第2章 高校2年生編
第27話 宇宙人襲来
高校2年生の初登校の日になった。
水泳部やバスケ部の活動で学校に来たりはしていたけれど、新たな年度の始まりとしては今日からという事になる。
去年のGW前には既にオルカと一緒に登校するようになってはいたけれど、今日からはユイとも一緒に登校という事になる。
制服であるブレザーの胸には校章をデザインしたワッペンが付いているが、そのデザインの下に☆マークがついている。
1つ星が1年、2つ星が2年、3つ星が3年となっているのだ。
ちなみにこのワッペンは新たなワッペンを買うか、☆を刺繍し直するか、憧れの先輩のワッペンを貰うかといった手段の選択肢を取る。
卒業式の時には人気の卒業生のワッペンの争奪戦が行われる。
ちなみに恋人同士がワッペンを交換しあうといった事もひそかに行われているので、争奪戦を勝ち取った後輩が貰えるとは限らないらしい。
俺は2年の先輩から貰うアテは無く、2年生になる時には新たなワッペンを買い、古いワッペンをユイに渡した。 オルカは☆を追加で刺繍したか、誰か先輩のワッペンを貰ったのか、俺のワッペンより光沢が少ないものを付けていた。
新学期の時に光沢のあるワッペンは恋人がいない宣言をするという意味があるらしい。 だから憧れの先輩や同級生のワッペンを見て涙にくれる人や、女子生徒の胸元を凝視してしまい嫌われるといった事故が多く発生するらしい。
ゲームでは主人公が二年目の初日に校門でお助けキャラの妹であるユイとぶつかるというイベントがある。 その後俺が現れ主人公に妹を紹介し、主人公はそのイベントのあとユイをデートに誘う事が出来る様になる。
主人公である武田カイトは海の上かどこかの外国の港に居ると聞いている。 だからそのようなイベントは起きる筈が無いと油断していた。
「あっ! すまんっ!」
「イイエ」
ユイがぶつかる事を考えてしまい、自身もぶつかる可能性が有る事が頭から抜けてしまっていた。 俺は宇宙人ヒロインとの遭遇イベントをこなしていて、こうやって2年生の初登校の日にそのヒロインとぶつかるというイベントが発生する可能性が高かったのだ。
案の定相手の胸元を確認すると、ゲームと同じで星一である1年生としてやってきたようだ。
「お兄ちゃん! 女の子の胸元を見るのは良くないよっ!」
「あっ! すまんっ!」
「私やユイの胸元もチラチラ見ていたよねっ!」
「???」
どうやら俺も胸元凝視によって女生徒嫌われ要件を満たしてしまったようだ。 けれど凝視された本人である宇宙人の少女は気にしないようだった。
「キャー」
「痛っ!」
急に宇宙人の少女は抑揚の無い叫び声らしいものを上げて俺にビンタをして来た。 顔は変化する様子は無くとりあえずそうしたという反応で、ゲームでの彼女は、こういう時はこういう事をした方が良いと計算で導き出したと言っていた行動だった。
「イキナリタタイテスイマセン」
片言の様な言葉で話すのは、世情に疎い外国からの来訪者という設定を取っているからだ。 顔もこの世界で最も強国であり、日本にやってきてもおかしくない国という事から、平均的な白人系アメリカ人の顔という設定で、金髪碧眼の超美少女顔が選択されているとゲームの中で説明するシーンがあった。
「良いよ、胸を凝視した俺が悪いんだし」
「そうだよっ! お兄ちゃんが悪いんだよっ!」
「全面的にタカシが悪いねっ!」
「モウキニシテイマセン」
コクンと首を傾げるのだが、作り物の顔だとしても整い過ぎていてその仕草が可愛く見えてしまう。
彼女は5作品目に登場したキャラという事もあり、ゲームはドット絵では無く3DCGキャラで作られていた。
第1作目のゲームキャラであるユイやオルカが、漫画キャラの延長の様な平面的な感じのキャラだったので、リアル世界になった時に大きな変化を感じたけれど。 彼女は三次元で作られたキャラの修正という事もあって、目鼻立ちのデフォルメがリアルに寄せられたという違いがあるにしても、それでも一目で同じキャラだと分かる違和感のない見た目をしていた。
「新入生だね、初めましてと言えば良いのかな?」
「ハジメマシテ」
一度出会っているだろうというカマかけだが引っかからなかったようだ。
「俺の名前は立花タカシ」
「ジェーン・スミスデス」
ジェーン・スミスはジョン・スミスの女版で、山田花子と紹介を受けたようなものだ。
