9️⃣
まだ雨はやまない。遠くで雷鳴も轟いている。そんな屋敷の中、パチパチと鳴る暖炉の薪の前で、人差し指で唇をタップするように叩きながらマリアは考える。
悪くない誘いだ。むしろ良い誘いだ。だからこそ引っかかる。そんな美味しい話があるものかと、心の中で“マリア”が言っている。そんな美味しい話が自分に転がってくるものか、と。
でも、もし。もし本当なら。
マリアは自室として与えられている部屋に戻り、全ての魔神のカードをあえてざっくばらんになるようにテーブルの上に置いた。掻き回すようにシャッフルして、それを一つの山に整える。
タロット占いを始めとしてカードは占いに用いられることが多い。マリアの持つ魔神のカードも例に漏れず、占いに使用することが出来た。やり方は“記憶”としてマリアの中にあった。
シャッフルしたカードを一つにまとめ、それを順番通り独特な形に並べる。マリアはゆっくりと瞼を閉じて、すぅと息を吸う。腹の奥に力を込めるようにして、魔力を魔神に行き渡らせる。
「——“汝、我の
マリアは目をゆっくりと開く。明るい視界には、並べられたカード達がある。
それからマリアは、並べられたうちの事柄への[解決方法]を示す位置にあるカードを開いた。結果は{
マリアは頭を抱えた。自分のカード占いでこんなにもポジティブな内容の結果が出ることなんてそうそうない。しかしマリアはこのカードの占いには自信があった。過去に庭師を占った時は彼が占って欲しかった事柄をピタリと当てて見せたし、『浮ついた行動と発言に注意』と占った馬番は彼の軽率な発言の結果三股がバレて女三人に袋叩きにされた挙句両親に田舎に連れ戻された。カード占いは受け取り手次第とはよく言うが、ここまで前向きな内容ばかりだと流石にカード達のヤラセを疑いたくなる。
マリアは恐る恐る、事柄の[結果]の位置のカードを捲った。{
「あぁもういいわよ! わかったわよ!」
マリアは拗ねたように引き出しから万年筆を取り出し、レキャットから受け取った[入学希望]の書類にサインをして机上のカード達に見せつけた。
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