第74話 楽しめ!の結果(ユイ視点)
私達の試合が終わったので、お兄ちゃん達の試合をみんなで見に行った。
お兄ちゃん達の相手はインターハイ優勝校で何もかもが負けているらしく、みんな大差で負けると言っていた。
私達の試合が終わった後に試合を開始した筈だけど、会場が違うため着替えて駆けつけた時には試合が第2クォーターに入っていた。
「あれ? そんなに負けてないじゃん」
「司令塔が立花なの?」
「男子やるじゃん」
点数は20対22と競っていた。 お兄ちゃんが田宮君にパスをして、田宮君のスリーが綺麗に決まり23対22、どうやらシーソーゲームをしているみたいだ。
「戻るの早っ!」
「田宮君がシュート打った瞬間に戻り始めてたよ」
「攻撃の指揮は立花で守備の指揮はチエリの旦那なんだね」
「田宮君、シュートは良いんだけど守備では穴になってるなぁ」
「頑張れ田宮っ!」
こちらの攻撃の番になると、お兄ちゃんがまたボールを運んでいた。 今日のお兄ちゃんはポイントガードをしていた。
「ナイッシュー!」
「立花のあの高さでシュート打たれたら防げないね」
「うん、あれは私も無理」
「ディーフェス! ディーフェス!」
お兄ちゃんが6番の人のシュートをはたき落としてスティールに成功した。
「相手チームはあそこでミスマッチしてるね」
「あの6番ってインターハイの得点王じゃなかったっけ?」
「立花君は素早くて手も長いもんね、あの6番はシュートはうまいけど、突破力はそんなになさそう」
「お兄ちゃん相手に上からシュートなんて簡単に打たせて貰えないよ」
「ユイでもそうなんだ・・・」
お兄ちゃんは立ち上がって手を上げてるだけでかなりの高さがある。 あの身長差だとフェードアウェー気味にシュートしてもはたき落とされるだろう。 私はあの上を抜くためにフェイントしたりドリブルで突破したりフローターシュートで対抗している。 けれどあの6番は横や上を抜く方法力もおいちゃんの上を越すシュートも無い。
「相手の6番交代させられちゃったね」
「あれはしょうがないよ」
「なんかめっちゃ悔しそうにしてる」
「6番のかわりに入ったのは随分と小さい選手だね」
「立花の横か下を突破させたいんだろうね」
「うちは田宮が交代か」
「交代したのは守備に定評のある海野ね・・・」
「守備の穴埋めしたんだね」
「立花ってフックシュートもうまいじゃん」
「あの高さだから、ジャンプされたらファールでしか止められないね」
「うん無理」
「ユイが断言しちゃったよ」
お兄ちゃんのフックシュートは反則だ。 身長高くて背が高くてジャンプ力があるから飛ばれた瞬間にボールが入らないことを祈るしか無い。
「相手チームの監督めっちゃ怒ってるね」
「ウチらの男子を格下だと舐めてたんだろうな〜」
「立花だろうなぁ」
「何であの人水泳部なんですか?」
「それメッチャ思う」
「お兄ちゃん、中学の時は私より10cmぐらい身長が低かったんだよね」
「成長期遅かったんだ・・・」
「あの人水泳で国体で6位入賞! 日本で6番目にすごい選手って事だからね!?」
そう、お兄ちゃんはバスケ選手としてもスゴイけど水泳選手としてもスゴい。 けれど水泳はオルカちゃんのように1位にならないと殆ど注目されない。 だからなのかお兄ちゃんは自身がそこまで凄くないと思っている所がある。
「立花先輩のスリー綺麗・・・」
「ジェーン並だよアレ・・・」
「トテモキレイデス」
それでもインターハイ優勝校はさすがだ、6番以外がスタメンの状態になった事で決定力があがり、ミドルからの攻撃が中心の兄ちゃんたちはジリジリと離されるようになった。
「さすがインターハイ優勝校だね」
「うん、相手がやっぱり上手って感じ」
「でも良く食い下がっているよ」
「でも負け始めたのにメッチャ楽しそう」
「立花はいつも笑顔だしね」
「良いムードメーカーなんだよね」
「まだ焦るような時間じゃないって、メッチャ落ち着いてるじゃん」
「立花メッチャかっこよく見える」
「あのチームに入って試合してみたい・・・」
「ユイ、目が怖いよ・・・」
みんながお兄ちゃんのカッコ良さに気が付き始めてしまっている。 妙な威圧感もあって、張り付いたような笑顔が怖いと言ってた先輩達が、格好良いみたいな事を言っている。
「お兄ちゃんにはオルカちゃんがいるんだからねっ!」
「小姑になってるぞ」
「ユイのお兄ちゃんは取らないから大丈夫だよ〜」
そんな時、お兄ちゃんがフックシュートに行くと見せかけて、中に切り込みレイアップシュートを決めた。
「一瞬の隙をついて電光石火って感じだね」
「1歩前に行くだけでめっちゃゴール下近くまで行くね」
「広がってた守備を固めたね」
「でも立花って・・・」
「相手監督またメッチャ怒ってる」
「シューターをフリーにしちゃ駄目だよねぇ・・・」
そう、お兄ちゃんの真骨頂はスリーポイントだ、だけど上からのシュートを警戒すると素早く抜かれてゴール下まで一気に行かれる。
「立花先輩にマーク増やしても、フリーになった八重樫先輩か田宮君が決めるんですね・・・」
「あの状態の男子ならウチら勝てないよね」
「うん負ける」
高校総体後、男子バスケ部は3年生の引退試合をしたいと、高校総体全国制覇をした女子バスケ部に試合を申し込んで来た。
その結果として女子バスケ部が勝ち、学校内では女子バスケ部の方が強いというのが定説になってしまっていた。
「ウチらもユイとジェーンが来てから化けたチームだしね、男子バスケ部も立花をポイントガードにして一皮剥けたんだろうね」
「でも残念だったね」
「うん、相手の方がすごかった」
結局79対88でお兄ちゃん達は負けた。 けれど前評判を覆しての善戦は、見ている人に大きな印象を与えたと思う。
「良くやったよ!」
「すごかった!」
「みんな素敵ですっ!」
「見直したっ!」
「あんたらカッコよかったよっ!」
相手チームの監督がお兄ちゃんに近づき話をしていた。 勧誘でもされてるのかもしれない。
「また、「君は何で15番なんだい?」って聞かれてそう」
「「うちに来ないか?」の方じゃない?」
「あの人ただの助っ人なんだよねぇ」
「助けられ過ぎ」
「小森先生いつも、「立花は秘密兵器」って言ってたけど、本当にそうだったんだね・・・」
「毎回スタメンでフル出場だから隠れてねーじゃんって思ってたけどコッチの事言ってたんだねぇ」
「小森先生すごいっ」
「コニたん顔真っ赤だよ?」
そういえばお兄ちゃんも「どこが秘密兵器なんだろう」って言ってたな。 でもいきなり秘密じゃ無くなり過ぎだよ。
あと顧問の小西先生が顔を真っ赤にしているけれど、大人まで魅了しているの? 駄目だよ?
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