私にだけ冷たい 『最後の優良物件』 から、〖婚約者のふり〗を頼まれただけなのに、離してくれないので【記憶喪失のふり】をしたら、激甘に変わった公爵令息から 溺愛されてます。
第11話 新聞作戦③【SIDEレオナール】
第11話 新聞作戦③【SIDEレオナール】
「それにしても、レオナールはついているな。愛しい幼馴染がレッドダイヤの鉱山付きか……」
「ん? あれはダニエル殿の山だろう。いつも『自分の山だ』と言い続けていたんだから」
「残念ながら違った。てっきりダニエル殿の名義だと思っていたのだが、蓋を開ければ所有者はエメリーヌ嬢だった」
「それはおかしいだろう。当時未成年のエメリーでは、借金は作れないぞ」
「元の所有者から買い取ったのはダニエル殿だが、約一年前にエメリーヌ嬢へ変えられていたさ」
「ウスターシュは、どうして土地の所有者なんて調べたんだ?」
なんだか嫌な予感がして尋ねた。
「鉱山を国の資源にしたくてな」
「やはりか……。ウスターシュなら、そう言うと思った」
「あの山がトルイユ子爵領主の名前なら、増えた領地を国へ返還するように求められたのに、家督を継げない女性名義であれば、手も足も出ない」
「相変わらず、どこまでも腹黒いな……」
「あぁ~あ……。この私がダニエル殿にしてやられたよ」
「宝が埋まっていると見込んで山を買ったのに、国に取られる初歩的なミスを、ダニエル殿がするわけないか」
ウスターシュが「だよな」と、空笑いをしているが、俺には宝石のことなど関係ない。
エメリーヌがエメリーヌだから好きなんだ。
今は世間に伏せられたままのレッドダイヤの採掘。そんな話が明るみに出てからエメリーに群がる男など、どうせ碌なやつがいないだろう。
「こうなったら『結婚する』って、新聞で言えばいいだろう。それから彼女の元へ迎えに行けば、いくらレオナールがエメリーヌ嬢に余計なことを言っても結婚してくれるって」
「それは本当だろうな!」
「まあ、大丈夫だろう。他の令嬢と話すときみたいに、レオナールが普通にしていれば悩む問題でもないんだけど。どうしてエメリーヌ嬢にはできないんだろうな」
「エメリーが、可愛いのが悪い」
「ははっ、これでは当分無理だな。まあ失敗してもレオナールと結婚したい令嬢なんて山のようにいるし、当たって砕けろ」
その言葉に、すでに心が折れてしまい肩を落とす。
「そんな言い方をするなよ。万が一にも砕けたら……。立ち直れる気がしない」
「レオナールはどうして、エメリーヌ嬢のことになると駄目男になるんだろうな。それ以外は完璧なのに。農民への意識改革で、今年の農作物の収穫量は軒並み上昇しているのを陛下が高く評価していたぞ。レオナールが普通に接すれば、エメリーヌ嬢だって、すぐに惚れるだろう」
ウスターシュは、げらげらと笑っているが、うまくできたら煩わしい日々を何年も過ごしていない。
最後の優良物件と呼ばれているが、事実はただの売れ残りだ。
俺がエメリーヌに想いを伝えられないまま月日が過ぎ去ったせいで、最後までパートナーが定まらず、残っているだけにすぎない。
俺の心の中では、とっくにエメリーヌに売約済みなのだが。
心から愛する女性にはうまく向き合えないにもかかわらず、どうでもいい令嬢たちから、執拗なまでにつけ狙われ、もはや身の危険さえ感じる。
そのうち俺の子を妊娠したと、とんでもないことを言いふらす令嬢が現れそうだ。
先日はメイドに変装した伯爵家の令嬢が、服を半分脱いだ姿で、俺の寝台に潜り込んでいた。
その令嬢の未来を案じ、騒ぎにならないようこっそり追い返したら、一夜を共にしたと吹聴して歩いている。
その令嬢の露わになった肌を見ても、ぴくりとも反応しない俺と、一体何が起きたというのだ。
同情なんてせずに、あの令嬢を警察に突き出せばよかったと、うんざりする。
エメリーに誤解されたらどうするんだよ。こう見えても俺は一途だ。浮気はしない。
何があっても誘惑に負けないのは、予期せぬ形ではあるが、すでに実証済みだ。
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