改造話 お助けキャラしません(ガールズサイド)
*本編1話の主人公を女性(ガールズサイドの恋愛SLG世界)に変えたらどうなるか暇潰的に改造してみたものです。内容は本編第1話とほぼ同じです。だから読む価値はあまりありません。
こちらも今のところ続きを書くつもりはありません。ただ、こっちのゲーム主人公は早々舞台から退場しないでしょうし、先の展開が変わって、これはこれで面白くなりそうだと感じています。
理由を書くと長くなるのであとは近況ノートに記載します。
ーーー
自宅の廊下にある黒電話が音を立て、夕食後の洗い物を終え弟のユウイチと談笑していたお父さんが「はいはい」と電話先の相手に聞こえもしないのに声をかけながら廊下に出て近づいていった。
私達家族に話すトーンより渋めの声で「もしもし長谷川です」と言ったあと、相手の言葉を聞いて「少しお待ち下さいね」と言ってリビングにいる私に声をかけてきた。
「カヨコ、クラスメイトから電話だ」
「はーい」
お父さんの声が渋いままなのは、受話器の後ろに付けられたオルゴールを相手に聞かせるという原始的な保留で、プッシュ式電話の様な保留機能とは違い声が相手に聞こえてしまうからかな?
「もしもし」
「あっ! カヨコ? 悪いんだけど桜木レント君の事を教えて貰えない?」
「あの・・・どちら様ですか?」
「私よっ! 早川サリナよっ!」
「早川さん? 後ろの席の? どうして私の家の番号を知ってるの?」
「カヨコと同じ中学の人に聞いたのよっ! それより桜木レント君の事を早く教えてよっ」
「桜木レント君って3組の男子だったっけ?」
「そうそう! その人よっ!」
「カッコいいって聞いた事あるわね」
「他には?」
「それ以外知らないわ」
「はぁ!?」
「他のクラスの男子の事なんか知らないわよ」
「部活とか趣味とかも知らないの?」
「勿論知らないわ」
「電話番号とか身長や体重は?」
「私はストーカーか何かかしら?」
「似たようなものでしょ?」
「私とあなたは高校で初対面だと思うんだけど、随分と失礼な事言うのね」
「・・・」
早川サリナは高校のクラスの私の後ろの席の女子で、入学当初から妙に馴れ馴れしくして来る子だった。 その子は私が男子の情報を集める事を趣味にしていると思い込んでいて、私に聞けば何でもペラペラと話し出すモラルが低い人だと思っていた。
実際の私にはそんな趣味は無い。 私は早川さんからそんな話題をクラスの中で振られるので、評判がガタ落ちし続けているので非常に迷惑を被っていた。
「用件がそれだけなら切るわよ」
「ちょっと待ってっ!」
私は待たずそのまま電話を切った。
早川さんが私にそんな事を聞いて来る理由には一応心あたりがあった。 早川さんは、私が前世でやっていた恋愛シミュレーションゲームの主人公で、私こと長谷川カヨコは、主人公に男子の情報を集めて教えるお助けキャラだったからだ。
「早川さんって変わった子だな」
「どうして?」
「受話器を取ったらいきなり「カヨコ!?」 って言って来たぞ? 私の声を聞いたあと「あっ! ユウ君!?」って間違えてたしな」
「お父さんの名前もユウイチなんだし間違えて無いかもよ」
「カヨコの友達に君づけされる訳ないだろ」
「それもそっか・・・」
普通は「もしもし」のあと「長谷川さんのクラスメイトの早川ですけれど、カヨコさんはご在宅ですしょうか」という感じに続けるものだ。 いきなり「カヨコ!?」なんて言うのは、携帯電話が普及し始めたあたり、かけてきた相手の名前がディスプレイで出てくるようになった時代からの応答だ。
どうやら早川さんも私と同じような存在の可能性が高いみたいだと分かった。
「姉さんっ! 同級生がどうして俺の事知ってるんだよっ!?」
「えっ! 知らないわよ」
「あまりおかしな子に身内を紹介するんじゃないぞ?」
「勝手に俺のこと話すなよな!?」
「私は何も話して無いって!」
お父さんと弟のユウから責められる事になってしまった。 早川さんのせいで家庭内の私の評判もがた落ちしそうだった。
---
私には小さい頃から前世の記憶があった。
日本と言う国の海が見える街で生まれ育ち、苦労しながらも68歳まで働いて、そして海で散歩中に波にさらわれ溺死した記憶だ。
私が現在住んでいる場所も一応日本だ。 しかし1970年生まれで還暦をとうに過ぎて死んだ私が1980年に生まれ変わったと言えば輪廻転生では無い事が分かると思う。
小学校の夏休みの時にお小遣いを貯めて、前世の私が住んでいた街に行ってみた事があった けれど、そこは私が住んでいた街と似ている様で違っていて、前世の私の家がある場所にはビニールハウスの農園があり人が住んでいなかった。
ここは前世の私が住んでいた日本では無かった。 テレビで映される有名人は知らない人ばかりだし、CMで流れる企業名なども知らないものばかりなので不思議に思っていた。
その時はパラレルワールド的な世界の日本に生まれた可能性を考えていたけれど、中学校の時にここが私が20代の頃に一世を風靡した恋愛シミュレーションゲームの舞台だという事に気が付く事になった。
気が付いたのは中学校の時にお父さんが再婚をした事だった。 私はゲームのお助けキャラと同姓同名だったけど、長谷川もカヨコもありふれた名前だったし、そのキャラにいるゲームの攻略対象でもある弟がいないのでたまたまだと思っていた。
