第二十話 新しい仲間
これは連続投稿すべきじゃないかと思いました。
ぽちっとな。
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アルシオの言葉をすぐに理解できなかった。
何と言った?僕たちを保護?
「君が正体を隠したがっている理由は分かる。サーダイル帝国のガザ侯爵が君を消したがっているんだ。どうやら君が復讐を企んでいると疑っているらしい」
「馬鹿馬鹿しい。僕は仲間達と平和に過ごせれば良いんです」
「君が心底そう願っているのはちゃんと伝わっているよ。害するものに容赦も無い事もね」
「で、僕にどうしろと?」
「君たち、ファミリアを結成しないか?私が後ろ盾になる。拠点はあの
ちょっと待て!どうして僕と同じ事を考えているんだ?
アルシオって何者なんだ?
「昨日、ちょうどその相談をしていた所なんです。驚いたな」
「おお、それは話が早い。それで少しお願いがあるんだが」
「はい?」
「実は誘拐されていた人達を元の場所に戻していたんだが、行き場の無い子が三人居てね、できれば君たちに引き受けてほしい」
「はあ?」
「あ、君の一存では決められないだろうから、明日にでもその子達と会ってくれないかな」
「はあ」
この人は苦手だ。
なにか、手の平で転がされている感じがする。
「さて、やっと本題に入れるな。あの誘拐団は各国から懸賞金付きで指名手配されている重罪人でね。今回捕らえた頭目から他の支部の頭目やアジトが聞き出せた。そっちは結果次第だと思うが、取り敢えず今回分の報償だ。金貨二百十二枚」
「……」驚きのあまり声が出ない。前世換算二千百二十万円……
「で、これで少し私のポーター依頼に応えてくれると嬉しいんだけどね。いやいや、強制じゃ無いよ」にっこり。
こいつ、悪魔だ。
その日帰ってからターニャ達と相談した。壊れた
ターニャのアルシオへの印象はそんなに悪くなく、結局、話に乗る事にした。
ところで新しく仲間になりそうな三人が気になった。
ダンジョンの目で居場所を探す。領兵詰め所の一室に居た。
ステータスを確認する。
―――――――――――――――――――――――
名前:ヤンニシャリラ(12)
種類:エルフ(呪い)
体力:15
攻撃:12
敏速:28
防御:20
器用:45
知性:113
魔力:1720
スキル:
―――――――――――――――――――――――
おおっ!エルフだ。初めて見る。
でも、見た目ミルカとあまり変わらない。エルフだからか?
魔力が1720もある。なのに何で攫われた?
ああ、スキルが無い。魔法が使えないのか。呪いってあるから、そのせいかも。
―――――――――――――――――――――――
名前:クエンタ(11)
種類:獣人
体力:91
攻撃:23
敏速:84
防御:20
器用:72
知性:55
魔力:21
スキル:遠見lv1
―――――――――――――――――――――――
獣人も初めて見る。年齢にしてはステータスが高い。種族特性なのか。
攻撃が低いのは育ちかもしれない。遠見のスキルがあるって事は逃げ回っていたのかな。
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名前:アリーシェ(18)
種類:人族
体力:88
攻撃:31
敏速:72
防御:68
器用:172
知性:112
魔力:780
スキル:錬成lv2・料理lv1
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この子は普通に人間だ。
魔力は多いが、スキルが錬成だから生産職なのか。
いずれも弱い。アンザックで生き抜くにはステータスを上げる必要がある。
それにはブートキャンプってわけだが、僕がダンジョンマスターってのがばれる。
新入りさんは秘密が守れるだろうか?
――従魔契約が結べます。
なに?相手は人間だぞ。
――問題ありません。相手が受け入れるなら生命体、疑似生命体であれば可能です。
うーむ、条件はつけられるか?例えば秘密厳守に限るとか。
――可能です。
なら良いか。全縛りだとさすがに人道にもとるからな。僕はこれから仲間になる人達に、隷従するような縛りを掛けたくない。
翌日、全員で詰め所に行き、三人に会う。
詰め所の裏の簡易宿舎の一室。二段ベッドの片側に三人が座っていた。
アルシオはその横に腰を下ろす。
僕たちはその向かいに腰掛けた。
「この人達が君たちを受け入れてくれる人達だ。さあ、自己紹介兼状況説明といこうかな」
アルシオが三人に促す。
「アリーシェと言います。夫と一緒に錬成工房を営んでいました。でも、先日あの賊がなだれ込んできて、工房はメチャクチャ、夫は目の前で…………」
アリーシェは手で顔を覆い、必死に涙を堪える。
「すみません、もう工房も建て直す余力も無く、途方に暮れるばかりです。何ができるか分かりませんが、お役に立てるよう頑張りますので、よろしくお願いいたします」
「俺、クエンタ。村じゃ尻尾無しって馬鹿にされて、誰も相手にしてくれねえ。あげくは追い回して虐めるんだ。そいで、腹あ決めて村を飛び出したまでは良かったんだけど、あいつらに捕まっちまった。村には戻る気はねえ。仲間に入れてくれたら一生懸命やる。お願いだ」
ぴょこんと頭を下げた。なるほど、お尻には兎の尻尾のように、チョコンと丸いものがくっついている。それで尻尾無しか。
「わたしはヤンニシャリラ。エルフなのに魔法が使えません。それで誘拐団に売られました。もう里には戻れません。こんなわたしでも引き取って頂けるでしょうか?」
目を伏せて不安そうに肩を落とす。いや、耳を垂らす。自由に動くんだな、あの耳。
オルトが立ち上がってまず、僕たちの紹介をする。
それからターニャが立ち上がって言った。
「過去の事情も能力も関係ない。仲間のために体を張る覚悟はあるかい?」
三人が一斉に頷いた。
「それじゃあ、これから皆仲間だ!」
「よーし、皆でファミリアの登録に行こう!」
「ちょっと待て。ファミリアの名前、決めてない。今、皆で決めよう」
「えー、そんなの聞いてない」
「昨日言ってくれれば考えといたのに」
そう言えばそうか。
「決めなきゃ駄目なの?」
「うん。ファミリアの名前は家名になるんだ。だから絶対」
「急に言われてもなあ。家名かあ。貴族みたいだね」
「アッシュは何か考えてんだろ?」
まあ、考えてはいた。
何かダンジョンに関わるような。メイズとかラビリンスとか。
でも、ちょっとまんま過ぎるかな。というわけで。
「アースブリーズなんてどうかな。僕の故郷で“大地の風”みたいな意味があるんだ」
「おっ、なんか良さげ」
「アッシュにしちゃあな」
おい、今の誰だ?
「じゃあ、わたし、ミルカ・アースブリーズ?」
「僕はダイン・アースブリーズ」
「オルト・アースブリーズ。うん、本当の家族になったみたいだ」
「はは、決まりみたいだな。皆、それで良い?」
皆が一斉に頷いた。
それからアルシオを先頭に九人が後に続き、役所に登録に向かった。
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