第8話 猿夜叉との交流と忍びとの出会い
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天文17年1548年 5月
手習いを始めたが算数程度の計算で躓くような現代人ではないのでスラスラと進んでいった。元々現代でも嫡男だからと書道や剣道、様々な武道は一通りやらされていたこともあり、武術の方もどうにかなっている。といっても、まだまだ基礎の体づくりをしている期間のためあまり技術面では関係ないが。それと嬉しい事に猿夜叉君とも友達?になれたと思う。今日は手習いの日ではないが猿夜叉と勉強をしようと集まっていた。
「猿夜叉、分からないところを纏めてきたか?」
「はい、特にここの計算の所と書道のこの書き方が難しくて…」
こうやって手習いがない日に復習や予習をして、空いた時間には身体を動かしたり、俺が考えている事、兵農分離や外国と日本の関係、戦乱の世を治めるには全国を統治する必要があるなど理論立ててじっくりと教えていっている。猿夜叉はそれを楽しそうに聞いたり疑問に思ったことを質問してきたりする。このコミュニケーションを通じて少しでも何かを感じてくれればいいのだが。
そんな風に日々を過ごしていると傅役や手習いの先生役たちからの評判は絶賛されているようで噂を聞きつけた家臣たちがちょこちょこ顔を出して挨拶のようなものをしにくる。噂の真偽を確かめることと、あわよくば嫡男である俺に取り入ろうとしているのだろう。
俺はこの機会を逃すつもりはなかったので父に許可を貰い家臣たちと取引をし始めた。
内容としては昨年各領地で取れた米で溢れた分、余剰分の米を借りさせて貰うこと。返済は来年の今までに利子をつけて米、もしくは銭を返すこと。担保として俺個人から返されない場合は祖父六角定頼が責任を持って履行すること。その代わり利子は一年で借りた分の5分となっている。
皆このような提案をされるとは思っておらず驚いていたが、担保もあるということで貸してくれた。大半は利益になるならという考えだが、中には俺を試そうとしている家臣たちもいた。彼らの予想や期待を裏切らないように応えて見せる。そして、来年以降も同じ取引を続けた上で今農地で試している正条植えや塩選などを広めていくつもりだ。
「壱岐守、頼んでいたものはどうなっている?」
自室で配下として働いてくれている壱岐守と経過確認をしている。
「はっ、試している農方については順調に受け入れられているようです。まだまだ不信感はあるようですが六角家のやる事だからと任せている雰囲気があります。」
「そうか、結果が出るまではこの雰囲気は消えないだろうな。他の方はどうなっている?」
「はい、関の刀鍛冶や国友村の鉄砲鍛冶を引き抜く事に成功しております。六角の影響が強い事もあり周辺国を刺激せず大半を引き連れてこれました。」
「よし、彼らには衣食住をしっかりと与えるのだ。それと並行して弟子を増やさせろ、職人を増やすのだ。弟子たちには指示した農工具を作らせ、職人たちの技を盗ませながら育てるのだ。特に鉄砲鍛冶職人は待遇を良くするのだぞ。」
「はっ!それと借り入れた米から清酒を作る
作業も順調に進んでおります。既に銭が溜まってきており返済も可能ですがどうされますか?」
「いや、その銭を使ってあるもの達と繋いで欲しい。」
「どなたでしょうか?」
「伊賀の上忍、服部だ。」
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