だけど再婚相手である義母の連れ子で一歳下の弟となる男の子が、私とお父さんの苗字になると、ゲームの攻略対象と同姓同名になる事が分かった。 さらには私が中学校に入学するタイミングでお父さんが転勤を希望し、義母の住んでいり街に引っ越したのだけれど、その近所にある偏差値の高い高校がゲームの舞台となる高校と同じ名前をしていた。
引越し先の街を注意深く散策すると、公園や動物園や遊園地などが、その恋愛シミュレーションゲーム内で、主人公が攻略対象達と行くデートスポットと似通っていたし、駅前のショッピング街にある喫茶店に攻略対象だと思われる人が手伝いをしていたとあっては確信するしかなかった。
「姉さん、高校って楽しいの?」
「後ろの席の子が変な子だけど、高校自体は楽しいわよ?」
「変な奴?」
「男子の事ばかり気にしてるんだよ」
「その子ってカワイイ?」
「顔立ちは整っているけど、お洒落に気を使って無いからから野暮ったいわね」
「ふーん・・・」
弟のユウも攻略対象ではあるのだけれど、体育以外の成績が酷く、偏差値が高いゲーム舞台である高校に入学できるようには思えなかった。
「ユウはどの高校目指してるの?」
「コーチが、頑張れば京都にある強豪校のスポーツ推薦受けさせられるって言ってた」
「はぁ〜すごいね〜」
「でも姉ちゃんの高校も一応県下では強豪でだろ?」
「まぁそうだけどね・・・でもうちは文武両道をうたってるからスポーツの成績だけじゃ入れないよ?」
「だよなぁ~」
「同じ高校に行きたいのなら勉強教えるわよ」
「その時はお願い」
ユウは頑張り屋な所があるので一念発起すれば合格するんだと思う。実際にゲームの中では入学していたし、不可能ではない筈だ。
「制服がカッコいんだよな・・・」
「確かにそうね」
恋愛シミュレーションゲームの舞台だけあって確かに制服は良いと思う。男子は青で女子は赤いブレザーという派手な格好をしている。
「姉ちゃん彼氏作らないのか?」
「今のところ興味ないかな」
「ふーん・・・」
大した人生ではないけれど、それでも前世で生きて来た経験のおかげもあって、小中学校時代の勉強は復習の様なものになっていた。 おかげでいい成績が取りやすく教師の覚え良かった。そのため中学校時代には教師から推薦され、生徒からの信任も受けられたおかげで生徒会長をしていた。
高校になっても第二次ベビーブーム世代の受験戦争を戦って来た経験から、勉学においてのアドバンテージは残っていたし、前世より基礎の学習を念入りに出来たおかげでいい成績を取れていた。
けれどゲーム設定上の長谷川カヨコは、普通科の進学校に入学出来ていたとはいえ学年最下位クラスの成績を歩んでいた。 実際現在の私は一を聞いて十を知る様な天才では無かった。自身が感じる能力からいっても、大学時代以降に大成するような存在になるには、大きな運が必要ではないかと思っている。
このゲームが世に出た時はまだバブル景気の最中だった事もあり、世の中がかなり明るかった。 けれど前世では10年以内にバブルが崩壊して就職氷河期と言われる時代に入ってしまった。
私はバブル崩壊前に社会人にはなっていたけれど、不景気の煽りで務めていた会社が倒産してしまい無職となった。 新卒大学生の採用枠ですら狭くなっている状態での再就職は、女で凡人である私には厳しいものがあり、半年間失業保険を受け取ったあと、昼はビルの清掃会社のバイトと、夜のキャバクラのホステスを掛け持ちするようになった。
けれど不景気の煽りで会社の接待費が抑えられていて客の入りが悪く、貰えるお金も多くなかった。さらに私は容姿が特別優れてはいなかっため、30歳を前にキャバクラをクビになり、スナックを転々と流れながら働いた。
その後、景気は回復したものの、40歳の頃に体が言うことをきかなくなり、場末のスナック一本に絞って働くようになった。
50歳を過ぎて遂に付近の店の最年長となり、他の店の人から相談を受けるようになったけてど、私はずっと雇われの状態だった。
60歳でオーナーから店を自分でやらないかと言われ店を持ったけど、店員や客のトラブル対応の他に、警察やケツ持ちの下っ端への対応や税の報告など、責任や面倒が増えただけで、私の手元に残るお金は殆ど増えなかった。
この恋愛シミュレーションゲームの世界でも、同じように不景気な時代に突入するかは分からない。 続編は出ていたけれど不景気っぽい描写は無かった。
私は出来れば今後は幸せな結婚日をして、可愛い子どもや孫に囲まれる生活がしたい。幸い男性客相手の仕事をしていたので、誠実そうな男性を見抜く目はそれなりあると思ってる。
今世の私は決して美人ではばいけれど愛嬌はある。自炊をしていたし、客に軽いおつまみを作って来たので料理スキルも高い。男性の心と胃袋をがっちり掴める可能性はある。
ただ、それ頼るのは危険だ。自分でも自活出来る道を進んで置くべきだ。もしDVをするような男だった時逃げられるようにもしたい。
私は社会の景気に左右される生活はもうこりごりだ。
だから後々まで使える資格を取得するか、公務員や公益法人の社員や銀行など、安定的な仕事で産休育休の制度がしっかりしている所に就職しておきたい。
また日本の景気が悪化したあとは、海外に飛べる人が潰しが聞いては成功していた。語学を学んでおくにこした事は無いだろう。
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