!」


 マリアは水晶玉の向こうの幼馴染に力強く言って見せたが、その実不安だった。マリアの作戦はハッキリ言ってレキャット頼みだし、もしそれが頓挫した時の次の作戦は思いついていなかった。だが幼馴染の前では見栄を張りたかった。この水晶玉が壊れてしまえばまた最低でも一月ひとつきは顔を合わせることの出来ない親友である。虚栄でもいいから自信のある様子を見せたかった。最悪、これが彼と会う最後になるのかもしれないのだから。


 それから数時間楽しくお喋りをしていれば、水晶玉は役目を果たし割れてしまった。マリアは暫く友と話せた喜びの余韻に浸ってから、改めて彼の手紙を読む。そして手紙の返信を書きながらも、婚約を上手くいかせる方法を考えていた。だが良い考えは浮かばず、不安は募るばかりである。結局はレキャットに期待するしかなかった。きっと彼が上手くやってくれる、と。


 そしてレキャットは、そんなマリアの予想を大きく超えてきた。

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