第11話 今年の成果!

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 天文17年1548年 5月 服部半蔵


 亀松丸様が与えてくださった忍具を各衆頭達が使用して評価を纏めている。と言えば聞こえは良いが新しいおもちゃを見つけたように見える…。


 「おい、お前達遊んでないでしっかりと判断するんだぞ。」


 「わかってらい!だからこうやっていろんな動きで試しているんだよ!」


 最近になって使われ始めた鎖鎌や昔からある袖に隠して鉄の鏃を発射するちゅうせんを改造した発射せずに短刀を袖から出して暗殺したりできる暗器を頂いた。これは俺も気に入っており、すれ違い様に暗殺したり相手の不意をつける点で優位だ。


 「ほどほどにしておけよ…。それと、里の方では反応はどうだ?」


 「喜んでいるやつが殆どだな。特に農法や税を取らず、必要なときには飢えないように食料の補償や衣服が足りなければ素材となる布を融通してくれる所が好評だ。」


 「けど、私たちはその分若様にしっかりと仕えないといけないね…」


 「当たり前だ。我々はもう既に一蓮托生なのだ。若様のために我々伊賀衆が手足となって動くのだ。」


 そう言い聞かせるが、俺自身も不安がないわけじゃない。六角家重臣の三雲が望月以下甲賀者を扱っている。我々は仕事上争う事もままあった。彼らに遜るつもりは無いがそれを不和のもとにする訳にもいかぬ。舵取りを間違えぬようにせねばな…。


 「そう言えば、若様が里のもの達にも極秘裏に造らせてるアレ。どうなっているんだい?」


 「糞尿を使う関係上嫌な顔をする者はいるだろうが唯諾々と従っているな。アレは我ら服部衆の中でも我らしか知らぬ秘事よ。」


 それ以降会話を続けながらある程度評価を固めるまで使用感を確かめ続けた。


〜〜〜〜


 天文17年1548年 10月


 稲穂がたっぷりと実った観音寺城下などの六角家直轄地では農民達が笑顔で稲狩をしている。稲刈の道具は如何ともしがたく手持ちの鎌のままであるが、その後の脱穀が一味違う。今の時代でも再現可能な農具として千歯扱と唐箕を実用化したのだ。これは、伊賀の忍び衆達が表のシノギにしている木工職人達を利用した。勿論しっかりと銭は払った。これによって後家が困ることになるのは王道だが小学校の頃にやった石鹸作りを思い出して彼女達の仕事として与えた所、どの香り付けをするなど熱を上げて取り組んでいる。美容って儲かる理由がわかった気がする…。


 今回の刈入によって事前に決められていた通り百姓達が自分達で持っておきたい分を除いて溢れた分は全て六角で買い取った。これによって家臣達から借りていた米に利子をつけて返した上に、それを除いても余った分を清酒や兵糧として使うことができた。

 


 

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