私にだけ冷たい 『最後の優良物件』 から、〖婚約者のふり〗を頼まれただけなのに、離してくれないので【記憶喪失のふり】をしたら、激甘に変わった公爵令息から 溺愛されてます。
第37話 素直になった最後の優良物件②【SIDEレオナール】
第37話 素直になった最後の優良物件②【SIDEレオナール】
すると、苦笑いする俺に、ダニエル殿が笑って言った。
「ははっ、それなら記憶が戻る前に、レオナール様のものにしておけばいいでしょう。もう一度部屋に戻って、押し倒して来ればいいじゃないですか。そうすれば、記憶を取り戻したエメリーでも大人しくレオナール様と結婚するしかないと、腹をくくるはずだ」
「兄の言葉とは思えない台詞だな」
「いいや。最高に妹想いの兄の言葉だと存じますが。採掘の準備が整えば、世間にレッドダイヤの鉱山を公表しますからね」
「エメリー名義の山か……」
「あの山がエメリー名義だと誰にも知らせる気はありませんでしたが、今回のことで、いたしかたなく両親とレオナール様へ打ち明けてしまいましたから……」
「俺がエメリーと結婚すると、子爵夫妻に無理を言ったせいですね……。申し訳ない」
「どのみち鉱山の取り分の契約は、ラングラン公爵家との間ですでに決まっていますし、利権については心配しておりませんが、あの両親は少々危なっかしいですからね。誰にポロッと鉱山の話を喋るか分からない以上、エメリーはレオナール様の婚約者のままでいてくれる方が安全で、都合がいいのは間違いないですから」
「言っておくが、俺はエメリーを愛しているのであって、鉱山は関係ないからな」
「ふははっ、パーティー会場でエメリーの事件の知らせを聞いたレオナール様の取り乱した姿を見れば、疑っていませんよ。まさか、最後の優良物件の心を、うちのエメリーが何年も前から射止めているのは、全く気づきませんでしたけどね。優秀な美人令嬢が山ほど周囲にいたのに、レオナール様は全く趣味が悪いですな」
「いや、趣味は悪くない。エメリーは俺の天使だから」
「あれ? おかしいですな。エメリーは枯れ木と呼ばれていると聞いておりましたが、ははっ」
今度はダニエル殿が苦笑いした。
そんな彼から「俺の婚約者でいるのが安全だ」と言われたものの、エメリーが襲われた原因が、自分との婚約のような気がしている俺は、主犯が見つかるまで心は晴れない。
宝石の採掘に関する資金援助の申し出を、ダニエル殿は我が家以外には、ハネス伯爵家にしか持ちかけていないのだ。
実際、ハネス伯爵家は門前払いをされて、何も伝えていないのだから。
他にレッドダイヤの存在を明かしたのは、陛下とウスターシュのみ。
驚くことに、子爵夫妻でさえ知らなかったのだ。
俺が意識のないエメリーと「今すぐ結婚したい」と願い出たときに、ダニエル殿が両親へ初めて、「山から宝石が見つかった」と、告げていたのだから。
採掘後に国から利権を主張されないよう、一連の準備を水面下で進めていたとなれば、知る者はいないはずだ。
そうであるなら、エメリーが狙われたのは、俺をつけ狙っていた令嬢の可能性も否定できずにいる。
どちらにしても、早急にその主犯を見つけ出さなければ、俺とエメリーの平穏な日々が来ないなと、心の中で目ぼしい人物たちを想像する。
「そういえば、ダニエル殿はエメリーの好きな男の話を知っていますか?」
「好きな人? そんな人はエメリーにはいないはずだ。聞いたことはない」
「そうですか。それならいいんです」
「何かありましたか?」
「いいえ、あのパーティーの日、エメリーがそのようなことを言っていたんですよ」
「エメリーが?」
「俺を欺くために思いついたことを言い張っただけでしょう。あの日は二人で相当罵り合いましたから」
「ぶははっ、エメリーは、ラングラン公爵家の嫡男を、本気で振るつもりだったんですな。他のご令嬢が聞いたら激昂するでしょうね」
エメリー以外の令嬢からモテても意味がない俺は、その言葉を適当に聞き流しておいた。
とりあえず、エメリーに意中の男がいなかっただけ良かった。
記憶が戻った後に、嘘をついた俺に呆れ、その男に走ってはどうしようかと落ち込んでしまったが、どうやらその心配はなさそうだ。
◇◇◇
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