エンカウント
【勇者】カトラス・マクスウェル。
ダガー王国内屈指の剣士であり、勇者として魔王を倒す運命にあった男。しかし本人は報酬目的で動いていた節がある。歴史書の記載では弱き者を助けるのは魔王を倒すついでであると豪語する口ぶりから、あまり性格は良くないとされていた。目つきも口も悪いため、「勇者らしくない」と道中ぼろくそに言われていたがそれでも勇者であったようだ。しかし、彼の存在は魔王との勝敗を決める戦いにおいて「行方不明」となっている。
彼は剣術だけでなく、転移魔法や敵を攪乱させる術に長けており、勇者と言うよりも盗賊や隠密向けのスキルを持ち合わせていた。それ故に、魔王と相打ちになった瞬間に何処かへ転移したのだと本人は思っていた。
だが、現実はそう甘くないようだ。
まるで見た事のない装置や鉄塊が置かれた白い部屋で、自分はいつの間にか寝ていたらしい。身体を起こした瞬間ずきずきと痛む頭部を押さえると、急に部屋の扉が開かれる。瞬く間の場面展開にカトラスは口をぱくぱくさせることしかできなかった。
「伊佐見…やっと目を覚ました…」
「病院だよ。…おまえ、何も覚えていないのか?」
いつの間にかカトラスのいる室内には、3人ほどの人間が存在している。ベッドのすぐ側に置かれた、椅子らしきものに座っている黒い服の少年がやや呆れ顔でカトラスを見ていた。
「病院…びょう…いん…?」
「もしかして頭を打った衝撃で…」
聞き慣れない単語を繰り返すと、部屋の入口近くに立っている少女の顔面が青白くなっている。
「俺が頭を?何でだ…ここはダガー王国ではないのか?貴様らは誰だ?魔王は何処に行った…!」
「何言ってんだ、魔王は…え?」
「「「?」」」
彼、もしくは彼女らは伊佐見渚を知る者らしい。 3人は頭の中が真っ白になった、と後に語るなどと、この時は知る由もなかった。
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