変化するモノ
庭師と化学好き
ep:4-1
翌日、ギルのせいでまともに寝た気がしなかったユーリは眠い目を擦って起き上がる。
朝に弱いユーリは普通に寝てもただでさえ寝不足気味なのに、今日は特に酷かった。洗面所は……ギルの部屋かとまた大きなため息をついて朝の支度のために動き出した。
一応ノックをしてみる。しかし反応はない。それならばとドアを開けて入れば、ギルはいなかった。もうレックスのところに向かったのだろうかと思いながら、いないことに安堵して洗面所で顔を洗う。
鏡を見れば、酷い顔だった。元々病的な色白さだが寝不足のため目の下の
寝過ぎていたため朝食の時間は当に過ぎており、そのままレックスの執務室へ向かおうと廊下に出る。すると待ち構えていた城の執事に呼び出された。
「よくきたなユーリ」
陛下はレックスの父、この王国で一番偉い人が昨日レックスの臣下になったばかりの自分に何用かとユーリは脳内で思考を巡らす。
しかし、陛下はユーリを
「ありがとうございます」
ユーリはその恩恵を素直に
「レックスから聞いてはいたが、ユーリは化学にも精通しているらしいな」
「独学ですが、この城の誰よりも知識はあると自負しております」
それは自信。ユーリが幼い頃から培ってきた能力への。真っ直ぐに返すユーリに楽しそうに笑みを浮かべ陛下は口を開く。
「商人からの情報なんだが何やら気掛かりなことがあるらしくてね。仕入れをしているところの地域のある植物の発育がイマイチなのだとか。植物のことだ、我が宮廷庭師もその地方に調査に赴くだろうが、おまえも共に行ってくれ」
「それは、レックス殿下はご承知なのですか?」
「いや、俺の独断だ」
ユーリはその言葉を聞いて間を開けることなく「承知しました」と頭を下げる。従順なその姿に陛下は少し意地の悪い質問をした。
「おまえは、主人というよりその後ろ盾の利益を見据えているように思えるな」
陛下の言葉は最もだ。ユーリはレックスの臣下であり、主人の許しなくいくら陛下であろうと勝手な判断で返事をするべきではない。ギルなら間違いなくレックスだけを選ぶ。
そう思えるとユーリは少し笑みを浮かべ、表情を正して真っ直ぐに陛下を見つめた。
「私が
ユーリの凛とした声が響く。陛下は面白そうに目を細めた。
「それは、我が息子レックスがトワと対峙した時も変わらないのか」
「もちろんです」
その言葉に嘘偽りはない。ユーリはトワの暖かい笑顔に母の面影を見ているから。
「私は、もう……自分の心に嘘をつくことで後悔はしたくないのです」
「結構。引き止めて悪かったね」
陛下が執務に戻る。ユーリはお辞儀をして部屋をでた。
「なかなか、いい目をしている。いい者を手に入れたな」
陛下はレックスことを思い笑った。
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