後に彼女の父兄という設定の人物が登場するのだが、それは「ジョン・スミス」と彼女が紹介する。
平均的なありふれた存在として作ったつもりなのだろうが、それが行き過ぎてありふれてない存在になっているのが彼女だ。 それに金髪碧眼はアメリカからの留学生として分かりやすい見た目にしたいという思いからなのだろうが、アメリカ人でも金髪碧眼の割合は数%しかいないらしく 。確かゲーム発売後に黒人のヒロインがいない事と共に何かの人権団体から責められていた。
その次の作品である6作目では黒色や褐色肌のキャラを複数出したそうだが、日本の学校にはそんな割合でいないのでおかしいと批判を受ける事になったらしい。
「こっちが妹のユイで、彼女が俺の近所に住んでいる水辺オルカだ」
「立花ユイです! お兄ちゃんの妹ですっ!」
「水辺オルカだよ、すごい綺麗だねっ!」
「ハジメマシテ・・・キレイデスカ? ヘイキンテキナヨウシダトオモイマスガ」
「平均的という事は何よりも整っているって事だからね」
「スタイルもすごい良さそう」
「メリハリが凄いよね」
「アリフレタテキセイナタイシボウリツダトオモイマスガ」
「普通は適正な状態に保つのが大変なんだよ・・・」
「私は体脂肪率低いんだよねぇ・・・特に・・・」
「私も・・・」
動きが阻害されない程度の良いサイズだと思うのだが、女の子である二人には色々思う事があるのだろう。
「サンニントモキガジョウタイノタイシボウリツシテイマス、ネツリョウノセッシュガスイショウサレシマス」
「結構食べる方だけど運動をしてるからねぇ・・・」
「私は受験で運動出来なかったから少し太ったよ」
「太った所が水の抵抗になるから記録が落ちるんだよねぇ」
水泳の消費カロリーは結構高い。 クロール60分泳ぐと500kcal程度はある。 特に全力で泳げばさらに多くなる。 慣れれば慣れるほど同じ距離を泳いだ時の消費カロリーは減るけれど、その分長い距離を泳ぐ練習をするので消費カロリーが減る事は無い。 だから俺やオルカは成人男性の2倍以上の食事を取っているけれど、太る事はまず起きない。 むしろ高たんぱくな食事を多めに取って質の良い筋肉を付けようとたり、早い疲労の回復を促す為に糖質の多い食事を取ったしたりしている。
1年生であるユイとスミスは入学式の時に既にどのクラスか聞いていたが、俺やオルカは今日初めてクラス分けの張り紙で知る事になるので外の掲示板近くで別れた。
「同じクラスだと良いなぁ」
「どうだろう」
ゲームでは俺とオルカが同じクラスになった事は無い。 何故か俺は主人公である武田やその幼馴染である綾瀬と同じ1組でい続けた。
実際は2年で1組から5組が文系で6組から8組が理系という感じにクラス分けされる。 科学部のヒロインの攻略を目指して理系キャラに育成していたり、綾瀬が科学部に所属するように誘導するなど理系好きに設定した場合、文系である新聞部に所属するお助けキャラである立花タカシと同じクラスで居続けるのは可笑しい。
「タカシは7組で私は8組だね・・・残念・・・」
「前よりは近くなったじゃない、合同授業では一緒の事もあるだろ」
「修学旅行を一緒に回りたかったよ・・・」
「行先は同じになるから自由行動の時は一緒に回れるよ」
「そうだね・・・」
ゲームでは修学旅行は京都と札幌の2つの行先の選択式だ。 1組から4組のグループと5組から8組に分かれて逆ルートで同じ京都に行く。 パソコンやスマホ版でリメイクした作品ではハワイやシドニーや台北だったり、シンガポールやソウルや上海になっていたが、それはリメイクした当時が1ドル80円台という高水準の円高と格安航空会社の就航で海外旅行の方が割安だったからだ。 3年年間に200円台から120円台まで円高傾向が進んだといっても航空運賃はまだ高く、庶民にとって海外旅行は憧れの存在だったりする。 最近は日本がドル買いに走っているという事もあって円安が進んでいることもあって高校生の修学旅行で海外に行くというのは一般的ではない。
「隣の教室だし途中まで一緒に行こう?」
「そうだね」
2学年は、4階から3階に移動したので少しだけ短くなった教室までの距離だけど、オルカとはクラスが隣になった事で長く一緒に居られる時間増えたという変化があったと少し思った。
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