第21話 朝廷への貢物

21


 「朝廷からしたら必要なものだけが送られてくるのだ。周りの大名達は献上したとしても銭が贈られる。なぜか?官位を買うという前提があるからだ。そんな時、銭ではなくもので送られてきて見返りを求められなければどう思う?」


 「…尊王の心が厚く見えまする。」


 「そうだな?そういうことだ。」


 このお方はどこまで見えているのだろうか…!


 「何か褒美を、と言われたならばお断りすればよろしいのですな?」


 「ああ、基本的にはそうしてくれ。しかし、向こうが3度言い出したら受け取るのだ。もし、内容が指定されてなければ何か困った時は最初に頼って頂きたいと伝えてくれ。」


 「は、は!?分かりましたが…。本当にそれだけでよろしいので?」


 亀松丸様の顔を見ると問題のなさそうな顔をしている。


 「ああ、ここで恩を打っておくことが未来の六角家の為になるのだ。信じろ、豊持。」


 そう言って肩を叩かれる。そう言われれば家臣としてはそれを信じるのみだ。


 「はは!ちなみに米はいくらほど持っていく予定にございましょうか?」


 「そうだなぁ、5千石ほどで如何だろう。俺が使える範囲で見栄えも悪くない量だろう。」


 「分かりました。もう期間も1月ほどしか無いですし急いで用意させまする。」


 「ああ、頼んだぞ。それと京に行ったら食に困っている職人や農民を引き連れてこい。特に刀匠の来派、長谷部派、三条派、粟田口派と山城伝のもの達がそれぞれ揃えられれば最高だ。彼らの中で腕のいいもの達を切磋琢磨、研究させるのだ。それとゴロツキどもは使えそうなら足軽として矯正してやるから判断して連れてこい。」


 「承知いたしました!」


〜〜〜〜


 天文18年 1548年12月上旬 後藤豊持


 義賢様や定頼様からの許可を頂き入念な用意をして朝廷へと向かっていた。亀松丸様の軍を運用する練習も兼ねているならば護衛も押し付けてしまえとのことで六角家として幕府への献上品もついでに持たされた。そちらの方は父が行ってくれるそうなので俺は朝廷の方だ。

 直接会うわけにもいかないため幕府とも縁が深い近衛家を頼ることになった。事前に慶寿院様から近衛家稙家様に連絡をして頂いている。もう少しで近衛家に着くところだし、先触れを出しておく。


 「近衛家から参りました下男にございまする。六角家の方々にございまするな?近衛邸までご案内させて頂きまする。この大人数ですと近衛邸には収まりきりませんがいかが致しましょうか?」


 「そうだな、近隣の邪魔にならないところに固まらせておこうかと。それといくつか用事を済ませようと思っていたのでそこまでお気になさらずとも大丈夫でござる。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る