第22話 近衛家との接触

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 近衛家へと着くお邸宅の奥へと通される。豊持は一人で進んでいく。奥の部屋に入ると年嵩の男が座っているので頭を下げて下座に座る。今回は近衛家への貢物は朝廷へのものとは別に用意したので、そちらを渡した後、当主近衛稙家殿に朝廷への貢物としての目録を渡す。


 「なんと!こんなにも献上して頂けるのか!ん?六角亀松丸殿?義賢殿や定頼殿では無いのか?」


 「はっ!我が主人、六角亀松丸様が全てご用意されたものになりまする。」


 「なんと!亀松丸殿は齢幾つになったかのう?」


 「はっ!まだ5つにございまする!しかし、傀儡などということはなく我ら心の底から心酔し忠義を尽くしておりまする。」


 「そうか…。神童というやつかのぅ。あいわかった。これらは本日のうちに帝へお伝えする予定だ。そう時は掛からぬであろうから待っていてくれ。連絡先は…」


 「はっ、伊賀屋に触れを出していただければ直ぐに向かいまする。それと、今回連れてきた兵達の中には大工仕事を専門にする黒鍬衆というもの達がおりまする。良ければ近衛様がお望みになる土地や家屋を整えまするがいかがでしょうか?」


 「本当か?それならばこの近衛邸と周辺の家屋を頼みたい。しかし、口惜しいが我々には支払える対価が無いのだ…!」


 唇の端を噛みながら目線を下にして悔しそうな表情をしている稙家がいた。


 「お気に召されますな。これも全て亀松丸様が費用を負担するそうにございまする。これからもよしなにという事と少しでも京の復興の手助けができればと言うことにございまする。もし許可を頂けるのであれば周辺に建てる予定の長屋を我々の滞在先として使わせては頂けませぬか?」


 おお、と感動してこちらを稙家殿がみる。無償の対価ほど怖いものはないがこちらの要望があれば相手も安心するとは亀松丸様の言葉だ。これを先に近衛に提示しておくことで朝廷に対する恩の真実味が固くなるとの事だが。この様子だと本当のようだ。


 「勿論じゃ!そのようなもので良ければいくらでも使ってくれたもう!」


 稙家としては敷地周辺含め復興するならば安いものという考えの上に六角の兵が常駐するとなれば治安にも安心できる一石二鳥だと考えていた。


 「更に不躾な願いとなってしまうかも知れませぬが、これから京に来るたびにこちらの施設を使わせては頂けませぬか?勿論、その時その時にお世話になるお礼として何かお持ちいたしまする。」


 「うむ、こちらばかりが得をするようで申し訳ないがよろしく頼むぞ。」


 「はっ!」

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