第12話 今年の成果!2



 天文17年1548年 10月 六角亀松丸


 俺は今回の収穫の成果を持って父と祖父と傅役、それと壱岐守や他の重臣達の前で報告をしていた。


 「今年の収穫は六角直轄地のみでも去年の約半分以上収穫量が増えております。」


 この一言だけで場が騒めく。簡単に言うと年収が1.5倍になったようなものだしな。父と祖父は動じる事なく家臣達が落ち着くのを見計らって先を促す。


 「また、清酒などの特産品により銭自体も大幅に収入が増えております。こちらは、随時新しく清酒を作ったり農道具を作ったりするために使っております。加えて、新しい農道具を使ったことにより本来の脱穀作業が大幅に短縮され、半分以上増えた収穫量でも昨年より早く終わっております。」


 騒めきは再度大きくなり、あちらこちらで目を光らせているもの達がいる。是非、自分の領地でもと言うところだろう。それと後半部分で眉を顰めた進藤がこちらを見る。


 「失礼ながら若様にお聞きいたしたいことがございまする。」


 少し大きめに声を上げたことで皆の目線が俺に突き刺さる。


 「なんなりと。」


 「脱穀には後家の救済目的がございまするが其方については何か対策をされておるのですか?」


 周りから確かに、そう言えば…などとヒソヒソと声が聞こえる。


 「はい、特産品の一つである石鹸がございまする。最近は領内だけではございまするが出回ってきており皆様もご存知かと。こちらの製造を後家の職として紹介しており、従来よりも遥かに銭を稼げ、その銭で米や必要なものを買えております。また、この銭によって税収が増え商人達が他国より更にやってくる好循環を生んでいるようです。」


 他国の商人と言っても伊賀のもの達を使った桜だがな。しかし、それは父や祖父も預かり知らぬことであり素直に家臣達も目を変えていた。


 「ふむ、これは大きな成果である。亀松丸よ、良くやった。何か欲しいものでもあるか?できる限り応えてやろう。」


 父が満足そうに腕を組みながら俺の方を見る。


 「では、私直下の黒鍬衆を編成する事をお認め頂きたく思いまする。彼らのための家屋や禄は私が稼いだ銭から用意いたしまするので使ってもよろしい土地を用意して頂きたいです。」


 「なるほど、次は開墾に力を入れるというわけか。よかろう!」


 「ははっ!ありがたき幸せ!」


 

 


 

 

 

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