「実話限定ゆる怖話女子会」を開催した

@ku-ro-usagi

読み切り

何年前かな。

とあるサイトで仲良くなって、みんな女の子でさ、オフ会もするようになって、でもここ数年はずっとオンラインでの集まりだったんだ。

今年、数年振りにリアルで集まって、

「春の恒例、怖い話限定女子会」

を開催した。

今年のお題は、

「できる限り実話」

実話縛りのため、心霊、人怖どちらもありで。

優勝者は、その日の飲み代免除。

みんな勝ちに来てるからね、飲む飲む。

要は、暇人の集まり。

ふふ、身も蓋もないね。

話す順番は、くじ引きにした。

飲みだけど、夕食も兼ねてるから、

「あまり食欲が失せるようなネタはほどほどに」

ってルールがあるくらい。

実話だとだいぶ話にも制限かかるからね、ビビリの癖にオカルト好きな私たちにはちょうどいい弛いお題だった。

私は、□番目になったんだ。


一番手

「会社でね、ポーチに入れてるお財布から小銭とか減ってることあって、気のせいかと思ったんだけど、一応リーダーに相談したら、対策をしようって真剣に被害状況とか聞いてくれたんだ。

だけど、相変わらずどころか、他の部署にまで被害が出始めて、みんながみんな疑心暗鬼になってて、リーダーが親身に相談とか乗ってくれてたんだけど、そのリーダーが張本人で泥棒だったの。

女子ロッカーで人の荷物を漁ってるのが現行犯で見付かった。

怖いのが、偉い人のコネでね、クビにならないんだよ、リーダー」


二番手

「弟の話でごめんなんだけど。

うちの弟、今一人暮らししてるのね。

彼女とのドライブ帰りに暗い夜道を走ってたら、大きな墓地がわーって広がってて、

『怖えー、怖えー』

って言ってたら、

『えー、ゆうくんの部屋の方がよっぽど怖いのいるよ?』

って彼女にサラッと言われて、

『あの、何が?』

って怖くて未だに聞けないって。

だから今度みんなで、弟の部屋に突撃してみない?

もしかしたら凄い心霊写真撮れるかも」


三番手

「会社の男の上司なんだけど、下りの階段が苦手でね、降りる時もいつも必ず手摺を使って降りてた。

理由は分からないけど昔からずっと怖いんだって。

その日は、真冬日だった、風がとにかく冷たくて。

たまたま上司と帰りが一緒になって、私は、上司が地下鉄の駅の入り口から、階段を降りていく姿を見送っていたんだ。

そしたら上司がね、階段の途中でふっと消えちゃったの。

本当に、ふっと。

階段の真ん中くらい。

それ以来、行方不明。

奥さんが一度会社にも来てたけど、何の手懸かりもなくて。

私の見たものは、見間違えとか目の錯覚って言われて終わっちゃった。

でも、確かに消えるの見たんだよ。ホント、どこに行っちゃったんだろ……」


四番手

「これ結構最近の話ね。

仕事帰りに、駅中のパン屋のカウンターで軽く夕飯済ませてたの。そしたら他にも席があるのに真隣に男が座ってきて、何となく嫌な気分でね、さっさと食べて席立ったんだ。

お店出る時に振り返ったら、そいつも席立ってて。

スーツとかじゃなくてなんか黒っぽい格好してたと思う。

駅から出て足早に部屋に向かって歩いてたんだけど、何となくそいつが付いて来てるの分かったんだ。

そういうのって、こう、なんとなく感じるじゃない。

私、自分の住むマンション知られるの怖くて、手前のアパートの敷地に入るふりして、そこの生け垣に隠れてじっとしてたの。

そしたらね、すぐに足音がして、アパートの目の前で止まって、動く気配なくなったの。

だから私、

『もしかして、気付かれてる?』

と思って、ちらっと生け垣から覗いたら、男は、アパートのベランダを見てた。

どの部屋の明かりがつくか見ていたんだと思う。

そしたら、私が逃げ込む直前に、誰かが帰ってたみたいで一階の部屋の灯りが点いたのね。

そしたら途端に、男の満足そうな大きな溜め息?吐息?みたいなのが聞こえて鳥肌が立った。

だって、私の本当の部屋は特定されない代わりに、この一階の人が私と間違えられて、こいつの良からぬターゲットになるんじゃと思ってビクビクしてた。

そしたらその日の夜に、何か外がざわざわして、やっぱり何か起きたんだと外に出たら、パトカーと野次馬。

近くの人に話聞いたら、

『男が隣のアパートに侵入したんだけど、その部屋が、男性2人暮らしの部屋で、呆気なく捕まってた』

って。

待って待って、これ笑うところじゃない、怖い話よこれ!」


五番手

「昔話で恐縮なのだけれど。

○○年に起きた、大きな津波あったでしょ。

あの時にね、津波に飲まれたことにして、家族の前から姿を消した人って、少なからず、いるの。

うん、きっと、みんなが思ってるよりも。

実はね、私もその一人なんだ。

私は、親から逃げてきたの。

本当に、

『あぁ、今しかない、今なんだ、逃げよう』

って思って、あのどさくさと混乱に紛れてね、必死だったし本当にギリギリで大変だった。

でも、それで、奇跡的に逃げられたんだ。

だから今は幸せ、凄くね。

あれ?

これ、怖い話じゃなかったかも、おかしいな?」



その日は私が優勝して、その日の飲み代を奢ってもらえた。

やったね。









 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「実話限定ゆる怖話女子会」を開催した @ku-ro-usagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