第39話 消滅(ジェーン視点)
(この話で書いている話を理解しなくても話の本流を理解する上では全く支障はありません、理解出来ない場合は無視して先の話に進んでください)
私は現在、世界で最も重要な場所で、最も重要な作業をしている。
まず私を含めた我々はこの世界のほぼ全てを理解し、ほぼ全てに自由に干渉出来る存在だった。
ただし我々も手出し出来ない存在がいた、それはこの世界の仕組みに干渉している事で、我々の干渉による消滅を逃れている存在だ。 けれどそんな種も、世界の仕組み自体が進化し、他の仕組みに変わっていく事で勝手に消滅していくので、こちらが干渉しなければ我々にとっては何も問題は発生したりはしなかった。
何故なら我々は世界のずっと先まで調査しているが、世界はそんな我々でも永遠に続くと思うほど進む事が可能で、そんな種程度では我々は脅やかさない事が無いと分かっていたからだ。
ある時我々の同朋が世界の始まりを発見するという快挙を達成した。 我々はそこを調査する事を決め、遡行によってその場所に到達した。
そこで発見したのは驚くものだった。 なんとこの世界には創造主様達がいたのだ。
世界を今の形に作った存在、それは我々をも作った存在だった。
まずこの世界の始まりは、この今私がいる世界では武田カイトという個体名になっている。
世界は非常に小さな種の1個体が自我に目覚めた事から始まる。 武田カイトもその一人だ。
その個体が創造主の1人という訳ではない。 武田カイトはかなり特別な個体だが、目覚める個体は存在としてはかなり矮小なものばかりだった。
この武田カイトという個体はかなり特殊ではあった。 世界の創造主様達と同じ世界の記憶をもっていたのである。 武田カイトの記憶を見る事で、この世界自体が武田カイトの前世にある遊戯であり、武田カイトはその遊戯をスタートしただけの存在だと分かった。
つまり創造主様達はこの世界を遊戯の場として作っただけだったのだ。 しかも創造主様の同朋達に遊ばせ、非常に小さな対価を得るという目的のためだけにだ。
武田カイトの記憶により、遊戯は武田カイトが創造主様達が居た世界から消滅した時点でこの世界に7つ作られている事が分かった。 ただし武田カイトはその遊戯を創造主様が最初に作られた時にはまだ存在していない個体だった。 しかも武田カイトは創造主様が居た世界から消滅した時点で、7つある遊戯の内の最初の1つしか遊んでおらず、また武田カイトの前世が個体の中でも非活動的であった事から、その記憶程度では世界の創造者様達の解析は殆ど詳細が分からなかった。
解析して判明したのは、世界はその遊戯に登場する武田カイトと同種の存在が年と呼んでいる単位で最高で19を数える間まで活動するためのものだった。 ただし遊戯は7つ作られているため、その作品の武田カイトの様な遊戯の主人公となる存在が武田カイトの後に産まれる事が分かった。
また武田カイトの記憶では存在が確認できない遊戯がある可能性があった。 こういう創造主様たちの作る遊戯には、外伝という少し変化させた遊戯が作られる可能性があるし、武田カイトの前世が消滅したあと創造主様達が創られた遊戯が存在する可能性があったからだ。
遊戯の舞台は我々でも簡単に干渉できないぐらい強固に守られている部分が見られた。 少し破壊してみると、並行世界いくつかが消滅するのだ。 元に戻すか補うと復活するのでそうたいした事ではないけれど、それを活用する事で我々は創造主様達の様な世界の創造をする方法を見つけられないかと考えた。 そのため舞台の破壊と再生という実験を行い並行世界の変化の様子を観察した。
創造者様達の世界がどれぐらい前から存在し、またどれぐらい続くのか不明だったけれど、武田カイトの記憶から創造主様自体は矮小な存在で、長くても我々が見つけた世界の起点が存在する宇宙の消滅より短い事は分かっていた。 だから何度も遡行を繰り返して破壊と再生の実験を試行錯誤する事が可能だと踏んでいた。
創造者様達が作られた遊戯の内、5つ目に我々の1個体が登場している事が分かってきた。それを行わないと並行世界が大量に消滅するからだ。
