第35話

35


 天文19年 1550年 10月 六角亀松丸


 「今年の収穫はどうだった?」


 俺は内政を担当している内藤但馬守に話しかける。今日は収穫も粗方進んできて情報が集まってきたので内政方の取りまとめ奉行である内藤但馬守以下主だったものと俺、側近の後藤壱岐守で内政官会議のようなものを開いていた。


 「はっ、まず農地改革が完了した地域である愛知川以南から野洲川以東の収穫量は約二倍を記録しています。これは六角直轄で行っていた種籾の厳選品を流用したおかげです。田畑の形を整えたり別の土地の田畑へ百姓を移動させたりした影響もあり多少収穫量が落ちてはいますがそれでも2倍ですのでこれからも収穫量が上がることが見込まれます。ちなみに蒲生郡辺りまでは開発が完了しており、残りは各河を超えた箇所と服部川や拓殖川がある伊賀などにございます。」


 後藤但馬守の部下の一人が答える。今回の農業改革はかなりの範囲を導入することができた。割と不必要、もしくは不適格な箇所を減らして農地として適切な箇所にある田畑をあてがった。


 「百姓達から不満や不安の声は上がっていないか?」


 「それは私から。勿論いきなり移されたことに対して戸惑いや怒りがあるものは居ました。しかし、先に1年分の米を渡し衣食住を保証したことによって大きな問題とはなっておりません。」


 祖父が言った通りに百姓達へのフォローをしっかりとしていた事もありスムーズに事が進んだようだ。


 「検地はそのうち何割が終わっている?」


 「農法改革を行なった場所の土地の広さは測り終わってますので、京枡に統一して測った収穫量が出揃い次第土地の検地が終わりこれからの税を決める段階まで進めるでしょう。」


 「分かった。検地が終わった土地の百姓から税を伝えていくのだ。そしてそれをしっかりと台帳に記録していくのだぞ。」


 「はっ!」


 まずは農作効率の良い土地に人を当てがって百姓達の生活を安定させる。そして、そこから新たな農地を順に開拓させ川の導線を引いていく。百姓達からすれば自分の土地を減らされ移動させられることに不満だろうがその間は六角が支援する。管理ができそうな百姓には更に土地を与える。それに次男以降が余っている家族にはどんどんと土地を与えていけるし、開墾も進む。廃棄した農地は野盗などが利用する分には何ら問題がなく寧ろ潰しやすい拠点となるので良いのだが野生の鹿などが増殖する原因となっても行けないので定期的に警邏させる予定ではある。

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