第19話  後藤家の忠誠

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 「但馬守よ。先日蒲生から聞いたのだが、やはり農法を公開していないことに対して不満が溜まっているようだな。お主達はどうだ?」


 どうせ対応を変えるつもりはないが一応聞いてみる。蒲生はまだまだこちらに気を寄せてくれているみたいだが、後藤はどうかな?


 「そうですな…。私としては若様がやりたい事が分かりまする。六角家は定頼様、義賢様の元に忠誠を誓い盛り立てている現状ですが、それでは家臣達と意見の相違が起きた時や当主に問題があった時などに対応に非常に困りまする。それを解消なさりたいのでしょうか?」


 流石に六角の内政を取り仕切っていることはある。銭や人の流れでなんとなくだがやりたいことを把握されているな。


 「まぁ、勿論それもある。しかし、今の話している感じだとそこまで否定的ではないのだな?」


 「私としましては若様は定頼様に似てとても銭というものを理解しておられる。勿論父君である義賢様もでございまするが、それ以上に若様は分かっている。米を増やし、米の価値を下げ税収を米から銭へと変える。そして、我々を与えた土地の収入や価値に応じて銭で六を与える。これならば皆も不満を言えませぬ。いかがでしょうか?」


 後藤但馬守が落ち着いた顔でこちらをみる。


 「はぁ、降参だ。よく分かっているな。それと、これは父や祖父、壱岐守にも言ってなかった事だが兵を銭雇に全て変えたいと考えている。今の状態では兵を失うほど国の力が落ちてしまう。そう、兵農分離が必要だと私は考えているのだ。但馬守よ、お主ならこの利点分かるのではないか?」


 俺もじっと目を見つめ返す。壱岐守は後ろで固唾を飲んで見守っているようだ。


 「そうにございまするな。分かりました。我々後藤家は亀松丸様に賭けましょう。若様ならば私をより評価してくれましょう。お前もしっかりと亀松丸様に付いて学ぶのだ。これからの六角は今までとは大きく変わるぞ。」


 「はっ!私は亀松丸様の側近にございまする。主人の意を汲み取れるような立派な家臣となります!」


 「亀松丸、お主らの忠義に感謝する。絶対に後悔はさせぬ!それと、そう言ってやるな但馬守。壱岐守はよくやってくれているぞ?自分で言うのもなんだが、物怪付きとして処されたり離れられたりしてもしょうがない中必死に食らいつき、俺のために働いてくれている。」


 「あ、ありがたき幸せにございまする!」


 「さて、では少し計画を話そうではないか。」


 俺は父や祖父に語った来年の評定での家臣達への提案を伝え始めた。

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