第101話 博打
「私達も続くよっ!」
「「おーっ!」」
早乙女の活で俺とキャプテンが気合の声をあげた。
港の祭りの3on3大会では出場チーム数が一番少ない女子の部に出場したユイとオルカとスミスのチームが真っ先に優勝を決めた。
決勝でも他者を全く寄せ付けない強さで、8分で21点を取っての余裕の勝利を飾っていた。
男子の部は一番出場チーム数が多いため混合チームである俺達が先に決勝戦を迎えた。対するのは地元大学にバスケットサークルのチームだった。
1番長身でドレッドヘアーにしている男はユイをナンパしていたので、キャプテンには俺がマークすると言っている。1点も取らせてやるもんかという気概で当たるつもりで激しくマークしてやるつもりだ。
「みんな頑張れー!」
「お兄ちゃんファイト!」
親指を立ててユイとオルカの声援に答える。
相手チームの攻撃から始まりパスを受けたドレッドヘアーの男が強引に切り込んで来た。
俺は動かず後ろに素直に倒れる事で相手からファールを貰いドレッドヘアーの男のゴールを無効にした。
俺達の攻撃の番になり俺がキャプテンにパスを出すと、ゴール下に入る素振りをして俺に注目させてる間にキャプテンがフックシュートを打ち一点を先制した。
すぐに相手の選手がラインの外にボールを出して来たけどキャプテンのマークが厳しく、苦し紛れで相手の女選手にパスした所を女キャプテンがスティール。そのボールをキャプテンが拾い俺にすぐシュートラインの外に居た俺にパスが来てフリーだったのでシュートをしてツーポイントを取った。
相手の攻撃に移りドレッドヘアーの男がすぐにシュートを打ったど、俺がすぐに叩き落としてそのボールがコートの外まで飛んでいった。
「ナイスディフェンスっ!」
「お兄ちゃんその調子っ!」
ユイとオルカの声援が聞こえるのと同時に、ドレッドヘアーの男のチッという舌打ちの音が聞こえて来た。どうやらかなりイラついているようだった。
俺がドレッドヘアーの男をマークするように、ドレッドヘアーのお供も執拗に俺をマークして来るようになったけど、相手チームの女性より女キャプテンの方が優っていて穴になっている事に気がついていたのでシューターラインの外からゴール側の届く位置にパスを出し、駆け込んだ女キャプテンがレイアップシュートでゴールを決めた。
女性の方にフォローに回ってキャプテンや俺のマークが緩んだら、俺やキャプテンがゴールを決めた。
ドレッドヘアーの男以外は点数を入れたけど、ドレッドヘアーの男には1点も入れさせる事なく、最後は19点目の状態から相手チームからキャプテンがレイアップシュートでディフェンスファールワンスローを貰い、フリースローも決めた事で俺達が21対9で勝利した。
「イェーイ!」
「お疲れ〜」
「お兄ちゃんたち強〜い」
「オメデトイゴザイマス」
「終わったぜっ」
「アリガトー!」
俺とキャプテンはマークしていた相手とほぼ拮抗していたと思う。けれど女性同士のマッチングの穴を切っ掛けに俺達は勝つことが出来た。
「あのミノムシ頭の人が睨んでるよ」
「立花が0点に抑えたからなぁ」
「よく抑えたよねぇ〜」
「相手が俺を抜く事に執着してたからやりやすかったよ」
「1on1は慣れてるもんね・・・」
ドレッドヘアーの男は俺への対抗心からか、攻撃では個人プレーに走っていた。そして相手はユイほどの選手では無かった。ドレッドヘアーの男が俺に執着せずパスを回していたら、点差はこんなに付かなかったと思う。
「あとは男子バスケ部チームの試合だけど、同じバスケ部同士で準決勝だしなぁ」
「実力的には築地たちなんだが、海野たちは連携がうまいからなぁ、それに田宮が抑えられるのなら、あそこが穴になるからな」
「田宮はあの3人にとったらディフェンスが弱いしスタミナに不安もある、けれどディフェンスの強さでいったら築地と望月は2人だけで3人と拮抗するんじゃないか?」
哀川、海野、大石の3人で、築地と望月のガードを抜いて、さらに防御では1人は田宮を徹底マークしつつ、2人で築地と望月を抑えるのか、かなり難しそうだ。キャプテンが考えた男子最強メンバーの方が優勢だと思う。
「田宮を止めろ!」
「よしっ!」
「切り替えて攻撃行こう!」
「行くぞっ!」
意外な事に結構食い下がっていた。
3分のタイムアウトでは築地、望月、田宮の組が7対3と4点リードで実力通りだと思ったのだが、それから哀川、海野、大石の組が田宮へのマークを重視し、築地と望月に点を取られるのを気にせず、田宮という守備側の穴から外からのシュートを行い、偶然か連続でゴールが決まり6分のタイムアウトで15対15とイーブンに持ち込んでいたのだ。
「3人とも外からのシュートを練習してたしな」
「素早さなら築地よりあるし、田宮はディフェンスが弱い、田宮のツーポイントを防いで自分たちはツーポイントに賭けるか」
「3人の決定力じゃ博打だけど、確実に負けるぐらいならやってやるって感じだろうね」
「これで勝負はわからなくなったな」
「分ではまだ築地達が優勢だけど、流れは海野達か・・・」
哀川、海野、大石が8本打って6本もツーポイントを決めているから拮抗しているだけだ。普段3人の外からのシュートはこんなに決定力があるわけではない。
「築地と望月が6本入れる前に3本決まる可能性は大いにあるよな」
「1本も決められず6本入れられる可能性も多いにあるけどね」
「普段のあいつらならその可能性の方が有り得そうだけど、前の3分間を見ちゃうとな」
タイムアウトが終了し、試合が再開された。哀川、海野、大石の3人は同じ作戦の継続のようだった。しかし築地、望月、田宮の3人の作戦が変わっていた。マンツーマンでしつこくマークをして外からのシュートをさせないように立ち回ったのだ。そうなるとツーポイントの決定率が格段に下がっていき、内に入ってのシュートととリバウンドの勝負になる。
哀川、海野、大石の3人は田宮の守備の穴からのツーポイントの作戦をなんとか続けようとしたけど、パス回しで田宮を躱す事が出来ず、ツーポイントシュートが決まらなくなった。
守備が広がった事により空いた内側からシュートをするしか無くなり、内に入った際の強さの差で築地、望月、田宮のチームに軍配が上がった。
「お疲れ〜」
「いい勝負だったな」
「3人は外からのシュートをものにしだしたのか?」
「偶然だったよ」
「たまたま良く入ったよだけだな」
「出来過ぎ出来過ぎ」
「ヒヤッとしたな」
「田宮、決勝のスタミナ持つか?」
「もうフラフラっす」
守備で海野達3人に食らいついた激闘の疲れは田宮のスタミナを奪うことになってしまったようだ。
「でも随分と持つようになったじゃないか」
「自主的に走り込んでるっすから」
「次は守備も上手くなると良いな」
「はい・・・」
1つの課題をクリア仕出すと次が見えてくる。体格に恵まれなくとも、外からのシュート力の高さで1年からスタメン入りをした田宮には、皆が大きな期待を寄せてしまうようだ。
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