第4話「命の行く末」
悪夢に飛び起きて、体を起こした。
自分の手を見ると、変に見慣れた肉球なんかじゃなくて五本の長い指がある人間の手だった。
「夢……」
下に落とした視線を、ゆっくりと横に向けた。
「……っ、ルウ」
昨日見た木造の建築が並ぶ綺麗な街並みが、まるで夢だったかのように焼失していた。
青空に白い雲が浮かんでいて、焦げたガレキが地平の彼方まで広がっている。
僕は掛けられていた薄布を退けて、重たい身体を無理やり起こしガレキの方へと歩いた。
胃から枯木が生えてくるような吐き気と、頭に蜘蛛の巣が掛かったような気分のまま動かない身体を無理やり前へと進めた。
何に向かっているのか、自分でも分からない。
分からなくなって、地面に受け身も取れずに倒れた。体が熱い鉄塊が詰まったように重い、熱い。
「いなくなったと思ったら、こんな所に」
女の子の声だった。ただ、知らない声だ。
「軽傷なのに、かなり体調悪そうですね」
声の主は僕を転がすように押して仰向けにしてくれた。
視界が地面から青空に移り変わり、さらに声の主が僕を覗き込む。
「……!ちょっと、失礼しますよ!下心とかじゃないですからね!」
声の主はよく分からない弁明をしながら、どうやら僕の服を上へとたくしあげてお腹を確認した様だ。
「あ、やっぱり、
聞きなれない言葉に、思わず聞き返そうとするがうまく舌が回らない。
「……な、に?」
「はいはい、言い訳は後で聞きますから、種の摘出しますので、ちょっとお待ちを」
そう言って、どこかへと走り去ってしまった。
なにがどうなっているのか、少し気になってお腹をなんとか触ってみるとカサっと柔らかい葉を触ったような触感がした。
いったい、僕のお腹で何が起きているのか気になるが起き上がって確認することはできなかった。
しばらくして、ピンセットのようなものを持って例の女の子が戻ってきた。
「盗虫魔草の種は自身を食べた生き物の魔力を吸い取って成長する植物です、魔力を吸われ続けてそのまま朽ちるか、魔力切れで動けないところを魔物に食べられるかですよ」
彼女は、植物や魔物、魚や虫、様々な知識に精通していた。彼女というのは、ルウのことだ。
少なくとも、ろくな知識もなく変なものを食べるような人間じゃない。
野営の頃の食事に、種が紛れ込んでいた?
「うわあ、かなりの量ですね、ちょっと痛いですよ、あ、嘘です、めちゃくちゃ痛いですよ」
種。
彼女が食べていたもので、ひとつだけ心当たりがある。
まさか、あの酒場の店主があの飲みものにいィっっっっっっッた!?
「結構な数食べましたね、美味しかったんですかね?」
痛い痛い痛い!!
し、死ぬ。お腹から内蔵を引っ張り出されてるような尋常じゃない痛みが腹痛が痛いっ。
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