ep:3-5

 これは夢かとユーリは思う。ギルの指が優しく髪に触りながら乾かしていくのをじっと大人しくしている。時たまうなじや首筋にギルの手が触れ、ビクッと身体が跳ねた。


「おい」


「……あ?」


「変な声出すなよ」


 出してはいないのにユーリは恥ずかしくなって口を手で押さえるとギルは笑う。そして少し間をあけるとぽつりと話し始めた。


「……隣国では、トワさんを守ってくれて、ありがとう」


「……え?あぁ……」


 唐突な言葉にユーリは混乱した。まさかギルからこんなことを言われるとは思わなかったからだ。


 また沈黙が流れるとギルの手が止まる。不思議に思い顔を上げると、ちょうど髪が乾いたらしい。


 ギルが目の前に立ってジッとこちらを見てくる。


「なんだよ……」


「いや?誘ってるのかと思って」


 その言葉にユーリは自分の姿を思い出して両腕を胸の前で交差させてガードした。その行動にギルはおかしそうな笑う。


「めちゃくちゃ反応が女の子じゃん。なにが男として生きていくだよ、笑える」


「うるせーな……」


 上手く反論できないユーリをギルは上から下まで眺める。白いタオルに巻かれる病的なまでの白い肌は今風呂上がりで少し赤く火照ほてっていた。無防備に、タオルを巻いて胸元と股間部分を隠しているに過ぎないその姿。


 乾かしたままのおろした髪は肩甲骨辺りまで伸び、いつもとは違う雰囲気にギルは無意識にごくりと喉を鳴らしていた。


「誘ってる?」


「は?そんなわけないだろ」 


 もう一度ふざけたことを抜かすギル。ユーリの返答に、確かにそうだよなと思い直したギルだったが次の瞬間には手が勝手に動いていた。


 腕を掴むと引き寄せる。急なことにバランスを崩したユーリはそのままギルの上に倒れ込む。気がつけば目の前にはニヤニヤ顔のギルがいた。


「野良猫野郎……」


「あれ?もしかしてその気?」


「……なっ、やめろ」


 ギルはタオルの上からユーリの胸をそっと撫でる。そして耳に顔を近づけるとふぅっと息を吹きかけた。


 ユーリの身体がビクッと反応し、信じられないという顔で見てくるのでさらにもてあそぶように耳を責めると次第にユーリの口から吐息が漏れだす。



 そして胸の突起部分は段々と形を主張してきてタオルでこすれた。ユーリの顔が熱くなる。


「あれ?もしかして気持ちよくなってきた?」


「……うるせぇ……もうやめろよ……」


 ユーリが顔を俯かせて呟く。ギルは流石にやりすぎたと離れた。ユーリはギルを睨む。そして何も言わずに逃げるように隣の部屋へ戻った。


 それを見てギルはまずかったなと反省する。




 隣の部屋へ戻りユーリはドアを閉めて座り込む。はぁはぁと息を乱して、ギルに触れられた感覚を思い出していた。


 ギルに触れられたそこは熱を持ち、甘く痺れる。


「くそっ」


 悪態をついてみるが、意味もなく。情けない自分の感情に吐き気がした。

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