IF90話 チームメイトだろ?
依田とクラスが分かれた事で、俺がこのクラスで一番足が早くなっていた。そのため体育祭では100m走の他、去年と違いクラス対抗リレーではなく色別対抗リレーへエントリーされる事になった。
100m走では依田と当たって2位でのゴールとなった。
そして色別対抗リレーでは最下位から3人ごぼう抜きしたカオリから1位で赤いバトンを受け取ったけれど、猛烈な勢いで追い上げる黄色いバドンを持った依田に追い抜かれて2位で5組の女子生徒にバトンを渡した。
「なんとかギリギリで追い抜けたよ」
「もう足では依田に勝てる気しないな」
「本職だからね」
抜かれた事は悔しいけれど、依田の頑張りを知っているので屈辱だとは思わなかった。
「お疲れ様~」
「オルカは白組なんだから黄組を応援しちゃ駄目だろ」
「あっ! そうだった!」
オルカも2組の色別対抗リレーの選手になっていたため、俺が依田に追い抜かれる瞬間、オルカの声で「カケル君頑張れ!」という声が聞こえていた。本来ならオルカは自身がバトンを渡した同じく2組の男子生徒を応援しなければならなかった筈だ。
「私はミノルを応援してたわよ?」
「ありがとう、ちゃんと聞こえてたよ」
カオリの声は走っている間ずっと聞こえており、全力以上の力を出せたからゴール手前の直線までは依田を抑えられていた。
「私は2人とも応援してました」
「ユイは青組なんだからそっちも駄目だろう」
ユイはシオリと同じ1年7組で青組なので、赤組の俺と白組の依田を応援するのは間違っている。
「今は青組の応援していますよ」
「それなら問題無いのか?」
まだ3年生が走っていて決着ついていない。最後はちゃんと自分の組を応援していましたよって事なんだろうけど、それは体育祭の応援作法として正しいのだろうか?
△△△
体育祭は色別対抗リレーの得点割合が高かったらしく、依田の1位でバトンを渡して以降トップを守り続けた白組が逆転優勝して幕を閉じた。
赤組は色別対抗リレーの差で逆転されてしまった組だった。1位を譲ってしまった俺が戦犯と言えなくもないけれど、依田が圧倒的に早かった事が誰の目にも明らかだったからか、直接俺にそれを言って来る人はいなかった。かなり減りはしたけど、未だに投函され続ける下駄箱の不幸の手紙たちには書かれている可能性はあるけれど、それに興味はないため知らなかった。
体育祭の10日後に中間テストがあり俺は48位とさらに順位を上げた。ゲームでは50位以内になると、カオリの好感度が平常以上に上がるようになった。そして受験では一流大学の受験を選んだ歳に合格する可能性が出て来る成績でもあった。
そして6月になり梅雨入りが発表された日にオルカの誕生日があった。俺はアザラシのマグカップを買って贈っておいた。ゲームではヒロインのプレゼントは3択式で、2年目のオルカはアザラシのマグカップが1番好印象だったので、丁度いいと思い探して購入した。
「うわ~可愛い、大事にするよ」
「依田のプレゼントほどのものじゃないけどな」
「えへへ・・・」
依田はオルカに婚約指輪を贈っていた。誕生日プレゼントに婚約指輪はありかと思ったけれど、オルカの反応的には有りのようだった。
翌日オルカが婚約指輪をつけて学校に来た結果、1人の男子生徒が失神して保健室に運ばれたらしい。真田弟の話ではこの学校にはカオリやオルカには非公式ファンクラブというものがあるらしく、失神して倒れたのはその会長にあたる人物だったらしい。
そういえばカオリが婚約指輪をつけた時も泡を吹いて倒れた人が出たとオルカから聞いたような気がする。その人もカオリの非公式ファンクラブとやらの会長だったのだろうか。
△△△
週末に港の方で祭りがあり、そこで行われている3on3大会に、カオリとオルカとユイがチームを組んで女性部門に参加した。他にも八重樫、早乙女、ジュンが混合部門に出ていて、他にも去年クラスメイトだった男子バスケ部員の望月と哀川の他、築地という寡黙そうな男子バスケ部員のチームが男子部門で参加していたので、俺とシオリと依田はその3チームを応援していた。
それぞれ順調に勝ち上がっていたけれど、最初に決勝戦になったのは参加人数が少ない女性部門に参加したカオリとオルカとユイのチームだった。相手チームは駅の南側に日本支社を構える外資系企業に勤める女性達だった。顔立ちが日本人離れしているのでは赴任して来ている人達か、赴任して来た旦那さんの奥さんや娘さんとかだろう。
試合は一進一退といった感じで進んだ。相手チームの選手の方がテクニックがあるけれど、運動量で拮抗しているといった感じだった。
しかしカオリが外から2Pシュートを2回連続で決めた事が決定打になり勝利を飾る事が出来た。
「すごいねみんな!」
「おめでとう!」
「よくやったぞ!」
相手選手が3人に話しかけ、オルカとユイが挙動不審になり、カオリだけが返答をしていた。多分英語で話しかけられてカオリしか聞き取れなかったのだろう。
「何を話しているんだろ」
「お互いの健闘を讃えているんじゃない?」
「スカウトだったりして」
話し終わったのかカオリとオルカとユイは俺達の所にまで戻って来た。
「英語で話しかけられちゃったよ~」
「早口過ぎて全然分からなかったです」
「何を話していたの?」
「どこのハイスクールに所属しているんだって言われたから、高校の名前を教えておいたわ」
「そうだったんだ~」
「全然聞き取れませんでした・・・」
「世界の水辺になるには英語も使えるようになった方が良いんじゃないか?」
「通訳はカオリに任せるよ~」
「私にも通訳欲しい」
「田宮君も結構英会話出来るわよ」
「ユイには通訳がいるみたいだな」
ジュンの英会話はアメリカ訛りが入っている。アメリカから取り寄せた、バスケの試合の中継のビデオを、生の声で聞き取れるよう学んだ結果、そういう癖がついてしまったからしい。
「負けちゃったぜ~」
「本場の人はうまいよな~」
「バネが違った」
どうやら男子部門に出場した望月達は負けてしまったらしい。カオリ達が決勝で戦ったような外資系の企業のチームとぶつかってしまったようだ。
「女子部門は本場の人に勝ったぞ」
「マジかよ!」
「相手の方が上手かったけど、運動量で逆転して勝利したって感じだったな」
「俺達は後半バテバテだったぞ・・・」
「まだまだ頑張る余地があるって事だな」
「くぅ~」
男子部門の対戦相手だったチームを見たら190cmを優に超えてる選手がいた。望月ともう一人の男子部員は長身ではあったけれど、190㎝には届いていない。女子部門ではユイが相手選手たちを上回る身長をしていて負けていなかった。オルカのディフェンスも粘り強かったので、カオリも安心してアウトサイドからシュートが打てていた。
「八重樫達の試合を見に行こう」
「優勝したら絶対に何か言われるぞ」
「優勝はしませんようにと祈っておこう」
それで良いのか男子バスケ部員達。チームメイトだろ?
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