第23話 朝廷の反応
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天文18年 1548年12月上旬 近衛稙家
稙家は六角の兵達が周りを整備し始めるのを横目に目録を手に持ち朝廷へと向かっていた。今の朝廷は荒廃著しく、内裏が朝廷の本体となってしまっている有様だった。今回の六角の奉仕で少しでも現状が良くなること、主上の心が楽になることを願っていた。先触れを出していたので問題なくするすると主上に目通りを果たす。
「大層な事があったと聞いているが何があったのだ?」
「はっ!以前お話しさせて頂いた六角家からの使者殿についてなのですが朝廷へと少しでも奉仕したいとの事で貢物を持って参りました。その目録がこちらになりまする。」
直接手渡しするのではなく間に人を挟んで帝に手渡される。
「なんと…米5000石に椎茸、清酒、塩、布や絹など様々な物がある…。」
「はっ!米、椎茸、清酒に関しては六角殿の自領で取れたものらしいです。また、これを献上してきたのは当主である定頼殿や義賢殿ではなく、齢5歳の跡取り六角亀松丸殿からにございまする。これは使者殿や周りのもの達からも確かめておりまする。」
帝はその言葉に大層驚いた。
「それは、本当は大人がやっていて名前だけその亀松丸とやらに変えているのではないのか?」
「いえ、下記にもある通り熊野牛王府による嘘偽りのないものにございまする。」
「そうか、そうか…」
帝は目元を隠し震えた。その様子が収まるまでその場にいたものは誰も声をかけずただじっと落ち着くのを待っていた。
目的が官位などであれば近衛の口から伝えられはずだし亀松丸の名前で送られることはないので帝は無償の奉仕に対してとても心を震わせられたのだ。
「朕にできることはないかのう…稙家よ。」
「はっ!亀松丸殿の使者からお気遣い無用とのことにございまする。ただ、少しでも主上の無柳を慰めることに繋がればとおっしゃっておりました。」
「それでもだ。何か案はないか?」
「もし、もし何か贈りたいということであれば一つ願いがあるとも仰っていました。そうしなければ主上が悩んでしまう時のみ伝えるようにとの事です。」
帝はこちらの心に寄り添い砕いてくれる亀松丸の言葉や行動に感動していた。
「なんじゃ?」
「はっ!もしお困りごとがあれば近衛を通じて六角に連絡が欲しいとの事です。必ずやお力になってみせるとのこと。」
「なんと!そのような事なのか!?」
周りの聞いていた公家たちもとても驚いていた。頼りにしたいと頼むのはこちらの立場のはず、それを踏まえて気にしないようにと要望にして伝えてきたのだ。
「わかった。必ずや伝えようと使者に伝えるのだ。それと、主水佑を与えるのだ。これならば今回の米を持ってきたことにもつながる上に最低位階でありながら歴とした官位となる。誰の職掌も邪魔せぬし良いだろう?」
「はっ!御心のままに。」
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