第15話 祖父と父との会合3

15


 「いいえ、関税を撤廃する事によって商人からしたら六角の領内はどのように見えまするか?通行税が取られずに座も気にせずに自由に商いができるのです。京や若狭、越前や美濃尾張から商人が集まりまするぞ!そして、その商人達はそれぞれの特産物を売り、六角の米を買っていくのです。関税がなくなる事で取れる取れる税と関税がある事で取れる税、どちらの方が多いかは考えるまでも無いでしょう?」


 祖父がハッと気付いたようにこちらを見る。


 「だから余った米を銭で買ったのか!民に銭を与えて物を買えるように!」


 「はい、だから今年の税が多いのですよ。米も銭も。来年以降も増えまする。とは言っても今回ほどの増加は見込めないでしょうが。」


 「ううむ。なるほどのう…。そして、我々は家臣達からの税も銭で全て納めてもらう訳じゃな?」


 「そうにございまする。将来的には家臣達へのご恩は全て銭払いにしたいと思いまする。家臣達が銭で雇われる形になれば好きなところに赴任させられまするし、我々が六角家としてすべての土地を開発できます。他の家臣達と牽制し合いながら利権を巡って開発するよりよっぽど早く効率よく出来まする。」


 「しかし、それは我らでは難しいのでは無いか?六角家は重臣が強い発言力と兵力を持っておる。果たしてそれを手放すかどうか…。」


 「ここで交換条件を出すのです。家臣達の土地を豊かにしたければ六角家に土地の管理運営を任せるのだと、その代わりその者の能力と家の貢献度に応じて銭を支給する、最低限飢えずひもじい思いもせずに暮らせるような銭、そうですね10〜15貫を武士に対して与えれば良いかと。勿論、拒否しても何もお咎めはなしです。しかし、領地が小さく受け入れた者たちはどんどんと豊かになり、人は豊かな方に流れていく。領地から人が減ったら彼らはどうなるのでしょうか?例え、六角の重臣といえども兵を上げるための民すら居ないのならば…。そして、その頃には多くの中小国人衆達は六角に土地を差し出しているでしょう。」


 祖父と父が目を見張ってじっとこちらを見つめている。


 「お主は…なんと恐ろしい事を考えているのじゃ…。しかし、合理的で内容も悪く無い。いや、むしろとても良い。我ら六角家が土地を管理運営すると言う点が良いな、名は家臣にくれてやり、実は我らが取ると言うことか。」


 「それに、1000貫を重臣たちにそれぞれ与えたところで約100万石の六角家支配地域の上前を得ることができるならばこれっぽっちも痛くは無い!」


 祖父と父が顔をニヤつかせながらこちらをみている。


 「しかし、そのようにうまくいくのか?」


 「伊賀を使いまする。まずは六角領内の従わない家臣達の領土で六角家の庇護下に入った良さと自分達の立場の悪さを流布しまする。勿論、バレぬように商人や旅人などに紛し幾重にも隠してですが。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る