第16話 祖父と父との会合4

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 「うむ…しかし、家臣達にそれがバレたときは内紛どころではすまぬ騒ぎが起きるぞ?それは許容できぬし、既に味方についているもの達からも見限られる可能性がある。」


 ここら辺が引き際だな。六角家が領地を一括管理すること自体には魅力を感じてもらえたはずだ。


 「はい、ですからまずは六角家に土地を渡したものの領土を豊かにし厚遇することから始めましょう。隗より始めよです。」


 「そうだな、2年待ってやる。お前が語った夢物語が本当になるように奮起しろ。4歳のお主がそれを発言するには大分荷が重いだろうから今回は俺か父が矢面に立ってやろう。そして時がくればこの事を公表し、然るのちに家督相続とするか。」


 「何を言っておりまするか、父上にはまだまだ働いてもらわねばならないのですぞ。楽隠居などさせませぬ!!!!」


 これは俺の本心だ。俺はまだまだ好き勝手やれる身分で六角家を纏めたい。自由な身の方が何かとやりやすいだろう。


 「はっはっはっ、お前の負けじゃな。さてと、ワシも手を回すとするかのう…。」


〜〜〜〜〜


 天文18年1549年 6月 六角義治


 「そうか、やはり美濃と尾張は和睦したか。」


 半蔵の報告を聞きながら茶を啜る。夏の夜はまだまだ蒸し暑さが残る。夜風に当たりながら半蔵と向かい合っている。


 「はい、やはり決めては尾張のうつけを一目見ようと斎藤道三が会見をしたことのようにございまする。亀松丸様が仰ったとおり織田家も鉄砲を揃えようとしており付き添いの兵のうち100ほどが鉄砲足軽にございました。」


 史実では国友に500の鉄砲を注文したらしい信長も六角家が全て買い上げている状況では100を買い揃えるのがやっとのようだな。しかし、それでも100を揃えるのだから熱田の凄まじまさここに極まれりだ。


 「伊勢の方はどうなっている?」


 「はっ、長野が先の戦いの不利を拭えずに押され続けておりまする。北には一向一揆が控えており西には我ら六角が控えております。また、北畠と六角は縁続きなこともあり六角にも気が取られ気もそぞろとなっているようにございます。」


 「だろうな。しかし、まだ長野に倒れられる訳にはいかぬ…。こちらでもうまく対処するつもりだが、伊賀から長野に接触することは可能か?」


 「既に商人として手のものを忍ばせておりますれば、いつでも可能にございまする。」


 「分かった。父上や祖父に相談してからにはなるがもしかしたら連絡を頼む事になるかも知れぬ。それまでの間は六角の豊かさや国人衆達に対しての態度などをさりげなく伝えてくれ」


 「承知いたしました。」


 

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