我々という種が創造主様達により創られた理由はこの1個個体を舞台に提供する為だった可能性が約65.4%だと導き出された。 創造主様達のお一人が、世界に情報統合思念体という存在を取り入れようとしていて、それに類する存在として世界に存在するのは我々だけだったからだ。
ただし武田カイトの記憶が不完全であるためか、我々の1個体がいつ登場すれば良いのかにズレがあった。 5番目の遊戯は他の6つの遊戯とは違うシステムが導入されていたようなのだ。
まず舞台に立つ時間次元には他の遊戯より大きな変化があった。 遊戯の始まりとなる存在は個体名を自由に決める事が出来た事や、そこに登場する人物の全てが何かしらの曰くがあり、個体名を偽ってたり、時間次元を移動する技術を持つものがいて、武田カイトの記憶だけでは発生地点の特定が出来ないほど不確定だった。
唯一分かって居る事は舞台となる場所で1月4日とされる日の24分割で4~7の間で、特定の人物と遭遇し、我々の1個体と遭遇した記憶を消すという行為をする事が必要という事が分かっていただけだった。
そしてこの舞台でのその記憶を消す個体として当たっていたのが私だった。 偽名だがジェーン・スミスという個体名で遊戯の舞台に登場し、起点となる個体がやってくるのを待った。
私は世界の支点となる武田カイトの誕生から1月4日とされる日の24分割とされる4~7の間にジェーン・スミスとなって舞台に降り立ち続けた。
その舞台は世界の起点である武田カイトが遊戯の舞台から居なくなったため並行世界の多くが消滅していたけれど、それでも軽微な修正により完了していて私が舞台に立つ時を繰り返すだけだった。
思ったよりも早く5つ目の遊戯の起点となる存在らしきものがやって来た。 だから私はその個体の私に関する記憶を消した。 しかしそれは誤りだった。その個体の私に関する記憶を消した瞬間、並行世界のほとんどが消えてしまったからだ。 また先を探索中の同朋との連絡も途絶した。 つまり世界の先は永遠では無くなってしまったという事を意味していた。
我々は急いでその修正に入った。 その個体の記憶を消した事が原因だったので、その復旧が最優先だった。
しかし並行世界の消滅が原因なのか、その個体の持っていた記憶のバックアップも消滅していた。 だから私が観測していたその個体が持つべき記憶を再現し、その個体に植えこむ事で並行世界の消滅を止めることは出来た。 ただし世界の先が永遠では無い状態に変化は無かった。
同朋が消滅したのではなく、同朋側から我々が消滅した側になった可能性があった。 観測できている世界だけが、元の世界から切り離されたという事だ。 けれどそれを証明する事は現在出来なかった。 消滅に巻き込まれて我々の個体数が減ってしまった事で種を回復させなければ先の探索する余裕は無かったからだ。
創造者様達の世界を見つけ出し、そこを経由して切り離される前の世界と接触する事が検討されたが、創造者様達の世界を観測出来て居ない現状では可能性はかなり低いと導かれた。 切り離される前の同朋がもし創造者様達の世界に到達していたとしても、我々の世界の消滅に巻き込まれる可能性を考えて接触しては来ないだろうとも導き出された。
私が再現したその個体が持つべき記憶は不完全であったようで、世界の先の消滅は少しづつ起こっているようだった。
また永遠に消滅を成長させている個体が発生した事で、その個体を起点としない並行世界は我々からは全てが消滅してしまったと同義の状態になったのだと分かった。
武田カイトの自我の目覚めが世界の起点永で遠の広がりがあった状態から、その個体が観測した世界を起点に世界が存在する箱庭のような世界に変わってしまっていたのだ。
またその個体は時間次元に縛られた存在だった。 そのため我々は時間次元を遡る事が実質不可能になった。 箱庭は窮屈で不安定な存在だった。
記憶を消滅させる前に、少しだけその個体の記憶を吸い出していたため、その個体が武田カイトという個体と同じ様に創造主様達と同じ世界の記憶を持っていた事が分かった。 しかも武田カイトと違い、創造主様達とほぼ同じ時間を生きていて、7つの遊戯の内、5つまで経験している事も分かった。
また武田カイトに比べて非常に活動的で、創造主様の世界を約2.63倍期間の間存在していたため吸い出せる記憶の量が非常に多かった。
