ep:2-5
そんなことをしたらレックス達にお叱りを受けるだろうとギルは考えた。それほどに優しい人たちだ。自分だけはユーリの本性がわかるまで気は抜けない。
「あのさ、ユーリはどうして男のふりをしてるわけ?」
「おまえに関係あるのかよ」
ギルの言葉にユーリがムッとしたように答える。確かに関係ない話だが、成り行きとはいえ同じ部屋で寝ることになったのだから何かしら情報を得たいとギルは思った。
自分の質問に対する返事にギルはため息をつく。しかしめげずにもう一言続けた。
「あんたなんでそんなに俺の事嫌ってんの?無理やり手当てさせたから?女ってバレたのそんなに嫌だった?」
「……おまえ本当嫌な奴だな」
「お互いさま。で?男のふりする理由、いいから答えてよ」
ユーリはギルの圧にたじろぎながら、目を逸らす。しかし解放してくれそうにないのがわかると面倒そうにため息をついて口を開いた。
「昔から表向きは三男として育てられたんだよ。まあ母さんからも令嬢のマナーは教わってたけど、父親からは紳士としての立ち居振る舞いを強要された。それで、没落してからは女だとバレるといろいろ面倒だし、そのまま男のフリをし続けてるってわけ」
ユーリはギルと目を合わせずに淡々と答えた。意外な理由にギルは驚いた。
「なんだ、意外とまともな理由だな」
「おまえ本当失礼な奴だな」
ユーリがムスッとしながらギルを見る。その視線に今度はギルが目を逸らした。
「だから別に女性として扱ってくれなんて思ってないし、そのまま嫌いならそれでいい。お互い関わらないでいこうぜ?」
本心を告げたからかユーリは得意の作り笑いすらするのが面倒になり表情を変えず、椅子は戻ろうと立ち上がる。それをギルが腕を掴んで止めた。
「……なに?」
「ここで寝ろ」
「おまえと?嫌なんだけど」
「じゃあ俺が椅子にいくから、ここに寝ろ」
「何でおれがおまえの言うこと聞かなきゃならないんだよ」
2人の争いは止まらない。はぁっとため息をついてギルは無理やりユーリを引っ張りベッドに押し倒す。突然のことにユーリは目を丸くして驚いた。
「おいっ、なにんすんだよ。どけって!」
「おとなしく寝ないなら、無理やり寝かす」
「はぁ?そんなのどうやって……」
ユーリの言葉はそこで途切れる。あまりにも驚いたからだ。ギルはユーリを抱きしめて身動きをとれなくした。
そしてユーリの耳元で囁く。
「なんかあんたあったかいね」
「なっ、なにすんだ馬鹿!」
離れようとジタバタするユーリだが、ギルの力は強く逃れられない。ギルはユーリの体温と柔らかさになんとも言えない感覚を覚える。
そして抵抗しなくなったユーリを見て力を弱めると、傷の薬が効いたのかいつのまにか眠りについたユーリを確認して、ギルもそのまま横になって目を瞑った。
あれ?なんで俺……とギルは自分も何故ここで寝ようとしているのだろうと疑問に思いながらも眠気には勝てずそのまま眠りについたのだった。
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