第13話 金色の鍵。

 白い壁に這うように存在していた梯子を登って四階へと到達すると、フロア全体が暑かった。いいや、熱い。灼熱が全体を覆っている。そう感じてすぐに、俺は正面にいる火を吐いている魔獣を視認した。竜型ドラゴンだ。


「火焔魔竜だな」


 俺は杖を構える。隣にいるジャックも険しい眼差しで、火焔魔竜を睨めつけている。

 火焔魔竜は成体で、非常に巨大だ。

 ジャックが剣を鞘から抜いた。


「待って」


 しかし俺は今回も制止した。理由は簡単で、今回も俺は属性を事前に探知し、脳裏に魔法陣を構築していたからである。


「ですが――……ッ!!」


 ジャックが何か言いかけた瞬間には、俺は複合属性を兼ね備えさせ生みだした、氷の攻撃魔術を放っていた。複合魔術は、エヴァンス侯爵家の得意技でもある。使える者が少ない魔術だが、俺は幼少期から必死に特訓してきたから自信がある。


 空中に出現した氷の柱が、火焔魔竜に突き刺さる。右首から胴に向かい斜めに貫いた。断末魔をあげて、火焔魔竜の巨体が傾く。そのまま轟音と土埃を立てて、火焔魔竜は床に突っ伏した。一撃だった。火焔魔竜が光の粒子になって消えていく。


「あ」


 それから俺は、土埃が晴れた後、目を丸くして声を出した。

 そこに宝箱が出現したからである。


「ジャック」

「……はい」

「宝箱は本来ボスを倒した時に出るものだし、火焔魔竜も本来はボス級の魔獣だ。変だ」


 俺はそう告げつつ宝箱へと歩みよった。

 そして杖を振り、罠かどうかを確認した。しかし罠の気配もないし、不審な魔力も感じない。


「開けるぞ」


 そう告げ、俺は宙に浮かぶ巨大な宝箱の蓋を開けた。すると、中から何かが浮かんできた。そして宝箱が宙に透けるように消失すると、その場に金色の鍵が残った。俺はそれを手に取る。すると正面に扉が出現した。鍵穴が見える。


「なんだかボスを倒した感覚だったから不思議だけど、先はあるみたいだ。ジャック念のため、ここで今日は一度戻ろう」


 俺がそう提案すると、俺を見たジャックが無言で頷いた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る