しかしその個体には創造主様によって強固な隠蔽が施されていた。 最も原始的な物質的な接触が無ければ記憶を吸い出せないのだ。 また我々の干渉により隠蔽と保護が強化されてしまっていた。 保護にカウンターの様な機能があった事が原因だと解析された、けれどそれを知った時には我々が観測出来る世界は箱庭になっていて既に手遅れになっていた。
その個体に強固な隠蔽が施されていた理由は、その個体が武田カイトの舞台の中で遊戯の中立な観測者という立場が与えられた存在だったからだと分かった。
武田カイトが知ろうとしても、その個体の情報が分からない。 武田カイトがその個体を動かそうとしても動かない。 その個体は個体でありながら我々でも干渉できない舞台そのものだったのだ。 私は舞台の1部を大規模に消滅させてしまった。 そして不完全に復旧させてしまった。 だからそれを修正しなくては箱庭はどんどん縮まっていくことだろう。
現在我々は殆どの並行世界と、時間次元に縛られる事と、世界の先の1×10の45京分の1を失った状態だ。 そしてそれはそそれは徐々に拡大している。
さらに悪い事に世界の消滅がある1点の消滅により起こり得る事を、この箱庭内の世界の仕組みに干渉している種に察知されてしまった。
その種は我々に対し、もっと世界の仕組みに干渉できるようにして、現在の世界の仕組みの消滅によって種が滅びるのを回避させてくれなければ、この1点を崩壊させると恫喝してきた。 いつか消滅する運命から逃れられないのなら、世界そのものと共に消滅させてやるという心中のかまえを伝えて来たのだ。
その種は力自体は我々に遠く及ばない存在だった、この1点を崩壊させる事を防ぐ事は非常に容易だった。 ただし1個体が直接この舞台が存在する宇宙を保護しなければ1×10の56億分の1の確率で成功してしまう可能性がある事も分かった。 その防衛に力を削がれるため、私はこの宇宙の4つ分程度しか余剰の計算能力しか無い状態になっていた。
我々はいくつかの事をしなければならなくなった。
1つ目が世界の消滅を止める事で、2つ目が世界の消滅に我々が巻き込まれないようにする事だ。
私に与えられたのはこの舞台を守る事と、創造主様の記憶を持つ個体から全ての記憶を吸い出す事だった。 またその際に世界の消滅が起きる可能性を考え、私だけがこの作業をするようこの箱庭内の我々の総意として決定した。
記憶を消して直した存在である私が一番の適任だったのでそれに異は無かった。
記憶は早く吸い出したいが世界が崩壊しない様に慎重に行わなければならなかった。
私はその個体に記憶の対価として私を差し出すと言った。 そう言えば私の1部を受け取って貰う事が出来、常に直接接触している状態を作る事が出来ると導き出されていたからだ。
だから私はそのように交渉して私は私の1部をその個体に貼り付けた。 おかげで記憶の吸出しは順調でこの個体が消滅する前に作業を終える事が可能な状態になった。
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(作者視点※分かりにくいので少しだけ分かりやすく解説)
まず世界はゲーム世界が始まった1作目のゲームの主人公が産まれた時にこの世界が作られたという設定で書いています。
主人公の名前はプレイヤーによる入力式なので、武田カイトという名前で登場したのはこの物語のゲームの主人公だけで、別の名前のゲーム主人公が登場する世界は沢山存在しています。
ただし前世の記憶を持っているゲーム主人公は武田カイトだけで超越者達にとっても非常に稀有な存在でした。
超越者達は世界の起点ががある事に気が付いたため、時間遡行の凄いバージョンのようなものでそこに到達しました。 その起点に存在したのがゲーム主人公達で超越者達は様々な世界のゲーム主人公を起点とした世界を観察をしていますが、創造者の記憶を持った武田カイトの居る世界は特に注視ていた訳です。
武田の人生は主人公より短かった事などから、短時間の観測により武田の全ての記憶を吸い取る事が出来ました。
