第18話 現場の確認

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  「…。不満を持っている者達は多いのか?」


 蒲生の顔を伺うように覗き込む。猿夜叉は不思議そうな顔をしている。


 「いえ、不満というより悩んでいる者たちが多いようでございまする。直轄地周辺の中小国人衆達は自分で管理しきれず六角に任せることで常より少ない労力で安定した収入を得ることができておりまするが、我等のような大身の国人衆やその周辺にいる中小国人衆は足踏みしております。」


 「そうか…。待たせているのは私のわがままでもあるからな。不満があれば俺の名前を出して宥めておいてくれ。少なくとも1年もかからないはずだ。」


 俺は腕を組み、ふぅと息を吐きながら頼み込む。


 「そ、そのようなことできませぬ!しかし、あと一年耐えればよろしいということであれば必ずや他のもの達を抑えて見せましょうぞ。」


 蒲生は俺の言葉を聞いて奮起してくれるようだ。


 「私が浅井に戻る頃には浅井でも同じように行えるようになっているのでしょうか…?是非とも我が領地も亀松丸様がやっておられるように豊かにしたいです!」


 「そうだなぁ、今広めている農法は見た目は真似できても種籾の厳選や肥料の作り方などは六角直轄地、もしくは管理運営を任せてもらえた箇所にしか行っておらんからな。難しいのではなかろうか。多分お主の親父殿はまだ六角と敵対しようとしておるしな…。」


 「…そう、なのですか。」


 「そんなに気にすることはないさ。その分他の方法で銭を稼ぎ我らから安く多くの米を買えばいいのだ。猿夜叉が当主になる頃には俺も六角家当主としてこの腕を振るっていることだろう。その時には猿夜叉が俺のことを支えてくれよな?」


 「はい!頑張りまする!」


 蒲生はその光景をニコニコとしながら見ていた。敵対している北近江の次世代に親六角が生まれることは素直に良いことだし、面倒を見ている2人が仲良く過ごせているのが老婆心ながらとても嬉しかったのだ。


 「では、そろそろ続きを話し始めましょうか。」


 こうやって亀松丸と猿夜叉や重臣達との交流は深まっていくのであった。


〜〜〜


 亀松丸は手習いを終えると側に控えていた壱岐守を後ろに従えながら壱岐守の父である但馬守の元へと向かっていた。


 「失礼するぞ。調子はどうだ但馬守。」


 「はっ、派遣してもらった若者達は皆優秀でこのまま観音寺城で内政の手助けをして欲しいくらいですぞ!」


 但馬守には集めた内政官候補達の調練を頼んでいた。実際に任せてもいい仕事を任せながら実地方式で研鑽させているのだ。


 「まあ、俺が当主になった時はここから排出された者達が内政を支える予定だから許してくれ。それにこれから来る人員のうち何人かは其方の直下の部下にしてもよい。」

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