第5話,執事と少女


「ッ!た、ただいま…」

さっきまで私たちと楽しそうに話していた少女が、召使いを見て気まずそうに目を逸らした。

「殿下、そちらの方々は?」

この召使いの中でも一番仕草が洗練された男が私たちの前へ出てくる。

「…私の友だ…お前には関係ない…」

「そうですか…しかし、変わった服装ですねずいぶんと…個性的でらっしゃる」

男が私たちを上から下まで見て見下すそうに言った。

(はぁ⁈誰この人⁈これ学校の制服だけど⁈まぁ、私の学校の制服…ちょっとダサいけど…)

私は紺一色の制服を見て心の中でため息をつく。

「おい…俺の友達を馬鹿にするなよ⁈」

少女がまるでヤンキーかというような勢いで男に突っかかる。

「それは失礼を…」

男は素直に少女に頭を下げる。

「えー皆様、私の名前はクラリスと申します。御用の際は何なりと…」

「…とりあえずみんなの部屋を用意しろ」

「わかりました…」

少女はクラリスにそう命令を下す。クラリスはチラッと私たちを見た後、他の召使いを連れていなくなった。

「…はぁ…」

少女は疲れたようにため息をついた。

「なんか、感じ悪かったよな?」

井手が怒ったように言う。

「ほんと。めっちゃ嫌味っぽかった!」

川熊もそう言って怒る。

少女は困ったようにあたまをかく。

「ごめんね。私の部下?というか、召使いが…」

すまなそうに謝る少女に怒っていた2人は慌てる。

「いやいや、えっと…呂雉(りょち)?さん?のせいではないから」

「そうそう!呂雉?さんのせいではないって!」

あたふたとしながら言い訳のように言う2人。

「ふふっ、ありがとう」

少女は嬉しそうにお礼を言った。

「とりあえず、みんなわたしについて来て!話せることを話すから…」

少女はそう言ってニコッと笑った。

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