第25話 帝からの言葉が呼ぶ波紋
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天文18年 1548年12月下旬 六角義治
幸い祖父が予定を空けられるようなのでそのまま向かうと伝えさせて部屋まで向かう。
「失礼致しまする。京へと向かった後藤壱岐守より重要な報告があったためこちらに向かわせて頂きました。」
「うむ。入るが良い。」
「はっ」
「さて、尋常ならざる事があるようだがどうかしたのか?ある程度はこちらでも同行したもの達から報告を受けてはおるが。」
「はっ、最後京を発つ前に近衛家当主近衛稙家殿から私が元服した際には帝もお会いしたいとの事を伝えられたそうです。」
そう、帝と会うためには基本的に勅許によって六位以上のものが昇殿を許されるようになるか、六位以上の一部のもの、三位以上になるしかない。そういう意味では俺の六位までの昇格は決まっているようなものである。だから報告しにきた。
「今回の私の行動がかなり効いたみたいにございまする。これからも私の名前で献上品は運ばせて頂きますが、よろしいですか?」
「ああ、勿論だ。今回のことは多分ワシらが行ったところで打算ありきだと思われてしまうじゃろうて。」
「はい、幕府の方への献上品も見劣りはしないように物品を回しまするので遠慮なくお命じ下さいませ。」
「うむ、頼りにしておるぞ。」
「それと今回の遠征により内政官達は思った以上に体力や能力がついてきておりいつ派遣しても大丈夫な状態にございまする。来年の収穫後まで更に人員を増やし例の件を進めたいと考えております。」
「あい、わかった。」
「それともし可能であればなのですが、高島七頭へ楔を打ち込みたくございまする。是非朽木家の倅を迎えられませぬか?名目はお任せいたしまする。猿夜叉と共に六角への畏怖と臣従を植え付けたいと思いまする。」
「そういえば、朽木の倅はお前達と同じくらいの歳だったな。これに関しては義賢と重臣達と共に思案して決定する。それまで待っておけ。」
「はっ!」
「近江統一を狙っておるのか?」
「今はまだなんとも…。しかし、三好が近江へ進出してくるならば高島七頭の立地は死守する必要がある場所です。のらりくらりとされるくらいならばいっそのこと…と思ってしまいまする。」
「まあ、其方が当主になるときには状況は変わっておろう。ワシもまだまだお前達のために頑張るぞ。」
祖父さんの大きな手に頭を撫でられた。
「はい、私も微力ながら六角のために働きまする。幼児の私だからこそできる事がたくさんあるはずです。」
「中身は幼児とは思えぬがのう?はっはっはっ!」
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