4️⃣

〔久しぶりだなマリア〕


「久しぶりモンタ……! やだ、アナタったら少しまた大人っぽくなったんじゃない?」


 水晶に映し出された幼馴染の姿に、マリアは久しぶりに高揚した声を出した。眼鏡をかけた幼馴染は、一か月前の手紙の時より少し髪が伸びて鼻筋が大人っぽくシャープになっていた。マリアと同い年の14歳の少年は日々青年へと変わろうとしているのだ。久しぶりに見たマリアが驚くのも無理ない話である。


 モンタは〔どうだろうな〕と肩を竦めたが、マリアをジッと見てから〔そっちは相変わらずだな〕と笑った。


「えぇ、相変わらず貧乏貴族。没落したらどこに行こうか今から考え中よ、ホント大変」


〔困ったらこっちに来い。迎えならすぐに寄越せる〕


「あら、アタシを面倒見るとなるとアタシの父親と母親と姉も着いてくるわよ? そんな重荷背負わせられないわ」


〔そんな家族は捨ててしまえ。“家族”などとていのいい言葉で分別しても所詮血の繋がっただけの他人だ〕


「えぇ、アタシも、“愛”と“信頼”があって初めて“家族”になるんだと思う。そう考えるとお姉様よりもモンタの方がアタシの“家族”って感じ!

 アナタに言われた通りね、近々捨てる予定なのよ。リヒテンシュタン魔法学校、知ってる? その学校に入学する予定なの。たまたまリヒテンシュタン魔法学校の教師様と知り合って、困っていたからちょっと手を貸したら、恩返しのつもりで色々と取り計らってくれるみたい。勿論入試試験はアタシ自身の力でやらなくちゃだけどね。モンタは……そういえばこの秋からまた新しい学校よね? 入学先はもう決まった? まさか入試はまだ終わってないでしょう?」


 モンタは非常に勤勉で賢い少年であった。彼の親は商人としての彼の才能を見抜き幼い頃から家庭教師に加え中流階級向けの学校に通わせるなどして彼の賢さに磨きをかけている。モンタが今通っている学校はこの夏で卒業となり、秋からは次の学校に通い始めるはずだ。リヒテンシュタン魔法学校がどんな場所かまだ全く調べがついてないが、もし学校の場所が近ければ幼い頃のように頻繁に会うことができるようになるかもしれない。


 そんな期待を胸にしたマリアに、水晶越しのモンタは腕を組み座っているソファーの背もたれに寄りかかる。


〔それがまだ決めてないんだ。候補はある、が、どれも甲乙つけ難い。父上にも早く決めるようせっつかれているんだが、これと言って決め手が無い〕


「“甲乙つけ難い”じゃなくて“どこに行ってもあんまり変わらない”の間違いじゃない? だってアナタならどの学校でも誰よりも賢く、誰よりも知識を身に付けられるから。教師が教えられる以上の知恵をその脳みそに学び、在学中を有意義なものにするでしょう? たとえその場所がどれだけ劣悪な環境だったとしても」


 マリアはクスクスと笑った。モンタも肩を竦め笑ったが、〔リヒテンシュタン魔法学校〕と口にする。

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