IF4話 お邪魔キャラ(立花視点)
俺の名前は立花タカシ。俺はこの世界が恋愛SLGゲームの世界だと知っている。何故なら俺はそのゲームの主人公のお助けキャラとして生まれ変わったゲームプレイヤーだからだ。
最初は俺がお助けキャラに生まれ変わった事に気が付かなかった。何故なら産まれた時の俺の名前は梶原タカシで、ゲームで登場するヒロインの一人である妹のユイちゃんもいなかったからだ。
けれどある日親父が仕事で事故って死に、そのあとお袋が再婚した事で苗字が立花になって、相手の連れ子にユイちゃんがいた事でそうなんだと分かった。
ユイちゃんは俺がゲームのヒロインの中で2番目好きなキャラだ。身長が高くなるのが難点だけど顔グラだけで言えば1番好きだ。
それにお袋が再婚した時はまだユイちゃんの背はそこまで大きくなくて、俺にとってジャストサイズという感じだった。
ただユイちゃんと俺は仲良くならなかった。俺の顔が気持ち悪いんだそうだ。
それは仕方ないだろう。だって俺の顔はゲームのお助けキャラらしく、笑顔が張り付いたような見た目をしているからだ。
親父が死んだ時も、「父親が死んだというのに笑顔なんて気持ち悪い」と婆さんに言われてしまった。その時俺は笑ってなんかいなかった。ただ早く葬式終わらないかと退屈に思っていただけだった。
ユイちゃんは俺が帰ると急いで自分の部屋に入り鍵をかけてしまう。ただお袋が帰って来ると出てきてベタベタと甘える。
兄妹仲が良くないのにお袋が離婚しない理由は、お袋と再婚相手の仲が良好な事とユイちゃんがお袋にとても懐いているからだ。お袋も俺より、明らかに血の繋がらないユイちゃんを可愛がっている。俺は家の中で空気のように扱われていてとても居心地が悪い状態になっている。
幸いこの世界は恋愛SLGの世界で俺はその仕組みを知っている。なぜなら俺はただのプレイヤーじゃなく、前世で最難関ヒロインである綾瀬カオリ攻略RTAで世界最速を叩き出したゲーム実況者というプロだったからだ。
ただ俺はゲームの主人公転生したのではない、ただのお助けキャラだ。
ゲームでの俺は新聞部に所属し、女の子の情報を集めて主人公に教えるという登場人物だ。女の子を攻略するのは俺じゃない。
顔は3枚目で、校内では運動も勉強も底辺だった。主人公のように行動によって能力が上がるというチート持ちでもない。
そして俺は卒業時に必ず三流大学に入学する。他の登場キャラが主人公の行動によって進路が変わるのに対して、俺の進路だけは変化が起きない。
そしてテストでは全教科赤点みたいな酷い点数を取り続けても留年や退学にならない。
そう思って落胆はしたものの、この体は前世の俺よりかなり頭がいい。ゲームの舞台となる私立の高校が県下でもトップクラスの進学校で、馬鹿そうに見えてもそこに入学できる程度の能力は持っていたという事らしい。
前世の記憶による知識もあり、中学校ではそれなりの成績を取ることが出来、その高校に入学できたし、高校に入ってもテストで張ったヤマ勘が妙に当たり、底辺な点数ではあるけど赤点にまではならなかった。むしろ周囲が凄すぎて必然的に底辺にならざるを得ないという感じだった。
俺は少しだけ狙っている事がある。
実は主人公が誰攻略出来ないバッドエンド状態になると、高頻度でお助けキャラはヒロインの誰かを主人公から寝取る事が出来たのだ。
ある程度ランダム要素はあるけれど法則はあった。まず最も高難易度のヒロインである綾瀬と妹であるユイちゃんは対象にならなかった。
ユイちゃんは血が繋がって無いんだし良いだろうと思ったけれど、それが仕様だししょうがない。こんなに嫌われているんだし諦めがつけられるというものだ。脱衣所にたまに置かれている下着をオカズにする程度で我慢する事にした。