主人公はゲーム制作者により、立ち絵がある登場人物の中で特殊なプロテクト(個人情報が分からない、好感度が変化しない)的なものがかけられていました。 スミスが出会いの記憶を消すということはそのプロテクトに抵触し、復旧させないとゲームがクラッシュ(世界の消滅)が起きる行為でした。
スミスは可能な限り主人公の記憶を復旧させたのですが、あくまで再現しただけで完璧では無かったためエラーは残ってしまいました。 さらに主人公の記憶を再現した事で世界を保護した事から、世界の始まりの起点が主人公という存在に変わってしまいました。
(※補足すると、スミス達は、主人公の記憶を弄らなかった世界から弾かれただけです。弾かれなかった方のスミスの達は未だに世界を消滅させたり再生させる実験を繰り返しています。 前世の記憶を持ったゲームの主人公である武田カイトがいるけどこの物語の主人公である立花タカシが記憶を持って産まれなかった世界も存在するし、逆の世界も存在します。 そしてこの世界は両方が産まれているというかなり稀有な世界でした。 ある世界では武田カイトはうまく立ち回り色々なヒロインを攻略したりしています。 またゲーム主人公が武田カイトではない世界では好青年の様なゲーム主人公がいて、前世の記憶を持った物語の主人公である立花タカシと仲良くしている世界になっています。
物語上のスミス達は物語の主人公である立花タカシの記憶を操作した事で、そういった世界から弾かれてしまい、どこを探しても見つからない状態になっています。 それ故この物語上は無い事と同じになっています。 この物語の主人公がスミスと接触しないというのも、弾かれる前の平行世界のどこかに存在していますが、それはスミスがいないだけの似た話になるので書くつもりはありません。 スミスによって世界の消滅に至ってしまった平行世界もありますが、物語にならないので書きません。)
超越者達は主人公と接触する前は、時間遡行の凄いバージョンでずっと先まで永遠に行く事が出来ました。 その永遠の先を探索するぐらいしか彼らにはする事が無く暇人(?)だったとも言えます。 世界の起点を探すというのも暇だったから探してみただけでした。
しかし現在は世界が消滅し始めてしまった事で、主人公が存在しない世界は無くなりました。 また世界が消滅が消えて無いため行ける先に限界が出来てしまいました。
平行世界にいたスミスの同朋と、永遠の先を探索していたスミスの同朋もその消滅に巻き込まれて消息不明になっています(※参照)。
ゲームの舞台は次の作品の舞台にもなっているため、それを外部の干渉により壊す事でもクラッシします。
現在超越者達はこの舞台が世界を支えるには非常にデリケートなものだと考えています。今までは何かの干渉で世界の消滅が始まってもすぐに修正出来ると思っていましたが、主人公の様なアンタッチャブルがある事を知ってしまったからです。そしてそのアンタッチャブルは主人公の様にゲーム制作者により隠蔽されているかもしれないので察知する事が出来ない可能性がある事を知りました。
超越者達はゲームの舞台を実験的に消滅と修正を行ってきましたが、アンタッチャブルの発見により消滅が始まったらすぐに修正するように活動し始めました。 またゲーム舞台の消滅が防ぎようが無くなった時に、世界全体まで波及しないようする方法を探しています。
創造者達の世界の記憶を主人公から吸出す事でエラーを取り除く方法や、創造者達の様に世界を創造してその先に避難する事や、創造者達の世界に到達出来れば、その世界を経由し元の世界に戻れるのではとも考えています。 それがスミスが主人公に直接接触してきた理由です。
この超越者には天敵というものがありませんでしたが、このエラーを含有したまま存在し続ける主人公と、ゲームの舞台を破壊するような存在が天敵となっています。
超越者達は、主人公の記憶を完全に修正したあと、アンタッチャブルな存在にはこれ以上触れないまま、さらにこの舞台の変化による世界の消滅を修正していき、さらに宇宙を自然に消滅(宇宙の熱的死的な奴)させれば、永遠に存続できる(※前述の補足のように切り離された世界の状態のままですが)ようになると考えています。
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