第36話 異能バトルについて聞いてみた
俺は期末試験のための追い込みのためにしていた復習を終え一息ついた。 段々と授業の難易度があがっているけれどまだなんとかついていけており、学年15位から35位の間をずっとうろちょろ出来ている。
「ユイカさ~ん、 シャンプーの替え置きある~?」
「買い物袋に入れっぱなしだったゴメーン!」
次に風呂に入ろうと思っているが、ユイは結構長風呂なのでまだまだ俺の番には遠い。
俺は暇つぶしにスマホのAIに聞いてみる様な感覚で、将来に起こるかもしれない異能バトルの事についてスミスの憑依体に話を振ってみた。
「魔法みたいに科学で説明出来ないものってあるのか?」
『はい、ありません』
「お前の様な憑依って奴も科学で説明できるのか?」
『はい、出来ます』
「お前の本体がゲームに出た時、異能バトルみたいなことやってたけどあれも科学で説明出来ると?」
『はい、全て科学で説明出来ます』
「俺も使う事は出来るのか?」
『はい、色々弄れば出来ます、けれど本体の上から禁止されて居ます』
「そっかぁ・・・」
『私に命じて頂ければ私が異能と同じ事を再現できます』
「じゃあ俺の指先を光らせてくれ」
『はい』
AIスマホ事を考えたためか、まるでそのやり取りの様にスミスは淡々と説明をする。 すっと目の前に持ってきた右手の人差し指の先端が光り輝いて居る。
「これって科学で説明出来るものなのか?」
『はい』
「俺に分かるように説明できるか?」
『はい、指先に人体に無害な波長の光子が飛び交う空間に通じる次元の壁を開けています』
「ここに次元の壁があるのか?」
『はい』
「壁というのに触れないんだが」
『はい、そこにあるのは、3次元の生命体では触れない4次元の壁です』
「4次元の壁?」
『はい、平面しか認識できない2次元の生き物は、平面の上にある3次元の物体に触れませんし理解出来ません、しかし平面に3次元の物体が触れたり貫通すれば、2
次元の生き物はそこに何かがある事を理解します』
言葉では理解出来そうにないけれど、イメージを脳内に投影してくれたので理解する事が出来た。 変な表現だけど、高次元の光が3次元の生き物である俺の指を貫通している状態が今俺の指が光っている状態なのだろう。
『はい、その解釈で概ね良いと思います』
スミスの憑依体は、俺の解釈は間違ってはいないけれど、俺の頭で理解出来ない部分で完璧ではない事がある時の回答をしてきたので、ここまでの理解が俺の限界らしい事が分かった。
「異能バトルが起こった時、俺やその周りを守って貰えるか?」
『はい、お任せください』
どうやら安心しても良いようだ。
ノックの音がしたので返事をすると風呂上りのホットパンツ姿のユイが立っていた。
「お兄ちゃん誰かいるの?」
「ん? 誰もいないぞ?」
「誰かと喋ってたみたいだったけど?」
「独り言だよ」
「何それ~」
「それより風呂入って良いのか?」
「うん大丈夫、今日は柚子だったよ」
「さっきから匂いしてるから分かるよ」
「お兄ちゃんが最後だから終わったら流しちゃって」
「はいよ」
スミスの憑依体と話す時は声に出さなくても良いけれど、俺は声に出さないと話した気にならないないため、こうやって一人になった時に声に出して質問する様にしていた。前世では独りの時間ばかりだったが、この家に越したあたりから独りきりにになる時間が殆ど無くなってしまった。
あの孤独な時にスミスの憑依体の様な存在がいてくれたらどんなに慰められただろうか。
『創造主様の世界に行ってみたいです』
そこが何処にあるのか超越的な生き物であるスミス達ですら分からないのに、俺に行き方なんてわかり様もない。 せめて俺の記憶を自由に見てその気持ちを慰めてくれと願うだけだ。
浴槽の湯が結構少ないので継ぎ足しをして風呂に入る。 俺の体は大きいので俺が先に入ったあとだと他の家族はお湯を多くつぎ足す事になる。 家族が順番に風呂に入る時は基本的には体の小ささ順である、お袋、義父、ユイ、俺という順番に最近固定されつつある。ユイが「お父さんの後の風呂に入るの嫌!」なんていう反抗期になれば崩れる事になるかもしれないが、今の所その様子は無い。
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「お風呂あがったら宿題手伝って~」
「分かった」
脱衣所の方から風呂場に向かいユイの声が聞えて来た。 きっと寝る直前になり宿題があった事を思い出したとかなのだろう。 宿題がいっぱい出たと言っていたのに、夕飯のあとテレビを見ながらソファーでゴロゴロしていたから心配していたが、その予感は間違って居なかったようだ。
風呂からあがりユイの部屋に行くと、机の上には2人分の麦茶が用意されていた。
「お願いお兄ちゃん!!」
「何の宿題が残ってるんだ?」
「理Ⅰと数Ⅰと英語と現国のプリントが出たの」
「それで何が終わって無いんだ?」
「殆ど埋まってない・・・」
既にもう9時だ。
「・・・俺が英語と数学やっとくから、理Ⅰと現国は教科書で調べて分かるとこだけ埋めてくれ」
「ありがとうっ!」
もうすぐで期末なのにこんなに宿題を重ねて出す先生も大概だが、ソファーでゴロゴロしているユイも危ういぞ。
「また赤点ギリギリじゃないだろうな」
「うっ・・・」
ユイとオルカは中間で全教科赤点ギリギリという点数をたたき出した。 実は2人って血が繋がってたりしないだろうな? お袋は義父さんに少し問いただした方が良かったりしないか?
義父に対する疑念を抱きつつ俺は黙々と英語を埋めていく。 これぐらいは去年やったところなので教科書を読まなくても分かる。 数学も少し解くのに時間はかかる程度で難しくない。
「テスト前でこれスラスラ解けないとヤバくないか?」
「お兄ちゃんは頭良いからスラスラ解けるんだよ~」
「最近習ったユイの方がスラスラじゃないとおかしいんだぞ?」
「うっ・・・」
俺がユイの筆跡を真似て書く余裕を見せながらプリントを埋めていく中、ユイは理Ⅰの教科書を捲りながら穴埋めをしている。
ゲームではユイは学年が違うためテスト結果についての描写が無い。 けれど言動と性格と成績の悪いお助けキャラである俺の妹であるから頭はそこまで良くないだろうと言われていた。 だからこの状態は予想外では無いのだが、俺が前世の知識があるためにアドバンテージがあるにしても、努力によって成績が維持できるように、ユイも成績を上げる事は出来るのではと思っている。
「日本にはバスケのプロリーグなんて無いからそれじゃ食べていけないぞ?」
「いざとなったらお兄ちゃんに養って貰うから大丈夫」
「家政婦さんとしてこき使うぞ?」
「料理はユイカさんから合格貰ってるから大丈夫」
「掃除や片付けは?」
「うっ・・・」
養って貰うなら、家政婦としても成長していないと困るぞ。 子供部屋おばさん付きじゃ良縁だって逃げてしまうだろう。
『オルカ様なら大丈夫って言いそうですが』
スミスの憑依体が何かを言っているが、それを無視して英語のプリントをユイに渡して数Ⅰのプリントの片付けに入った。
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