寝取れるキャラ主人公と出会いのイベントを終えている事と、3年の2月の時に、主人公のステータスでの攻略フラグが立たない綾瀬とユイちゃん以外のキャラと決まっている。だから最も警戒しなけれならないのは主人公が綾瀬を狙っている場合だった。なぜなら綾瀬をクリア出来るステータスは、全てのヒロインを攻略可能なステータスとなってしまうからだ。
だから俺は主人公と会ったら綾瀬の攻略を邪魔しないといけない。それ以外のヒロインの攻略を目指しているのであれば、大概ステータスに偏りが出るため、攻略対象にならないヒロインが出てくる。
その状態で攻略させないのは簡単だ。誰か1人でも良いからヒロインの不満を上げれば良い。そうすれば主人公に対する悪い噂が立って全ヒロインの好感度が下がって攻略不可となる。そのためには主人公には全ヒロインとの出会いのイベントをこなして貰った方が良い。
主人公と出会っていないヒロインは主人公に対する不満が変動しないからだ。出会って貰い不満を爆発させて主人公の好感度を下げまくって貰った方が良い。
それ以外にも秘策を考えている。
まずお助けキャラの俺が主人公に嘘の情報を伝えるという策だ。つまり主人公のお邪魔キャラになるって事だ
違う誕生日を教えれば誕生日を覚えて無かったと不満を持たせる事が出来るはずだ。なにせ女という奴は記念日というものに恐ろしい執着をする生き物だからだ。
他にも好きなものを間違えて教えれば好感度があがりやすいデートスポットやプレゼントや会話の選択ミスをさせる事が出来る。
特に主人公がお助けキャラに連絡する理由の殆どは、ヒロインの好感度と不満度を聞くことだった。それに対して嘘をつかれたら通常プレイヤーは攻略出来ないぐらいだ。
ただ1つ懸念がある。
主人公がチートを使っている場合だ。
実は主人公はゲームスタート直後に名前と誕生日とあだ名を決める事が出来る。
その際に、姓を「全員」、名を「デレデレ」にすると2年の時に出会うユイちゃん以外と全員主人公と出会っている状態で、さらに好感度がマックスから下がらない状態で固定されるという状態となる。
次に、あだ名に「コアラッコ」というゲーム会社のマスコット名を入れると、ステータスがカンスト状態で固定される状態となる。
ヒロイン達に話しかけられるというカットインが発生しまくり、サクサクゲームがすすまなくなるのでRTAでは決して使われない裏技だけど、RTAではなくただ攻略したいだけならこの2つを使えば、デート回数12回という簡単なフラグを回収するだけで狙ったヒロインが攻略出来てしまう。
これをされていたら主人公にヒロインの連絡を教えないという嫌がらせぐらいしか出来ない。好感度マックスだと主人公はヒロイン側から高頻度でデートの誘いを受けるようになるので12回なんて簡単に達成出来てしまうだろう。
△△△
高校の入学式のあと俺の後ろの座った奴が主人公だ。
俺の後ろの席に座ったのは「田中ミノル」という結構精悍そうな奴だった。序盤は奴も俺と同じ高校の底辺ステータスなのでもっと冴えなそうな奴だと思っていたけれど違うらしい。まぁスペックだけは物凄くいい奴だし、実際はそうなんだなと納得した。
俺はお助けキャラとして立ち回らなければならないので「女の子の事で聞きたい事があったら俺に相談すれば教えるぜ」と言って、俺の家の電話番号を書いたメモを渡した。
入学早々綾瀬と親しそうに会話していた早乙女という女に確認したら、ゆはり早乙女は同じ中学校出身で、同じ中学校出身の奴を聞いたらその中に田中が入っていた。
田中のあだ名を聞いてみたら怪訝な顔をされたが、特にあだ名は無く、親しい人は「ミノル」と呼ぶと言った。
これで奴はチート技を使って無いキャラだと確定した。あとは綾瀬狙いで無いことを確認出来れば勝利はほぼ確定したと言えるだろう。
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